タイトルで敬遠しているあなたにも『ロシデレ』を勧めたい
こんにちは。太田千莉です。
早速ですが皆さん、こちらの作品はご存じでしょうか?
はい、そうですね。スニーカー文庫から出版されていて、売り上げとかアニメ化とか、色々凄い感じになっている人気作『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』です。
話題作ですし、既に読んでいるよ~、という人も多いと思います。
読んでいない人も友達からオススメされていたり、別に友達ではないフォロワーがオススメしているポストを「ふぅん……」と思いつつ読み飛ばしていたりするのではないでしょうか。
そして、このnoteでは友達でもフォロワーでもない第三者の私からもオススメされる事になります。
残念ですが諦めてください、話題作を避け続けるってそういう事なんです。
『ロシデレ』ってこんな話?(偽)
『タイトルとかから察するに、ツンデレヒロインと無個性主人公がひょんなことから接点持って、イチャイチャする良くある感じの学園ラブコメでしょ?そんな感じで宣伝してるプロモーションも流れてくるし。そういう作品はあんまり……』
まだ読んでいない人の中には、こう思われている人も少なからずいるのではないでしょうか?
自分もかつてはこんな感じだったので、同じ様に感じている人の気持ちは大変良く分かります。
(良く流れてくるプロモーションポスト)
もちろん、これらの内容が嘘な訳ではありません。ヒロインのアーリャさんは時々ボソッとロシア語でデレますし、ドキドキニヤニヤ出来るタイプの青春ラブコメ作品です。
ですが、この作品がここまで話題になったのはタイトルでは伝わらない要素による魅力があってこそだと思っています。
『ロシデレ』の魅力。
それは可愛いヒロインのデレでも、ニヤニヤ出来るラブコメ展開でも無く、緻密に作られたキャラクターたちにこそあります。
『ロシデレ』ってこんな話!(真)
物語の舞台となるのは財政界の大物を数多く輩出してきた名門校。
優秀な人間ばかりが集まるそんな学園でヒロインを生徒会長にするため、"過去に傷を持つ主人公"と"努力家だが完璧にはなれないヒロイン"が協力して権謀術数渦巻く会長選挙に挑む。
――というのが『ロシデレ』の大まかなストーリーになります。
どうでしょう。タイトルで敬遠していた人も、少し『おっ?』となる箇所が出て来たのではないかな、と思います。
プロモーションで流れてくる内容と結構違うな?と思われた方も居るかもしれません。ご明察です。
それもそのはず。上記のストーリーラインが動き始めるのは二巻からで、一巻の内容は、そこに至るまでの話だからです。
なので私は今、一巻のオチをかなり大雑把にネタバレしたことになります。
気持ちは分かります、ですが、石を投げながらで良いので聞いてください。
これを執筆している現在で7巻まで出ていますが、タイトルやプロモーションで標榜しているラブコメだけが軸という事は決してありません。
生徒会選挙に向けて巻き起こる様々な障害をヒロインと主人公が苦悩しながら共に成長し乗り越えていく青春群像劇がもう一つの軸としてあり、そこに絡まる形でラブコメがある、という読み方を自分はしています。
そういう読み方が出来るくらいには、かなりしっかりと読み応えのある描かれ方をしています。
この点で興味を惹かれる人だっているはずなのに、何故ラブコメとしてばかり公式は推しているのか? ……はい、そうですね。
答えは簡単。一巻のネタバレになるからです。
ですが、青春群像劇が好きな人なら分かるはずです。青春群像劇で面白いのは出来事の結末だけでなく、そこに至るまでのキャラクターたちの挫折や懊悩、そこからの決意……そういった感情の動きが青春群像劇の醍醐味です。
キャラクターたちの見せる感情の揺らぎ――この点こそ、自分が『ロシデレ』をタイトルで敬遠してしまう人にも勧めたいと思い、この記事を書くまでに至った最大のポイントです。
『独りで何でもやろうとするが実力不足のアーリャさん』と『一生ずっと自らへの嫌悪感で苦しむ政近くん』
表題で既に色々書いておいてなんですが、この項を語るには一巻における核心には触れない程度のネタバレをする必要があります。
出来事のネタバレは気にしませんでしたが、キャラクターのネタバレは前置きします。私はそういう人間です。あと今日まで読んでない人がネタバレを気にするとは思えないので……。
そのため、もし気にされる方が居ましたらブラウザバックして、本編を読んできてください。現代は便利なもので、今あなたがこれを読んでくださっている電子端末でも本が買えますし、そのまま読めます。
まぁ自分は未だに電子移行してないのですが……。紙の本良いよね……。
この作品のヒロインであるアーリャ(フルネームをアリサ・ミハイロヴナ・九条)と主人公である久世政近を一言で表すなら、『努力する秀才』と『努力出来ない超天才』です。
アーリャは非常に向上心や上昇志向の強い完璧主義な努力家で妥協を許さず、他人に足を引っ張られるくらいなら自分一人で全てを背負う。しかし、何事をも完璧にこなせる訳ではない。
一方で政近は自分から何かに打ち込む事が大の苦手でいつも怠惰な生活を送っている。けれど、やろうと思えばほぼ全て何でも生まれ持った才能と実力で出来てしまう。そんな自分に強い嫌悪感を抱いている。
どうですか?もう、好悪混じった感情が出てくるだろうな~という雰囲気を感じ取っていただけると思います。
こうした、ある種対極的とも言える二人を中心として巻き起こる様々な感情の動き(甘酸っぱいラブコメ的意味でも、仄暗さや重み、眩しさを伴った青春群像劇的意味でもある)こそが、『ロシデレ』の最大の魅力だと私は思っています。
もちろん、この他にも魅力的なキャラクターが沢山いて、それぞれがラブコメにも青春群像劇にも深い味わいを加えてくれています。
が、あまり紹介しすぎると二巻範囲までネタバレしてしまって、今度は火刑か磔刑にされそうなので――続きは皆様の目でお確かめください、ということで。
ライトノベルらしい軽快な文章と展開の中に、確かな重量の感情が散らばった傑作『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』、是非読んでみてください。
それでは。
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