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発電事業者である前に、農業者であること。


さがみこファーム代表の山川です。先日、農業関係者、経営者、研究者などからなるグループが視察に来られました。

その中で、長野県在住の方がいらして、「八ヶ岳山麓では太陽光関連のトラブルが頻発している。どのように地域と関係を築いているのか?」と質問を受けました。

「一言では答えられないのですが、」と前置きをした上で、いくつかのエピソードとポイントをお伝えしました。

私が特に重要だと思うのは、「発電事業者である前に、農業者であること。」です。

実はそれは当初から意図したものではなかったのですが、ベストな形を探るうちに結果的にそうなって、最近それがすごく大事なことではないかと感じるようになりました。

太陽光発電事業というものは、稼働後はメンテナンスと草刈がある以外、ほとんど現地に足を運ぶ必要がありません。これは「管理にあまり手間がかからない」という意味では効率的であるものの、地主に地代が入る以外、大多数の地域の人たちにとって太陽光発電はほぼ無関係です。
にもかかわらず、景観を害したり、土砂災害の危険があったりとマイナス要素を地域が被る可能性があります。発電事業者がかなり意識的に地域に有形無形の価値を還元しない限り、地域にとってはプラス要素よりマイナス要素が上回ってしまいます。これが、よそ者が太陽光発電を行う際、地域トラブルを起こす基本的な構造です。
大多数の地域の人たちにとって、よその者が運営する太陽光発電は、自分へのメリットが少なくデメリットの多い、自分とは縁遠い、不可解で厄介な存在であると言えるでしょう。

他方、農業というのは基本的に土着性の高い営みです。
農繁期はほぼ毎日足を運ぶ、人と顔を合わせれば世間話をする、農作物が取れれば持っていく、逆にいただく…そういう日常の暮らしの営みが農業です。私たちはブルーベリー農園なので、収穫時期に地域のおばちゃんたちにパートで働いてもらったり、観光農園で外から人が来ることで地域に賑わいや新たな交流が生まれます。そのように、地域との様々な接点があります。

もちろん、いいことばかりではなく、一般的に農村では、水を巡る地域トラブルや、農薬の利用についての考え方の違いや、隣人同士の(世代を超えた)いざこざなど、簡単ではない問題もあります。ただ地域の人にとって農業は「何をやっているか」が想像がつきやすい。同じ地域で農業をしていれば、暑さ寒さや同じ苦労を共有でき、仲間意識も持ちやすい。良くも悪くも農業は地域の人たちにとって身近な存在であるのです。

農業が一種の『共通言語』として機能し、よそ者である私たちと地域をつなぐ役割を担ってくれるのです。その意味では、私は「たまエンパワーの山川さん」ではなく、「さがみこファームの山川さん」として地域の人たちに認識されています。「農業者であり、かつ発電事業者であること。」それが自分達の強みの一つだと思っています。

農業者として信頼関係を築くと、太陽光発電の理解も結果的に高まっていきます。「家に太陽光発電をつけようと思ってるんだけど」などと相談を受けたりするようになりました。
時間はかかりますが、実はそれが地域理解の一番の近道なのではないか、と思っています。

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