サガン鳥栖U15 対 サガン鳥栖U15 唐津 (高円宮杯U15 九州リーグ)

高円宮杯サッカーリーグ九州(U-15)のサガン鳥栖ダービーが行われました。
両チームのスターティングラインナップは図の通り。ホーム色(青)が鳥栖で、アウェー色(白)が唐津です。

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鳥栖は、前節の福岡戦とはまた異なる陣容で唐津戦に挑みました。個々の能力の高い選手たちが、どういう組み合わせで、どういう戦い方を演じると、素晴らしい化学反応を起こして組織として結実するのか、ガッツ監督がいろいろと試している状況なのでしょう。鳥栖は、個々に能力の高い選手はいますが、そのストロングを組み合わせて組織として機能しているかというと、まだまだ試行錯誤の状態のようです。

唐津は、前の週のロアッソ熊本戦で0-4で敗れました。ディフェンスラインの連係ミスを発端に、キーパーの頭を超されるロングシュートで失点してから、焦りと動揺で歯車が狂いだして立て続けに失点を喫してしまいましたが、スコアレスの時間帯では鋭いカウンターでのビッグチャンスを何度も演出しており、先制点を取れていたらもしかしたら…と思わせる戦いぶりでした。守備の時間帯でのプレッシングにおいても、選手個々が戦術要素を実現しようという意図を持ったプレイで、むしろ組織としては鳥栖U-15よりも成熟が進んでいる印象を受けました。

試合は、前半から互いに主導権を握ろうと激しい中盤での競り合いを展開しますが、鳥栖がボールを保持して、唐津がそれを受け、カウンターでゴールを狙う形で落ち着きます。鳥栖は、キーパーまで利用したビルドアップで、両サイドの幅を利用し、両ウイングに入っている原口君や下田君がビルドアップの抜け道としての機能を果たします。

鳥栖のビルドアップを見渡してみると、最終ラインのポジションの取り方が気になりました。センターバックからボールを受ける位置が低いケースが多く、ボールを運ぶことなく、プレスを受ける前から割と早めに蹴ってしまうので、唐津の迎撃態勢が整った状態でのパスとなり、なかなか成功率もあがらずといった感じで、守備陣形を崩すためにも、ひとりでも多くの唐津の選手を引きつけて(欲をいえば一人でもはがして)からのパスを出せれば良いのですが、そういった形がなかなか作れませんでした。

また、ポジションが低いために、ボールが早めに前進したときにウイングとの距離も離れているので、グループでの崩しに繋がらず、単騎突破の成功可否に依存してしまうシチュエーションが見られました。サイドバックの人選もいろいろと行われているので、そのあたりの改善は今後のメンバー構成であきらかになってくるでしょう。

また、山村君、東口君が、インサイドハーフとして前線の1列下にポジションを取っておりましたが、唐津がしっかりとした圧縮守備で中央にスペースを与えてくれず、最終ラインから中央を抜けるパスがなかなか出せなくて、うまく受けてドリブルをしかけたとしても唐津の密集が早かったため、前を向いて攻撃を組み立てるシーン(ラストパスまでつながるシーン)をなかなか作れませんでした。

鳥栖が得点を匂いを感じさせるのは、サイドを突破して起点を作ってからのセットプレイ。6番岩村君のロングスローやコーナーキックなど、セットプレイからのチャンスを決めきることができるかということが焦点になっていました。そのセットプレイでのターゲットは4番山口君。山口君をめがけてボールを送り込みんでシュートの機会を作るだけでなく、そこからのセカンドボールをまた山口君が握って彼のクロスからの下田君のシュートや岩村君のシュートを演出するなど、セットプレイは山口君を中心として攻撃面を演出していました。ただ、いろいろな事象が彼に一極集中してしまったことが、後の問題を生み出すことになります。

前半は割と圧縮した中での細かいパス交換での戦いでしたが、後半に入ると、鳥栖が、唐津のサイドバックの裏のスペースを狙うボールを出すケースが増え、硬直した戦いから、オープンでスピーディな戦いへの変化を選択していました。

その戦いへシフトしたことによるメリット・デメリットは、当然のことながら両チームにいろいろと引き起こしました。唐津は、自分たちのボール保持の局面においては、鳥栖のプレスに屈してしまって、なかなかよい場面を作れませんでしたが、守備からのカウンター局面においては11番の田中君のスピードを生かして右サイドからの度重なる突破を見せていました。可能性は低いながらも、遠い位置からでも積極的にシュートを放っており、特に、後半は、鳥栖が戦い方をちょっと変えてきたために、唐津にとってもやりやすい展開となったのか、鳥栖に疲労が見え始めてさらにオープン度合いがまして来た頃には、徐々にゴールに近づくプレイができていました。

鳥栖でさすがだなと思ったのは、山村君と東口君の戻り。唐津がカウンターのチャンスを生み出してフリーになったかと思いきや、山村君や東口君が、ピンチの目を潰すべく猛然とリトリートして守備に入りボールをカットするなど、そのあたりの勘の良さと献身的なプレイは見事だなと思いました。

鳥栖としては、ゴールが入りそうで入らない展開、さらに、執拗に裏に抜け出す唐津11番田中君の突破を必死に止める展開が続き、疲れもピークに来たのか、ディフェンス陣にミスが目立ち始めます。最終ラインのビルドアップパスを相手に渡したり、セカンドボールの処理をもたついてボールロストしたり、そういった対処に更に本来不要な体力を使うことで、選手たちの集中力も徐々に失われて行きました。

そういったなか、唐津の選手のミドルシュートが山口君の手に当たって、唐津はPKを獲得。シュートもやや遠いところからだったので、まだ体力があるころには、避けることができたのかもしれませんが、後半のこの時点では、頭も体も疲れがあり、反応することができませんでした。

鳥栖は、失点したことにより、選手交代や選手の配置換えなどを駆使して、何とか打開しようと試みますが、先制してさらに勢いを増した唐津の牙城をなかなか崩せません。時間だけが過ぎていく中、焦りからか、マイボールのスローインをなんとファウルスローで唐津ボールにしてしまい、そのスローインからの対処にもミスが出てしまって、2失点目を喫します。

こうなってくると、集中力は途切れ、最後はビルドアップ局面で、原口君からのパスの処理を山口君が手間取り、そこを唐津の田中君(だったかな?)にかっさらわれて豪快にゴールに流し込まれて3失点目。3失点目のあと、山口君が両手で自分の頬をたたいて目を覚ませといわんばかりに自分自身に気合をいれていたのが印象的でした。山口君は、昨年の高円宮杯で優勝を勝ち取った唯一の2年生レギュラーメンバだったので、そういった重圧もあるかもしれません。彼の実績と責任感ならば、この試合を糧にもっともっと高みを目指せるはずなので、しっかりと振り返って次に繋げてほしいなと思います。

ということで、試合は3-0で唐津の勝利となりました。唐津は、ある程度、選手たちの能力を把握したうえで、ストロングを使い切るそのあたりの完成度は鳥栖よりも高かったですが、自分たちの形にはまらなかったときは、イニシアチブをもって戦う幅が狭くなるかなというところはあります。しかしながら、最後まで衰えない走力と集中力はこの試合を勝利するに十分に値する戦いっぷりで、それに加えて気迫も鳥栖を圧倒してたので、この結果は鳥栖にとっては致し方ないかなと思います。

まだ、新年度始まったばかりなので、両チームともにこれからどんどんと形は変わって行くでしょうが、両チームともに将来が楽しみで、夏のクラ選、冬の高円宮杯と、どういった結果になるのか楽しみであります。

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