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はだかのゆめ

昨年冬くらいから、甫木元空ホキモトソラ に興味があった。きっかけは音楽から。
彼がボーカルのBialystocksの灯台という楽曲を何かのタイミングで耳にした。

衝撃だった。
98-99年ごろ、一番音楽を聴いていた頃にキリンジの冬のオルカ、ofMontreal(オブモントリオール)のOld Familiar Wayを聴いてハマったのと同じ感覚。20年ぶり。それからは、Bialystocksばかり聴いている。
①曲調が好きすぎる
転調を繰り返す曲が好き ジャズの入った感じも初期のキリンジを彷彿とさせる
②無理なく高音が出る男性の声が好き
BTSのジミン、King Gnuの井口理の声とかも好きなんだけど圧勝 高音でない地の声も好き

彼はミュージシャンでもあり、むしろ本業は映画監督でもある。でも私は映画をあまり観ないので、どんな言葉を紡ぐ人なんだろうという方に興味があって、この新潮の書き下ろしをものすごく楽しみにしていた。

衝撃だった。
まず、これまで私が読み慣れてきた文章と違いすぎてとにかく読み進められない。途中で乗り継ぎの改札を通ったり、ふとLINEをチェックしたら、また世界に戻るのに時間を要する。
ようやく世界に戻れたかと思えば、カタカナの表記やカタカナの擬音語が並ぶ。宮沢賢治?高知の田舎の方言やその地の暮らしが綴られる。燃え上がる緑の木(大江健三郎)?
何を読まされているんだろうと、得体の知れないものを掴むような気持ちで読み進めた。

燃え上がる緑の木みたいなことにはならなくって、もっとシンプルに、今を生きる甫木元空の自伝のような語りだった。死が迫る母との高知での暮らし。四万十の川や、木々や、動物や、ヒトの生と死。失礼な言い方かもしれないけど、野生的で無骨で迷いがない表現。音楽同様、誰にも似ていない。

そっか、頭で整理され整えられた読み物を読んでいるのとは訳が違うんだ。もっと動的であり、カタカナが紙面を踊り音楽を奏でる。文字で綴られたセリフの上を、登場人物たちが歩いているように思えた。

どんな音楽が当てられ、どんな映像なのだろう。
映画のほうが観たくなった。公開終了してしまったので、また何かの方法で観よう。

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