
都営三田線、marniのバッグ
正直、ブランドにはあまり興味が無い。
そんな私のお気に入りは手作りのカードケース。
革工房のワークショップで作った、自作のもの。
まっさらだったカフェオレ色の皮が手の脂と経年でキャラメル色に染まり、テリテリと味が出てきた。たぶんこれはいつまで経ってもお気に入りのままだ。
平日朝のラッシュアワー、都営三田線。
いつもの朝に突然現れた一人の女性のことが忘れられない。
久しぶりにワクワクした。
誰かをこれだけかっこいいと思ったのはいつぶりだろう。
切りっぱなしのショートボブに漆黒のApple watch、黒のジャンプスーツにショートブーツ、カーキのジャケットを肩にかけている。切り添えられた前髪の奥には吸い込まれるような瞳、マスクをしていてもその人の魅力が十分にわかる。小柄ではあるが芯がしっかりとしている女性、そんな気がした。
なぜ、それほどまでに彼女の雰囲気に惹かれたのか。
スタイル
私は彼女が自分の"スタイル"を持っていることに気づいた。
華美さを抑えたファッションに反して腕には赤や青のカラフルなmarniのマーケットバッグがかけられている。
人生で初めてバッグというものに強く興味を持った。
モノトーンでまとめられたその女性のファッションが、そのmarniのバッグひとつでグッと引き締まる。
そのmarniのバッグが、たまらなくかっこよく見えた。
ファッションからにじみ出るその人の"スタイル"。
考え方、ライフスタイル、そしてファッション。
そのすべてに共通する自分を表す言葉が"スタイル"。
自分の"スタイル"がある人は輝いているんだ。
私のmarni、私のスタイル
偶然にもその女性と同じ駅で降りて、改札口を出た私は女性とは逆方向に進んだ。
エスカレーターに乗りながら早速Googleをひらく。
「marni バッグ」
数分前に名前も知らなかったブランドも、私の中ではすでに憧れのブランドになっていた。
私の"スタイル"とは一体?
【なりたい女性像】なんて一言で片付けられるわけない。自分の"スタイル"というのはもっと繊細で、複雑で、だけどダイナミックなものだ。
ただひとつ言えること
自分のスタイルを持つ人は美しい。
好きな本に「時として旅や芸術体験も自分のスタイルとなる」とあったことを思い出した。
いつかあの女性のように自分の"スタイル"を理解して、いろんなところで表現できる人になりたい。
そんなことをぼんやり考える秋晴れの気持ちいい朝、私は憧れのmarniをポチッとカートに入れた。
これからこのmarniと私の"スタイル"を創っていくのだ。楽しみでしょうがない。