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北の合流点

盛岡の中心に流れる3つの川

岩手県の県庁所在地である盛岡には、北上高地と奥羽山脈から流れる北上川・雫石川・中津川の3つの川が流れている。
樋口忠彦氏著「景観の構造」には、盛岡の都市空間を分類すると、三方を山にかこまれ南にのみひらかれた「蔵風得水型空間」の系譜をひいたものと記されている。日本最古の庭園書「作庭記」の「四神相応」という理想の地相にも近い系列の空間であるという。

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「景観の構造 ランドスケープとしての日本の空間」樋口忠彦氏著 技報堂


少々固い分析をすると、さまざまな景観構造を知ることもできるが、私はもう少しやわらかい視点で、川の流れる「盛岡」の景観を眺めてみたい。

地図上でも川のかたちを辿ってみると、北上川を背骨に、雫石川と中津川に両羽を広げた白鳥のような姿も見えてくる。
幼少期に住んでいた場所に流れていた雫石川上流近くの竜川も、地図から俯瞰してみると、大きな街の合流点に辿り着く。展示中のCygの場所も東から流れる中津川の近くだ。ここから北上川は石巻をとおって太平洋へと注ぐ。




その土地をどこから見るかで、見知った場所でも違った表情を見せる。
どこの川のほとりに立って見るか、上流から見るか、下流から見るか、川のある場所は変わらないが、見る場所を変えることで、街のかたちやリズムも見えてくる。

盛岡の3つの川が合流する地形から着想を得てできたものに、
「North confluence」とタイトルをつけた。
「North confluence」とは「北の合流点」という意味。
このような川の合流点に似た地形はおそらく、まだ知らない国の知らない街にもあるかもしれない。そのため固有名詞にはせず「点景」のある流域としての画面をつくった。画面を回転させたり斜めから眺めると、どこかの港や道も見えてくる。
この合流点が、遠い土地の流域の記憶とも交わるように。


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「North confluence」acrylic on wood   2020

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