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虚無舞台ではないが、過去作とのネタ被りと原作からしてある問題性が、舞台ならではの高いテンションで色々ごまかされているなあと思う新幹線スピンオフの鉄ミュ配信版感想

こちらが現地で見た印象のレポ。内容的に重複するところがある。

https://note.com/sahasi/n/n9ab6f31faa47

愚痴が多いですが、絶賛のはどこでも見れるだろうし、私のほかにも愚痴や不満を抱いている層はいるだろうから、そういう層向けのnoteです。

※こちらの記事で、当初北陸新幹線を演じた渡辺コウジさんと、ドクタローを演じた石田隼さんを同一人物だと勘違いしたまま記事を書いていました。
 渡辺コウジさんはドクタローは演じていませんし、石田隼さんが今回演じたのは北陸新幹線ではなく長崎新幹線です。
 謹んでお詫び申し上げ、ここに訂正いたします。誠に申し訳ございませんでした。



《ジュニアと満鉄の出会い》


 それまで存在を気にしたこともなかったくせに、満鉄に勝手に『そうかこの人が未来だ』と運命を感じ、『ずっと貴方を待っていました!』というジュニアは欺瞞だなあと思う。
 あと『ようやく私もこれで二番目ですね』の意味が本当にわからん。誰かガチに説明してくれ。二番目になりたかったの?ずっと頂点にいる重圧が辛かった?そもそも特急つばめを『貴殿』と言ってるので、特急つばめはジュニアより階級は上。ジュニアにはすでに『二番目』なんですよ。
 だからここらへんの意味がさっぱりわからないし、鉄道路線として自分の上に立たせたかったのかもしれないが、じゃあ何で鉄ミュ4でつばめと入れ替わった体でジュニアは『満鉄を特急つばめの妹にしてくれ』って国に言って満鉄を特急にした?意味わからん。
 原作からして辻褄が合わなかったが、舞台で入れ代わりネタをやったことで余計にジュニアの言動が謎になった。
 というか舞台を見て気づいたんですが、函館本線も東海道本線も過去が同じパターンなんですね。
 親しかった人間の死→それまで存在も忘れていた後続路線が現れる→自己完結した謎の言葉をぶつける→兄弟になる。
 まだ函館君の言葉は事情知ってる観客側から見たら理解できるが、ジュニアのは本当に謎だ。
 あと満鉄に向かって『無事のご帰還、心中お察しします』と言ったときは心底ケッッッと思いましたね。
 鉄ミュ4で引揚者のはとに向かって『満州から引き上げてきた者に対して平和などとんだ皮肉だな』『自分が恥ずかしいとは思わんのか』と言うような舞台ですよこのシリーズ。そしてそのあと引揚者の満鉄をだまして奴隷の真似事をさせて苛め、エモく物語を〆ている。
 満鉄の歴史も引揚者の歴史も踏まえた脚本だとは到底思えない。何も考えてないんですよ、マジに。


《近眼から眼鏡を奪う卑劣極まれない好意》


 原作ではめちゃめちゃ感動したし、鉄ミュ4ではこの話の為にチケットを取った(そして空振りに終わった)くらい楽しみしていたのに、はとの奇行と体感RTAな速さで処理されて目が点になった。
 これ満足しているつばはとファンいます?原作のあの美しい姉妹愛が、『妹を頼む』が、こんな冒頭ではとの奇声でかき消された。最悪。
 そのあとのつばはとのミュージカルパートも、役者双方が見事な美声を聞かせてくれて感動的だったが、内容が東海道新幹線となったはとが『あの特急つばめが落ちぶれてなんてざまだ』と歌いあげるもので、姉に王座を譲られたことも知らない裸の王様状態の東海道新幹線が何言ってんだと思った。
 つばめも悔しそうな顔をする理由がわからない。自分から最速の座を降りたし、なんならセカンドチャンスである山陽新幹線になれる機会も自分から断った。
 周りから実力を評価されまくっているのに、“風流”を理由に仕事を蔑ろしろにする特急つばめ、解釈違いですね……。これがまだ山陽新幹線の座を蹴ってなかったら感動も納得もできるが、後半で自分からきっぱりと辞退しているから驚く。
 自分の王座が特急つばめのお下がりだった、妹や山陽の気持ち考えたことあるのか…。
 というか何で高速鉄道ツートップが実質裸の王様なんだ。どっちも実力でその職に選ばれた思っているだろ。違います。つばめのお下がりです。
 これ原作からして問題あるのに、なんで舞台でそのままやっちゃうんだ…。うるせえんだよ、桜桜って……。
『貴様は知らなくていい』って、ようは無知で無垢なはとちゃんのままでいいってことだから、あまりにもはとを馬鹿にしすぎている……(私は九州が死ぬほど好きです)



《高速鉄道の紹介》


 山陽新幹線は断然滝川英治派だったんだけど、今回で慣れたのがこちらの山陽新幹線もいいなと思えるようになりました。周りに振り回されがちな優男感がいい。紹介文も、雨漏りがあったとはもはや懐かしい…。
 上越新幹線は相変わらずギリシャ彫刻みたいな筋肉がすごいですね!?初期から変わらない筋肉の細さとエモさを守っているの、本当に凄い。特に下っぱらが出てないことが本気で凄い(ボディービルダーですら腹のぜい肉は落としにくい)ステロイド漬けの筋肉ムキムキでもなく、エモさを保ったままの筋肉を維持できるの、かなりかなり努力してると思う…。背中の筋肉も鍛えられていましたよ。あと巫女姿は、あまりの腰の細さに逆に悲鳴を上げた。恐ろしすぎる腰の細さ!こわ…細…こわ!!!
 長野新幹線は声も存在感も全てが可愛いので全てが許されてしまうのずるい。
 北陸新幹線は原作の美形さはないが、それゆえに天使すぎる長野からの成長からのギャップで笑わせてくれるところが好き。独特の雰囲気と圧がある演技だなーと北陸新幹線を見るたびに思う。長野を取り込んで誕生してくる場面とか!
 北海道新幹線は……可愛いが、BLを売りを止めてくれ。ことあるごとに本線と一緒に~とか、単純にくどい。このあとに函館本線とのセクハラパートがあるだけに、本当にくどい。ペア売りをやめろとかでもカプ違いだからとかでもなく、単に推しが幼稚化し、BL売りされてるのが辛い。
 九州新幹線は存在も歌声もパーフェクトだし、ラスト近く、汗で前髪が乱れるところが本当に美しくて生で見れて感動した。九州新幹線の美しさはあそこが頂点だとも思った。


《長野ちゃん》


 声が可愛くて言動が可愛くて全てが許されてしまう。こればっかりです、長野に関しては。
 ただ、上越新幹線が筋肉で小学生にセクハラするの止めろ。十分これセクハラ案件ですよ。小学生女子にやれるか?やらねーだろ。
 鉄ミュがアラサー俳優が小学生に性的に迫る様子を売りにするあたり(そしてそれを楽しく観客が受け止めるあたり)、日本が子供の人権後進国でよかったですねと思う。海外ならペドとして燃やされてますよ。
 長野の可愛さを抜きにすれば、ネタが過去作と同じで残念だった。さすがに長野で新しいネタは厳しいにしても、掘り下げらしい掘り下げもないまま新幹線スピンオフが終わるの、寂しすぎるなあと。
 あと信越の名前を出すな気持ち悪い。
 私、子供の頃に強姦されているから、過去に公式ツイッターで信越が風呂場で長野の裸を触ったネタで読者にファンサービスしていた青春先生も、それをゲラゲラ笑ってた読者(しかもリアル男児の母親)の様子も全然許してないわけですよ。名前を聞くだけで正直めちゃめちゃ嫌だ。
 こうやって小児性愛者が愛されキャラとして多用されているコンテンツに金払うの、本当に抵抗がある。鉄ミュ側も青春先生もわかってやってるしね。
 観客も、『フィクションだから』『舞台だから』でこんな異常なネタに慣れちゃダメですよ。
 ましてや青鉄は実在の鉄道路線の擬人化という、本来はデリケートなジャンルなんだから。



《レールランナーと畑》


 舞台では演出がよかったのかあまり気にならなったけど、こうやって見返してみると本当に過去作からのネタ被りが酷い。総集編かよ。
 畑に関しては山陽のイケメンさで見れたようなものだなと思った。爽やかさな白Tが良く似合う!農作業ってところもまた牧歌的な萌えがあるし、畑を気にする仕事のマメさと畑への優しさも、滝川山陽よりもこっちの山陽のほうがあっている。若手農家の好青年って感じ。
 ネタ自体は古いが、演出がよかったのか素直にここの三人の掛け合いは楽しかったですね!
 時給ネタも面白かったし、逆に時給を払うからお前も働け!と東海道に言い返す山陽の反撃も可愛かったし、東海道の暴君っぷり、そしてジュニアの唐突なビブラスラップにも笑いました!お笑いに疎いので、あれがハンバーグ師匠ネタだとギリわかった。前のときはなかった…よね?
 ほんと新しい山陽さんの爽やかさと演出に助けられたネタの流用だなと思った。



《人柱会議》


 これも演出でネタかぶりでも面白く観れた場面。秋田のリモートをエヴァのゼーレ風に演出して、キャストが出演できないのをカバーした発想の器用さは素直に凄い。
 あと私が見た時、東海道新幹線がボードに九州の似顔絵を描いていてそこも可愛かった。
 しかしネタが古いなー。



《日替わり》


 ジュニアックは死ね。
 それとは別に、日替わりのゲストキャラがまず過去作に出演した俳優ありきなのが気になりましたね。どのキャラも飽きた。
 ひさしぶりな山手線とかならともかく、秩鉄や池袋はクレジットされているのを見ただけで飽きた。
 私は箱押している西武の為に狭山線回を取ったんですが、そこで出されたのがレオのうんこだったので倍に倍に嫌悪感が増した。つまんねえんだよ単純に。
 配信版はKIMERUさんの常磐線だったんですが……正直、もうKIMERUさんの演技もおなかいっぱいなんだよな……。常磐線も、KIMERUさんにあっていない。役者起用がまずあって、そのあと割りキャラが振られた役って感じ。
 今回の常磐も合ってない感じがぬぐえないし、内容もあんまり鉄道と関係ない……。あと内容がわからない。
 ボーイボーイと言いながら死体遺棄の話をするから、映画オールドボーイ?ボーイズオンザラン?と思ったらお笑い芸人のミルクボーイの話で。わかるか!!角刈りの人ってぐらいしかわからん。誰それ。どういうネタ。
 京浜東北の歯がネタになってたけど、あれは列車飛び込みによる轢死死体ネタから?
 山陽本線のツッコミとかジュニアの変わり身の早さはおもしろかったが、お笑い芸人ネタというか身内ネタは意味がわからなくてキツいなと思いました。お笑い番組とか見ないよ。TV持ってない人もいるんだぞ。



《新潟の星》


 ゲイカルチャーの盗用だろうが、どれだけ現実でマイノリティがアウティングの恐怖におびえていようが、何が何でも右耳ピアスを使いたい!という鉄ミュのクズさがよくわかった。
 直接的にはネタにせず、今回はエモさでコーティングしてるあかりなお醜悪だ。どうしてもやらなきゃいけえねネタか。
 ここらへんの双子新幹線の綺麗ごとは嫌いだし、上越はゴミだと思う。
 どうせやるなら候補生時代の話をやればよかったのに。アウティングをギャグにもエモにも使える立場でよかったですね。死ねばいいのに。



《シュレディンガーの新幹線》


 演出は面白かったが、本当にマジにネタがないのな?!も----いいだろシュレディンガーは。2でやった。
 こういう毒っけのあるジョークはむしろ好きだが、ずっと過去作の焼き直しなの本当になんとかならないのか。
 どうしても過去作と同じネタを被せるように毎回やらないと駄目のかミュージカルって。
 ここも山陽本線がいなかったら見れたもんじゃない。
 あと常磐線は女装を取ったら他にネタはねえのかよ。ちよばんはさっさとヤッてこい。もはや。



《九州は気が早い》


 長崎新幹線召喚の儀式はメチャクチャ好きです!!!!予想外すぎてすげー笑った。
 怪しげな魔方陣を大真面目書いて召喚する(しかも長崎チャンポンすごくいいのを頼む!という念つき)九州も面白かったし、妖しくも堂々と登場してくる長崎も、らしすぎて大笑いしました。こういう笑いが好きだ。
 長崎新幹線の第一印象は『ああ確かに肘樹先生(神クズアイドル)が好きなタイプの女だわ!』でした。全体的にベリーダンスのような滑らかな動きがすごい。体格がいいのがまたいい。
 基本的に若手俳優の女装ってそこに『女ってこんな感じなんでしょ?(笑)』というミソジニーが混じった演技をするので大嫌いなんですが、長崎はターミネーターをイメージしてるのもあるけど、堂々としたおかしな女の雰囲気で一気に好きになりましたね。面白い女が大好き。
 あと顔の種類がわりとリアルよりというか、社会人でこういうメイクやスタイルの女の人いるなーっていう親近感もまた良かったですね。
 ああいう髪型とメイクの女の人普通にいるでしょ。顔の種類だけでいえば『私と似てる』と思った人いるはず。
 セリフもハキハキとしゃべっていて好感。『いざまいります!』の堂々とした姿よ。
 何もかもがおかしいのにあまりにも堂々としていて麗しいから、なんかすべてが大好きになってしまう長崎新幹線(でもターミネーター演出は若干くどいと感じた)
 スカートの中のパンツが赤だったのも細かいなと思った。



《新幹線イヤーの光と影》


 鉄ミュ初めての北海道新幹線の真面目で真剣な歌声に泣きそうになった。そうだよ…私はこういうどーが見たくて田舎から出てきたんだよ……!!!!!!幼稚園児で尊敬する相手にセクハラしまくるような異常者じゃなくて……!!
 ネタもしっかり鉄ネタ&時事ネタで面白かったですね!水害で水没した北陸新幹線と、地震で車両がお釈迦になった北海道新幹線……(ただでさえ借金が凄いのに)
 中の人の圧倒的な歌唱力にも大感謝ですよ。北陸新幹線の中の人の深い声を響かせた美声と、北海道新幹線のガチ王道皇子様スタイルの歌声!!輝馬さんってこんなに美声なの!?才気が鋭く、勇敢な歌声。あそこだけ世界観が違った。薔薇王の葬列(シェイクスピアを原案にした漫画と舞台)を見に来たかと思った。
 歌いながらバチバチと闘志をぶつけ合う二人が本当に良かったですよね…。ずっとこういう、仕事に情熱を持った路線同士が仕事に関してぶつかり合う姿が見たかった……五社直通とかさ……。
 闘牛のようにぶつかり合う二人が本当に燃えだ……。元々アルゼンチンタンゴは酒場の荒くれ者同士が躍っていたのが起源なので、こういうバチバチにぶつかり合い、でも互いに共鳴してハーモニーが完成されていく様子がライバル視しあう北陸新幹線と北海道新幹線がめちゃくちゃ合ってますね。
 美声でバトルしあう展開なのに、ダンスは滑稽なものも混ぜる膝カックンもよかったです。
 いや本当に北海道のまともな美声に涙がでるな……。幼稚園児でもBL要員のセクハラ野郎でもないんですよ!?ちゃんと一人の青年としての北海道新幹線!!!
 ラストの伸びる真面目な美声を聞きながら、こういう北海道がずっと見たかった…と泣きました。
 ここだけだよ。北海道新幹線がまともな人間として描かれているのは。



《山形新幹線とやまばと》


 ネタが古いが、マツケンサンバばりの豪華さにすべてが吹き飛ぶくらい面白かった!!
 ちょっと圧倒されるゴージャスさ。あのシャンシャン?がすべてを持って行った。
 山形新幹線の中の人、演歌めちゃめちゃ上手い。ここの場面、観客を含めてすべての人が楽しそうにしていて、全てが良かった。
 郷土感とスタイリッシュさが絶妙にまじりあったスタイルがなんとも山形らしいなと思った。
 ここは素直に面白かったです。
 しかし足湯オチも古いなあ。



《ある列車からほとばしるパトス》


 或る列車ネタが見たくて鉄ミュ4を見に行ったし、それがなくてここにまわされたから、なおさら鉄ミュ4のスカスカ感というか、あのわざわざ九州の名前が入った舞台は何だったんだと少し冷めたことを思った。
 或る列車に対する容赦ない弄りも、それに跨りながら堂々と現れる九州も、『まるであの世に行ったよう。そんな豪華さ!!』とナイスなアシストする長崎も全てが面白かった。
 だからこそこれを鉄ミュ4でやれという話で。
 正直、この高速鉄道スピンオフを見れば鉄ミュ4みなくていいよ。それくらい印象が薄くなった。
 ゴーゴーヘブンでの九州と長崎の息の合ったシンクロっぷりがとにかく好き。
 これを本来は長崎の地でもやる予定だった鉄ミュ4でやってくれていたら……。九州と長崎に関するネタは全てが面白かったです!推しなのを除外しても、鉄ミュ初登場ネタだから新鮮みがある。10周年の全身ライトアップネタは漫画では表現しきれない派手さや存在感が合って目に焼き付いてる。本当に面白い会社かつ男だな、九州新幹線。


《山形の星は新幹線の夢を見るか》


 舞台だけ見た人は『俺に行けっての!?死ねってことか!?』と叫んでいる人、誰だか絶対にわからなかったと思う。
 ここの場面、圧倒的に人間関係がわからない。死ぬ死ぬ叫んでいる不審人物の青年は誰か、山形新幹線はこの時代何者なのか、その山形の隣にいるやつは誰なのか。何を揉めてるのか。さっぱりわからん。この時点で『彼』とは誰なのかもわからん。
 とにかく時系列と人間関係もわからないし、山形弁だから余計にわけがわからない。
 まあ原作読んでいない人にはこの舞台全体そうなのかもしれんが……。
 はとと山形の過去は欺瞞だなと思った。
 急に「おめさんはよくやったよ。みんな良くしっちょる」と抱きしめられても、『いやお前、はとの何を知ってるんだよ……』と冷ややかな気持ちにしかならない。全てが唐突。全てが行き当たりばったり。
 はとに出会う前に、はとが一生懸命仕事している様子やそれでもから回っている様子を山形が見ていたならこの展開にも納得できる。だがそんな場面は舞台にはなったし、さっきあったばかりのはとを急に抱きしめてそんなテキトーなこと言われても心に響かない。
 いや本当に、はとの何を知っているんだよ山形……。『誰も見ていなくても、俺が見ていた』とか、薄っぺらくて説得力がない。誰なんだお前は。そもそもお前はもっとドライな男だろう。
 でもそれではとは泣くのはわかる。あの子は寂しい子だから、不審者にでも優しくされたらそりゃ泣くよ。
 でもその後のはとは東海道新幹線として周りにパワハラしまくって、東北のつばさが『死ぬ死ぬ!殺される!』と恐れるくらいになるんだから、この抱擁も山形の優しい言葉も全てが都合のいい綺麗ごとにしか見えなかった。
 自分は優しくしてもらえてよかったねパワハラ野郎。
 しかもこの出来事があるから、いまも東海道新幹線は山形には甘いというのが依怙贔屓がすぎるんだよな……。
 缶ジュースといい、はとは小さな愛情にも飢えていて、缶ジュースをおごってもらったとか大して深い意味もなく抱きしめてもらったとか、そういうのでここまで依怙贔屓するんだな……それってめちゃくちゃ哀れじゃない?いい話じゃ全然ないです。


《ザ・ノーススター》


 だから鉄道の衰退が人間のせいだとメチャメチャわかっていて、なおかつ北海道新幹線にかけるしかないJR北海道の事情もちゃんと把握したうえで、なんでいつも日常的に弟にモラハラしまくるのがわからないんだよ函館くん。
 そこまでちゃんと大人の事情を理解しているのに、弟をなんでイジメるんだ。
 函館君のカッコよさや、気持ち悪い鯨井ジュニアではなくまともで対等なジュニアの会話は好きだが、見れば見るほど後続路線である北海道にモラハラする函館君の気持ちがわからなくて何も感動できない。
 『発展が憎いよ』『車社会が憎い』。ちゃんと人間側に非があるのわかってんじゃん。
 なのに何でどーをイジメるんだ函館くん……あと北陸兄も。青鉄、普段弟にモラハラして別の場面では慰めるのが愛情だと思ってるふしがあるが、上の兄弟の玩具だった下の兄弟からしたらトラウマをえぐられるほどキツいです。
 つばはとはまだはとがしっかりとつばめを嫌っているから見れるものがあるが、北陸弟もどーも耐える系なので辛い。切り替えの早さが凄いなら北海道新幹線を守れ。いじめるな。
 あと北海道新幹線も、『ずっと貴方の側に立ちたくて……』と言ってるが、大嘘なんですよ。
 お前が最初に志したのは北海道新幹線じゃなくて山陽新幹線だろ----が!!!
 舞台だけを見るとそういう気持ちが湧いてくる。どーが死ぬほど好きだし、あのケチな東海道が函館君にスマホを買ってあげるという点では萌えたが、人間側に非があるとわかった上で弟にモラハラする函館君や、山陽新幹線が本命だったどーの矛盾が気になって感動できなかった。
 ほんとモラハラするなって……。


《自動販売機の前で》


 100円の缶ジュースに負けた北海道新幹線……。
 こんな能力や実力も関係ない、単に缶ジュースをおごってもらったという恩だけで合格確実だった3番の合格を取り消し、山陽新幹線を採用したの、依怙贔屓がすぎる……。
 これ、就活で地獄をみた人、気持ちよく観れました?死ねと思いましたよ私。
 この話、全然いい話じゃないです。缶ジュース程度の小さな愛情や友情に飢えていて後生大事にするような哀れな子が、依怙贔屓で一人の青年の未来を潰した話です。
 しかも北海道新幹線、この当時まだ未成線ですよ。国から産んでもらえなかった路線。
 ようやく自分の誕生日を自力で掴みかけたのに、缶ジュースごときで潰された。
 感動なんかできるかい……。はとも単に哀れな子だよ、こんなの。
 そもそもそのはとも『なぜ私のように最初から一人を選ばないのか』と聞いているが、このセリフ自体が滑稽だ。だってはとは最初から選ばれた人間ではなく、姉が断ったからお鉢がまわってきたに過ぎない。
 裸の王様が他人に気まぐれにおごってもらった缶ジュース一本に感動し、その男を右腕に採用……。酷い話だよ、これ。
 しかもまた最悪なのが、その山陽新幹線の採用自体もまた、つばめのお下がりだって所。
 仕事をナメてんのか。
 なんでつばめが一度ならず二度までも国からのオファーを大した理由もなく断るんだというか、設定が重複しているんだ青春先生。
 自分が最初から選ばれたと思っている東海道も、缶ジュースの賄賂ではなく実力で山陽新幹線になったと思っている山陽も、合格確実だった戸井線も、そのほか17名の候補生たちもみんな馬鹿みたいじゃないか。
 劇中でも容赦なくCMが入って金稼ぎする鉄ミュの商魂魂たくましい所は好きだが、缶ジュースごときに負けた北海道新幹線ファンにとってはブロマイド販売のギャグも山陽の顔のよさも全部腹立たしいことばかりですよ。
 捨てちまえそんなゴミ。


《さ行の定理》


 正直これがメインで今回の話は進んでくものかと思ったら、あっさりと終わってしまって驚いた。
 原作でも屈指の名作ですよ!?それを八高線もアニーとも出さないまま話が進んでしまって呆然としました。
 0系に新しい未来を感じ、自分の意思で同胞であるアニートと軍事の誇り(旧体制)を捨てるのが良かったのに…。
 あと何度も言うが、鉄ミュは4で引揚者に屈辱的なセリフを吐くような舞台です。だから戦争に関するセリフを感動的に吐かれても全然納得できないんですよね。エモさの為に戦争を利用してるだけのくせに。
 あと戸井線やはとの満鉄設定が出てきた今、篠山のセリフも感動しづらくなっている。
 侵略の歴史そのものである満鉄の戦争責任は?
 篠山は人間から『路線の延長は白紙』『民間に使いまわせるようなものではない』『軍事路線は戦争が終われば無用』と言われ、篠山自身も『戦争を否定されたら生きていけない。生まれた理由がわからない』『ただただ不必要な現実』言ってるが、これ、全部未成線の戸井線にも言えることですよね?
 戸井線も軍事線として計画され、そのまま延長することもかなわず開業することすらできなかった未成線。
 篠山線と違い、戸井線は生まれることもできなかったし、軍事線として戦争に参加することすらできなかった。
 ましてや篠山、なんだかんだいって戦後は普通に住民の足として使われていたし、廃線時には地元から廃線反対運動までしてもらえた。今だってイベントやったりしてたりする。
 篠山は全然恵まれた立場なんですよ。戸井線に比べたら。
 その戸井線から篠山が山陽新幹線の座を奪ったの何もかもがずるくて理不尽だし、篠山線の慟哭はそのまま戸井線の叫びだ。むしろ戸井線こそがその嘆きや悲劇全てに当てはまる。
 さ行に必要な他の軍事路線キャラがかけた舞台には感動できないし、戸井線に比べたら恵まれた立場だとわかった今、篠山の過去自体にも感動できない……。
 これ脚本を書くとき変だなと思わなかったんだろうか。
 それとも篠山の叫びに反戦の意味をこめたとかツイッターとかで言ってるんだろうか。満鉄の戦争責任にも触れず、日本語も喋れない引揚者をエモの道具にしかしていない鉄ミュに戦争を語る資格はね----よ。
 あと山陽新幹線のオファーを大した理由もなく断るつばめも変だが、『つばめってそんな殊勝なタイプでしたっけねー』というジュニアも変なんだよ。
 お前はつばめが妹に東海道新幹線の座を譲ったことを知る、唯一の人間だろうが。
 一つの舞台の中で矛盾が発生している。せめて『つばめはああいうやつですよ』とフォローが入れられないのか。
 さ行も眼鏡も、すごく楽しみにして、そのために諭吉を払ったのにRTA的に処理されていったのが本当に悲しい。
 東海道新幹線と山陽新幹線との顔合わせに膝から崩れる北海道新幹線も見たくなかった……。どこまでも幼稚な扱いを受ける私の推し……。