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IPCC第6次報告書を紐解く

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書(第6次評価報告書第3作業部会報告書、AR6/WG3報告書)が先日公表されました。
ご存じの方も多いと思いますが、IPCCは国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略で、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、5~6年ごとにその間の気候変動に関する科学研究から得られた最新の知見を評価し、評価報告書(assessment report)にまとめて公表しています。
前回2014年の第5次評価報告書から8年経ち、第6次評価報告書が公表されました。評価報告書には、第1作業部会(WG1):科学的根拠、第2作業部会(WG2):影響・適応・脆弱性、第3作業部会(WG3):緩和策、それぞれの報告書がありますが、今回はWG3:緩和策の報告書を少し紐解いてみたいと思います。

以下、この報告書から抜粋してみました。
■「我々は温暖化を1.5℃に抑制する経路上にない。2010年~19年の年間平均温室効果ガス排出量は、人類史上最高となった。現状では1.5℃目標どころか。2.0℃目標の達成する難しい。」
温室効果ガス(GHG)は、増加率は下がって生きているものの、増加し続けています。

■その⼀⽅で、
「18か国がこの10年間GHGの削減を持続させており、中には⽣産に伴うGHG排出量をピーク時から3分の1以上削減した国も複数存在している。」

■「脱炭素技術のコストは⼤幅に低減しつつあり、2010年から2019年にかけて、太陽発電は85%、風力発電は55%、リチウムイオン電池は85%価格が低減している。それに伴い、太陽光発電は10倍以上、電気自動車は100倍以上普及が進んだ。

そして
■「1.5℃の実現のためには温室効果ガスの排出を2025年までにピークアウトし、2030年までに2019年に比べ40%の削減、そして2050年までにネットゼロを達成する必要がある。」
とも述べています。下の図は分かり難いのですが、赤色の現状の政策や、現状を少し強化した程度では削減量が全く足りないことを示しています。

気温上昇量は、累積の排出量にほぼ比例するそうです。そして大気中のCO2濃度が2倍になると、3℃気温が上昇するとの研究結果が出ています。

■「1.5℃達成のためには、現状の延長ではなく、社会変容を含むこれまでに類を見ない野心的な取り組みが早期に必要である。そして、それを実現するための対策オプションは存在している(100⽶ドル/tCO2以下,現在既に市場から⼊⼿可能な緩和策だけで、排出量を半減するポテンシャルを有する)。」

因みに、100⽶ドル/tCO2というのは、ガソリン価格に換算すると30円弱の上昇に相当するとの事です。

■「1.5℃経路を追及しても、経済成⻑が停滞するようなことはない。GDPが2050年にかけて2倍程度になるところ、1.5℃経路の実現のための緩和策の実装により、それは3~4%程度低減する。」

この報告書から読み取れるのは、地球温暖化は待ったなしの状況にあり、ここ数年間が正念場だということ。一方で、実現のための技術はあるが、脱炭素技術の普及だけではなく、全ての部門・地域において社会変容を伴う野心的な取り組みが必要である、といことかと思います。

翻ってさがみこベリーガーデン(SBG)では何をしなければならないのか、大きな課題です。
以前にもこの欄で触れたことがありますが、SBGでは自動車や草刈り機などの化石燃料、ポンプや冷凍庫などの電気、そして肥料が主なCO2排出源になります。これらをどうやって削減していくのか、私たちに何ができるのか、これから実践しながら考えていきたいと思います。
                         (小林 2022.4.16)


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