九州クラブユース(U-18)サッカー選手権大会 代表決定戦 サガン鳥栖 U-18 対 FC琉球 -18

■ はじめに

九州クラブユース(U-18)サッカー選手権 代表決定戦であるFC琉球 U-18戦の観戦記です。

琉球とは去年の大会でも1回戦で対戦し、ハードワークと粘り強い守備で非常に苦しめられた相手でした。

今回も楽な対戦ではないなと想像はしておりましたが、その想像を更に超える程に琉球の選手たちはよいプレイを見せてくれましたし、その琉球に対して、鳥栖の選手たちも素晴らしい勝負強さを見せつけてくれました。

ちなみに、文中に現れるカタカナの愛称は、下記の選手たちです。

ナオキ様     :中村尚輝 選手
オカヒデ先生   :岡英輝  選手
コーマさん    :大里皇馬 選手
コニタン     :小西春輝 選手
(鬼の)ケンちゃん:鬼木健太 選手
リオリオ     :二田理央 選手

■ 前半

画像5

序盤から両チームともに中盤でのボールへのプレッシング強度が高く、速いテンポで試合が進んでいきました。ポゼション的には鳥栖の方が高く、琉球はボールを奪うと鋭いカウンターで対抗という構図。両チームともに、たびたび相手ゴール前に迫って積極的にシュートを放っていました。

前半から、琉球の選手たちは高い位置から激しくプレッシングに来ていました。鳥栖にボールを自由に持たせて引き込んでもジリ貧になるので、なるべく差し込むパスの段階から抑えたいという判断でしょうか。とにかく、体力勝負とばかりに、前線から網をかけてきていました。

プレッシャーの強さを説明するならば、中野くんがワイドの位置でボールを受けたけれども、琉球のプレッシャーを受けてきれいな形で前を向けず、半身の姿勢のままでゴールキーパーに返そうとパスを送ったらそのパスがずれてしまってコーナーキックになってしまった…って感じです。これで、鳥栖サポーターの皆様には十分伝わるかな。Jリーグの試合では、パギさんやエドゥ様のフォローがあるとは言っても、中野くんのこういったプレイはなかなか見ませんよね。ただ、こういったミスがありながらも、鳥栖は安易にボールを蹴ることは選択せずに、キーパーの大石くんも活用してなるべく左右に大きくボールを回して継続したポゼションとビルドアップを試みていました。

琉球も意図通り、激しいプレッシングで鳥栖のミスを誘い、たびたびショートカウンターを見せていました。カウンターの場面で多く見られたのは、7番の選手のミドルシュート。琉球がゴール前まで迫ってクロスを上げるのですが、鳥栖はオカヒデ先生と竹内くんの高さで確実に跳ね返していました。ここで、セカンドボールを琉球の選手が拾えたケースは、7番の選手がミドルシュートを打って攻撃を完結という場面が多かったです。ただ、シュートも鋭い軌道ではありましたが、枠を捉えたケースは少なかったかなという感じ。ゴールが見えたから積極的に打ったとも見えますし、こじ開けられないからシュートを打たされたとも見えます。たぶん、どちらも正解(笑)

鳥栖のビルドアップは、両サイドからの攻撃がメイン。センターバックがボールを持ち、左右に振りながら、ワイドに構える選手たちに攻撃のスイッチをいれるパスを送ります。そのなかで、全体のフォローを担っていたのは福井くん。最終ラインからの引き出しを担ってポジションを下げたり、ボールを前進できた時にはトップの位置まで上がってシュートを放ったりと、前後のフォローをよくやっていました。

前半に目立ったのは、左サイドからの攻撃。ワイドに構える中野くん、インサイドでさばく福井くん、そしてライン間で受けるナオキ様という、「Jリーガー2名+鳥栖の10番」という攻撃構築は、高校生年代とは思えないほどの迫力。中野くん、福井くんの突破もさることながら、ナオキ様の独特のステップ、ボールタッチ、そして相手を欺くテクニックでプレスをさらっとかわして前を向くプレイはさすがの一言。怪我も明けて、暖かくなってきて、ようやく彼本来の持ち味を表現できるようになってきたみたいです。

試合序盤は鳥栖が押し込むシーンが多かったのですが、琉球も徐々に鳥栖の動きに慣れてきて、少しずつ鳥栖陣地内でプレイする時間も増えてきました。鳥栖が、サイド攻撃を意識するあまり、中央へ入れるボールが少なかったので、琉球にとってもボールの出先が読みやすく、動きに迷いがなくなってきて、なかなか鳥栖も最終ラインからビルドアップの出口を見つけられない時間が増えてきました。

そういった状況を見て、中野くんが最終ラインに対して、
「遊びのパスを入れろ!」
という指示を送っていました。
この指示は…すごく…良いなと思いました(←語彙力w)。
センターバックからボランチにボールを入れることで、たとえボランチが前を向けなくても、相手を少しでも中央に寄せることでほんのわずかであろうとサイドの選手に時間を与える事ができます。中野くん、福井くん、楢原くんなど、彼らレベルならば、わずか1秒でも時間を得る事で、その次のプレイの選択肢を大きく増やしたり、相手の追いつかれることなく前進させることができますしね。

そういった過程を経て、先制点を挙げたのは鳥栖。サイドからのクロス攻撃でたびたびゴールに迫る鳥栖でしたが、琉球のセンターバックの適切な処理とキーパーのファインセーブ(ホント、楢原くんも中野くんも何度となく素晴らしいクロスを上げていましたが、琉球最終ラインは見事にクリアしていました)でなかなかゴールが奪えない状況でしたが、セカンドボールも拾えて押し込んでいる状態が続くと中央のペナルティエリア外から、アンカーの林くんが左足で放った弾丸シュートが見事に琉球ゴールに突き刺さりました。

実は、このゴールの少し前にも、林くんはミドルシュートを放っていて、その時はインフロントキックでカーブをかけながらサイドネット目がけてコントロールされたシュートを放ちましたが、ステップワークの軽い琉球のGKに見事に阻まれました。このくらいのボールスピードでは入らないと悟ったのかはわかりませんが、次に放ったミドルシュートはインステップで蹴った強いボール。これがうまくアウトにかかってキーパーの届かない所から曲がってゴールに吸い込まれました。いやー圧巻。お見事でした。

林くんは、去年のU-15高円宮杯優勝の立役者。昨年度はセンターバックでU‐15の最終ラインを担っていましたが、本年度のU‐18では、アンカーの位置でのプレイをチャレンジしています。大型のアンカーで、長いボールに対して1列前でスクリーンできるのは心強いですし、もともと持っていた左足のロングキックの精度を生かして一発でひっくり返せるパスも魅力的です。課題は、密集の中でのボール奪取とポジショニングですかね。そのあたりは、先輩の坂井くんはお見事。この試合でも、琉球がフォワードに向けてラストパスを送ったところや、ここで奪われたら大ピンチになるというところで、坂井くんが防波堤となるカットを幾度となく見せてくれました。坂井くんもこの試合の陰の大功労者です。

このゴールを契機に鳥栖のペースで進むのかと思ったのですが、すぐにFC琉球が同点に追いつきます。コーナーキックから鋭いボールが鳥栖のゴール前に入り、ドンピシャのシュート。ここはディフェンス陣がブロック。その後も跳ね返りを琉球に拾われて何度もシュートを放たれますが、オカヒデ先生、大石くん、さらにもう一回(多分)オカヒデ先生がはじき返しと、何度となくゴールを防ぐ素晴らしい守備。しかしながら、最後は琉球の執念が勝ってゴールゲット。琉球が執念で同点に追いつきます。

ここで、試合もすこし気持ち落ち着いてこのまま折り返しかと思われたのですが、鳥栖もお返しばかりと、セットプレイからのつなぎでゴール前にクロスを送り、最後はキーパーが防いだ跳ね返りをナオキ様が左足でゴールゲット。一進一退の攻防の中で。同点に追いつかれはしたものの、1点リードの状態で折り返すというよい展開でハーフタイムを迎えました。

さて、前半の総括事項としては、竹内くん。ビルドアップの肝となるべき最終ラインからの展開を担っておりまして、その役割の重要さからも、ものの見事に、周りのメンバーの指示の声が竹内くんに集中しており、ピッチから前半に聞こえてきた声をランキング(想定)すると

1位「変えろ!」
2位「たけうちぃ!」
3位「来い!(出せ!)」

という事で、竹内くんを呼ぶ声が堂々の2位にランクイン(笑)

竹内くんを呼ぶ声は、ピッチ外からも聞こえてきてて、ビルドアップで、竹内くんがボールを運び出したはよいものの、パスがずれてしまって、自分が空けたスペースを狙われてカウンターを受けるシーンがあり、田中監督から1つのプレイですべてが変わる可能性があるから気をつけろ的なご指導が聞こえるシーンもありました。

とはいうものの、竹内くんも、昨年はあたふたしていた感じの時もありましたが、今年に入ってだいぶん落ち着きを見せてきてくれて、安定感の増したプレイを見せてくれました。竹内くんから中野くんに差し込むボールは正確で見事なスピードでチームの攻撃のスイッチをいれていましたし、前半終了間際は、琉球がカウンターで抜けだしてあとは竹内くんのみという状況でありましたが、竹内くんが見事にデュエルを制してクリアするシーンもありました。ここは、みんな、褒めてあげてーって感じでした。(笑)

■ 後半

画像6

後半になり、鳥栖はナオキさまに代えてコニタンを投入し、システムを4-4-2に変えてきます。狙いとしては、おそらくですが、琉球のビルドアップに対するプレッシングの人数を合わせやすくなるのと、前半からクロスは入っていましたがなかなかシュートにつながらなかったので、ゴール前の人数と強度を高めるといったところでしょうか。あとは、怪我明けのナオキ様のコンディションを考えてというのもあったかと思います。

早速、この2トップにした効果がありまして、鳥栖がボールを奪ってもそこからつなぐ形がとれずにアバウトに蹴ったとき、前半はコーマさん一人だけだったのでなかなか速攻にはつながらなかったのですが、後半はコーマさんが倒れながらもキープして、コニタンに渡してシュートを放つというシーンもできました。

また、後半に躍動したのは楢原くん。琉球が前半から飛ばしていたので、後半に入って相手に疲れが見えだすと、安藤くんとの連係も活用しつつ、持ち前の「Bダッシュ」がさらに輝きを増し、琉球の左サイドバックも必死に食らいついていったのですが、さらにその上を行くスピードで幾度となくサイドから切り裂く動きを見せていました。

どうしても追加点が欲しい鳥栖は、後半の飲水タイムのタイミングで、林くんに代わって鬼のケンちゃんを投入してきます。ボランチには福井くんが下がったので、システム的にはこのような感じです。

画像4

この、鬼のケンちゃんが入って早々からチームに活力を与えます。中野くんに代わって左サイドのワイドを取り、琉球ディフェンスラインの裏へトップスピードで抜け出す動きを繰り返して、福井くんや中野くんからのパスを呼び込みます。

しかし、このタイミングでのケンちゃんは、相手にとっては
「ハーゴン倒したと思ったのにシドーとかいるのかよ!」
的な、絶望感(笑)かなりの心理的ダメージも与えたと思います(笑)

ケンちゃんがこの試合ですごく良かったのがクロスの精度。飛び出したスピードのまま上げられたクロスがコーマさんやファーサイドの楢原くんにどんぴしゃりとあって、かなりのチャンスを演出しました。特に、ケンちゃんのクロスからのコーマさんのヘディングは、ネットが揺れて決まった!!と思ったのですが、残念ながらサイドネット。この試合はコーマさんに決めてほしかったですね。今年もシーズン序盤でアクシデントによる怪我をして、その間に本来はサイドの選手だったリオリオがセンターフォワードにはいって地位を確立したり、技術力を持ち合わせていてもなかなか報われていないので、フォワードとして焦りを生み出す前に、ゴールを決めて自信を持って全国大会の場に出てほしいですね。

このように、リードしている鳥栖が選手交代なども交えて、ポゼション率もさらに上がり、幾度となくチャンスを作っていたのですが、圧巻だったのは、琉球のゴールキーパー。とにかく、これは決まっただろうと思われるシュートをことごとくセービングしていました。先程のコーマさんとコニタンで作ったカウンターのシュートや、中野くんがカットインして右足で放った強烈なシュートも防がれましたし、楢原くんが琉球の左サイドをぶちぎって放ったファーサイドへのシュートも右手一本でフィスティングされました。そして、フィスティングしたボールも、鳥栖の選手が押し込めないところ(選手が詰めていないところ)にうまく弾いて、詰めることすら許さず。ゴールキーパーの活躍がなかったら、大量得点で勝利できていたかもしれません。

押し込んで、決定的シュートを放って、決めきれない時間が続くと流れが変わってしまうのがサッカー。
「1点差ならば、最後にワンチャンスあればなんとかなる」
逆に琉球のサポーターの立場だったら、そういう気持ちで見ていたかもしれません。
そうやって、耐えに耐え抜いた琉球にチャンスが訪れました。

カウンターの場面を作って前進し、前半から再三再四狙っていたミドルシュートが鋭くゴール左隅へ。
このシュートは今度はお返しとばかりに長瀬くんがファインセーブ!
このシーンはかなりしびれました。決まれば同点という中、一発チャンスを作った琉球のシュート。足元もスリッピーで後半はなかなかそういったセービングのシーンがない中で素晴らしい集中力を発揮してくれました。

ただ、ほっと安堵したのもつかの間、そこで得たコーナーキックのチャンスで、ゴール中央に鋭いボールを中央に送って、フリーとなっていた7番の選手(かな?)が高い打点でドンピシャヘッド!これが、見事に鳥栖のゴールに突き刺さって、同点に追いつかれてしまいました。琉球ベンチの喜びようは、すごかったですし、改めて、この試合への意気込みが伝わってきました。

さて、試合時間は残り10分。焦りたい時間帯ではありますが、鳥栖はこれまで通りに最終ラインからビルドアップし、両サイドへの展開で打開を図ります。同点に追いついてさらに意気の上がった琉球の選手たちが、さらに素晴らしい集中力で鳥栖のクロス、シュートを防ぎます。レギュレーション上は、延長などなく、引き分けたらこのまますぐにPK戦とのこと。正直なところ、このままPK戦となってしまったら、琉球のキーパーが当たっていたので、嫌な感じはしていました。

そして、アディショナルタイムに入るころ、PK戦の覚悟をしたときにドラマは訪れます。ペナルティエリアよりもまだ少し手前、ハーフスペースあたりで(おそらく)坂井くんからのボールを受けた安藤くん。外にボールを持ち出しながら、琉球の最終ラインに向かってボールを運びます。琉球のサイドバックが付いてきたのですが、ここで安藤くんは、楢原くんをおとりにしながら進路を内向きに変えてデュエルを選択しました。

安藤君の単騎突破を見て、進路を阻もうとボランチ、センターバックが人数をかけてボールを奪いにくる琉球。そこに相手がいようと構わずに猛然とドリブルで突っ込む安藤くん。その姿は日向小次郎の生き写し、まさに猛虎。3人に囲まれた安藤くんでしたが、ものともせずに直線的なドリブルで足を止めることなく突進します。

この前向きなプレイに運も味方して、相手の足や自分の足に当たりつつも強引にボールを持ち出してディフェンスラインの裏に抜け出しました。そして、ゴールライン近くまで運んだあと、中央に構える2トップにクロスと思いきや……そのままニアサイドをぶち抜いて起死回生の勝ち越しのゴール!まさにタイガーショット!!

キーパーもややファーよりに、クロスのほうに重きを置くかのように構えており、おそらく、誰もが、まさかニアを破ってゴールにねじ込むとは思ってもいなかったかもしれません。コース的に、スライディングに入った相手の足に当たって入ったのかもしれませんが、まさに相手のブロックをものともせずにゴールネットに突き刺さったタイガーショットは、鳥栖ベンチに歓喜の輪を生み出しました。

勝ち越しゴールの後は、フォワードに運動量もあり、ボールキープ力もある増崎くんをいれて逃げ切りを図ります。終了間際にミドルシュートを浴びるシーンもあって冷汗はかきましたが、見事に勝利して九州代表として日本クラブユースサッカー選手権への出場切符を手に入れました。

画像4

■ おわりに

安藤くんのタイガーショットが決まるちょっと前。琉球の左サイドバックの6番くん(確か)が、足がつりかけていたみたいで、抑えたり伸ばしたりする仕草を何度か繰り返していました。楢原くんが幾度となく裏に抜け出して勝負をしかけ、その対応で6番くんもかなり疲労がたまっていた模様で、結果的には、楢原くんが積極的に繰り返し勝負をしかけていくことが相手にダメージを与え、最後は安藤くんの突破に繋がりました。

90分の中でうまくいくところもいかないところもありますが、チームとしてぶれずにやるべきことをしっかりとやり続けたこと、日ごろのトレーニングで90分間走りきる体力を身に着けたこと、これが勝利につながったのかなと思います。

また、琉球の選手たちも、かなり劣勢な時間帯もありましたが、ゴールキーパーを中心に、素晴らしいファイティングスピリッツで鳥栖相手に一歩も引かないサッカーを見せてくれました。彼らのファイトにも拍手を送りたいです。

さて、サガン鳥栖U‐18は、「ディフェンディングチャンピオン」として、25日から始まる日本クラブユース選手権に臨みます。これまでの練習の成果を思う存分ぶつけて、願わくば二連覇達成目指して頑張ってきてほしいですね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?