サガン鳥栖U18 対 清水エスパルスユース(プレミアWEST 2022)
高円宮杯プレミアリーグウエスト サガン鳥栖U18対清水エスパルスユースの観戦記です。
まず、驚いたのは、アウェー側のゴール裏に現れた、清水エスパルスのサポーターたちの応援幕。実に合計11枚の横断幕が健康センターに貼られており、これは清水ユースのメンバたちも励みになったことでしょう。
健康センターが鳴り物禁止でなかったら、もしかしたら応援隊のリズムが聞けていたかもしれないと思うと、ユースの試合も駅前不動産スタジアムでの開催が望まれます(笑)
サガン鳥栖のフォーメーションは以下の図の通りです。プリンスの神村学園戦で赤崎君が怪我をしてしまったため、前節の広島戦から、右サイドのウイングには堺屋君(通称:長官)が入っています。
中盤は、図では、福井君の1アンカーでインサイドハーフを坂井君、楢原君という形で表記しておりますが、ここは流動的な感じ。楢原君がセカンドトップ的な高い位置を取ってプレッシングに行ったり、坂井君が下がって福井君とダブルボランチ的な対応をしたりと、ボールと相手に応じたポジションを取っていた感じです。
試合は序盤から早々に、清水がビッグチャンスを連発します。目立ったのは、7番の安藤阿雄依君。右サイドからスピードのある鋭い突破で、幾度となくサガン鳥栖のゴールライン際までボールを運んでクロスを供給していました。試合開始早々に、彼の突破からシュートまで持ち込んだものもありましたが、これはポストで命拾いをしました。
10分くらいまでは、清水の前線からのプレッシャーとランニングの強度が高く、鳥栖も思うようにボールをつなげることができずに、逆にショートカウンターの餌食となっていましたが、なんとか防ぎ切ったところで、清水がやや試合を落ち着かせるために構える形になっていきます。
鳥栖としては、まずは、この、序盤の激しいプレッシングをしのぎ切ったことが一つ目のポイントでした。そこからは、鳥栖がボールを保持して、左右に展開しながら攻撃の糸口を見つける作業が始まりました。
この試合の前半のポイントとなっていたのは、増崎君。左サイドバックの北島君との連携で、高い位置でボールを受け取ると、幾度となく鋭いカットインを見せ、良い位置でファウルをもらったり、可能性のあるシュートを放ったりと、攻撃の軸となっていました。
鳥栖がやや押し込む展開になったかと思いきや、清水も黙ってはいません。30分頃には、鳥栖が攻め込んでいる状況でしたが、センターサークル付近で11番の斉藤柚樹君がボールを受け取ると、そこから鳥栖ゴールに向かって猛然とドリブルを開始。鳥栖も大里君がついていたのですが、彼の突破のスピードが速く、攻撃をディレイさせるために、じわじわとラインを下げる対応を見せていたのですが、その隙を斉藤君が見逃さず、ペナルティエリア手前付近から強烈なミドルシュート。ところが、これも、左のポストを叩いて惜しくもゴールならず。鳥栖は再びかなりの命拾いをしました。
清水のカウンターは怖いものの、鳥栖は変わらずに攻撃をしかけ、ついに前半最大のビッグチャンスが。福井君のコーナーキックをファーサイドで折り返し(だったはず)、中央で混戦になってから増崎君の下にボールがこぼれ、増崎君は間髪入れずに強烈なボレーシュート!
正直、決まったと思って立ち上がった矢先に、なんと、清水のゴールキーパー北村風月君が至近距離からのシュートをビッグセーブ!
高校2年生ながらにレギュラーを獲得している北島君の活躍がなければ、この試合、鳥栖はあと2~3点は取れていたと思われるくらいの好セーブを連発していました。
『チャンスの後にはピンチあり』
この格言、誰がどこで言ったものかわかりませんが、本当にその通りの状況となり、先制のチャンスを逃した鳥栖に今度は決定的なピンチが訪れます。前半終了間際、鳥栖のビルドアップのボールを奪った清水が、素早くゴール前に展開。11番斉藤君がシュートを放とうとしてディフェンダーを引き寄せて、中央にいた絶対的エースである9番成澤夢行君へ折り返し(たぶん、そうでした(笑))成澤君が強烈なシュートを放つものの、今度は、お返しとばかりに、鳥栖ゴールキーパー栗林君が倒れこみながら体を張ったビッグセーブ!このセーブが前半最大のポイントだったと思います。ここで失点していたら、清水としては理想通りの試合展開で、後半はさらにペースをつかんでいた可能性もあります。栗林君が前半最大のピンチをしっかりと防いでくれたのは非常に大きかったです。
さて、この栗林君ですが、身長182cm、左利き、至近距離のシュートに強い、などなど、かつてサガン鳥栖に在籍していた中林選手を思い出すんですよね。髪型も同じ感じだし、顔の輪郭も似ているし、ちょっとだけ背中を丸める感じの後ろ姿もそっくりだし、栗林君なのか中林君なのか、混同するときがあります(笑)
後半に入っても、勢いは鳥栖のままでプレーが進みます。そして、待望の先制点は鳥栖に。中盤の競り合いから、増崎君が粘ってボール保持して右サイドを抜け出していく山本君へスルーパス。山本君はそのボールに追いつき、冷静にコーナーキックを獲得します。後半の山本君は、完全に清水の左サイドを攻略するキーマンとなっていて、裏への抜け出し方や受けてからカットインして入っていくスピードなど、清水のディフェンス陣をかなり悩ませていました。直接的には記録に現れていませんが、彼の献身な前後の動きによって右サイドの攻撃が優位に立てていたことをここで強調しておきます。さすがの楓大、略して、サスソウタ(ゴロ悪い(笑))
そして、先制点は、山本君の粘りによって得たコーナーキックを、福井君がどんぴしゃのクロスをあげて、北島君がヘディングでゴールゲット!
何がうれしいって、静岡学園戦で、竹内君が退場した後で数的不利だったにも関わらず、再三再四、この福井君と北島君のコンビでシュートチャンスを作ったのですが、どうしても決まらなかったんです。それを、また、このふたりのコンビでチャンスを作ってゴール決めたことがめっちゃ胸熱。福井君も北島君に上げてくれてありがとう。北島君も決めてくれてありがとう。静岡学園の借りを清水エスパルスで返しました。おなじ静岡市内だから良しとします!(意味不明(笑))
この先制点を機に、鳥栖の攻撃に拍車がかかって、ここから2点目をめがけて猛攻撃がはじまります。
福井君からのスルーパスを楢原君が折り返して坂井君のシュートがブロックされてこぼれたところを堺屋長官が狙いすましたシュートを放ちますが、左のポストにはじかれて惜しくも入らず。
福井君が中央から縦に鋭いパスを入れて、うまく前を向いた山崎君がシュートを放ちますが、これもバーに阻まれて入らず。
増崎君が清水のビルドアップを中央でカットし、そこから裏に抜ける山崎君へ素晴らしいパスを出し、山崎君が両サイドからせまりくるセンターバックに追いつかれる前に抜け出して素晴らしいシュートを放ちますが、これまた北村君のビッグセーブによって阻まれて決まらず。
何度も訪れる得点チャンスに、幾度となく腰が浮き上がりますが、なかなか清水も追加点を許してくれませんでした。こうなってくると、流れが変わっていやな展開になるものですが、鳥栖の強さはそんな定説を覆すほどのもので、ついに2点目の瞬間が訪れます。
清水のビルドアップのパスを中央で楢原君がカット。そこから右サイドを駆け上がる堺屋長官へ好パス。堺屋君が中央に浮き球で折り返したところ、手前からクロスに入ろうとしていた山崎君がセンターバックを引き付け、ボールはその背後にポジションを取っていた坂井君のもとへ。そこから彼がどうしたかというと、軽くジャンプして胸でトラップしたかと思いきや、着地するのと同時に右足を振りぬいて、なんと言ったらいいのか、キャプテン翼の新田君をアレンジした
『ワントラップジャンピングボレー隼シュート』
的な、そんな電光石火の足の振りぬきに、さすがの北村君も一歩も動けず、清水ゴールに突き刺さりました。
その後は鳥栖が何人か選手を交代してクロージング。鳥栖が2対0と勝利を上げ、首位をキープしました。
鳥栖は、中央でのボールカットが目出ちました。清水が強靭なフォワードのキープ力を利用して、そこから両サイドのスピードのある選手を生かそうとしていたのかもしれませんが、鳥栖の誇る回収業者部隊(楢原君、坂井君)に増崎君まで加わって、しっかりと攻撃を分断していました。
清水は、鳥栖にビルドアップからの攻撃を分断されていたので、66分にはエースの成澤くんを交代するなどの工夫を図ろうとしていたのですが、清水の攻撃はどうしても鳥栖のミス待ちとカウンターに頼らざるを得ず(そのカウンターは速くて怖かったのですが)後半はシュート2本と完璧に抑えられてしまいました。
前半の清水のビッグチャンスが決まっていたら、この試合はどう転がっていたかわかりません。それだけ、ここぞという時の清水の集中力はすごかったですし、一発の迫力は見事でした。ただ、そこで仕留めきれなかったことで、鳥栖の地道なビルドアップとプレッシングに徐々に体力を削られ、少しずつ劣勢になっていき、こういった結果になってしまったのかなと思います。
さて、本日のハイライトは2件。
まず、1件目は、栗林君のナイス掛け声。前半、鳥栖が中盤でボールを奪われて、攻守の切り替え時に清水の選手をファウルで止めるシーンがちょっと続いたんですよね。清水7番の安藤君が速いというのもあって、そういった注意深さはあったかと思います。そのなかで、坂井君が鳥栖の左サイドから抜け出そうとする清水の選手を倒してしまったときに、やばいなと思ったら、案の定、主審が
「4番!」
と声をかけたんです。この審判の呼び止め、注意で済んだらいいなと思っていたら、審判が坂井君のところに駆け寄る前に、栗林君が
「4番!落ちついて!」
と背番号とともに審判かのような声をかける事案が発生(笑)
審判よりも先に自チームの選手を背番号でたしなめるシーンは初めて見ました(笑)
そして、2件目は、なんといっても今村元紀君の復帰。アディショナルタイムにはいったころの交代出場でしたが、怪我も癒えてようやくプレミアのピッチに立つことができました。
彼も、U-15の時は、この日ピッチで活躍した福井君、山本君、堺屋君、楢原君とともにクラブユースサッカー選手権の栄冠を勝ちとったメンバーの一人です。ケガなどもあって思うように試合出場できていませんが、プレイできなくても、彼の声掛けは常にサガン鳥栖U18の雰囲気を明るくしてくれます。
試合前のウォーミングアップはもちろんのこと、試合中でも、選手たちを安心させたり、励ましたり、ときにはプレイへのアドバイスを送ったり、常にフォアザチームで明るくそして戦える雰囲気を作ってくれています。
ただ、この試合では、あまりに声掛けが大きすぎたので、第4審の廣瀬芳樹さんに注意を受けたりしていました(笑)
それだけ、チームの中心となっている今村君ですが、彼自身もプレイでチームに貢献したいと思っているでしょうし、かならずや貢献できる選手です。かつて日本一を勝ちとったメンバたちとともに、ピッチ内で彼の力を存分に発揮し、再び、サガン鳥栖U18の場で、栄冠をつかみとってほしいなと思います。