見出し画像

方位・角度・発電量

ソーラーシェアリングに限りませんが、太陽光発電を計画する際、より多くの発電量を得るために、太陽光パネルをどのように設置するかがとても大事になってきます。
夏の太陽は高く、冬の太陽は低くなるように、季節によって太陽の通り道は変わってきます。また、東からのぼり西に沈むように刻一刻位置が変わります。

太陽光パネルに対して太陽が垂直に差し込んだ時が発電量が最も大きくなります。そうするとパネルの方角は真南がベストです。では傾斜角はどうでしょうか。冬は太陽が低いのでパネルは立て、夏は太陽が高いのでパネルは寝かせる、季節によって変わってきます。例えば相模原では6月の最適な傾斜角度は7°ですが、12月は64°と大きく変わります。

MONSOLA-20最適傾斜角

追尾型太陽光発電システムは、まさに季節や時間によって変わる太陽に合わせて、パネルの向きと角度を自動的に調整するシステムです。メーカーによると、固定式に比べ発電量は1.4~1.5倍増えるそうです。しかし、どうしても建設コストが上がってしまいます。また、油圧やモーターなどで駆動するため、メンテナンスを適切に行わないと故障の原因になります。

そのため、年間を通して発電量が最大になるような最適な角度でパネルを固定した方が現実的だと判断しています。相模原の場合、1年を通じて日射量が最大になるのは、南向きの方位で約30°の傾斜角になります。また、方位が変わると最適な傾斜角も変わってきます。例えば東向きにすると傾斜角は低いほどいいことが分かります。


とは言っても、いつも南向きに設置できるわけではありません。南北に長い土地では、南向きにするより東西方向に設置したした方がいいケースもあります。下の写真はソーラーシェアリングではありませんが、陸屋根に東向きと西向きに交互にパネルを設置した例です。この方式は、狭いスペースに効率よくパネルを設置できるというメリットがあります。ただし、発電効率は南向きに比べ10%程度低下します。

最近これらとは発想を変えた設置方法として、垂直設置型ソーラーシェアリングが出てきました。これは、両面発電モジュールのパネルを地面に対して垂直に設置するものです。一番の特徴は、少ない面積で設置できるということです。また、南北方向に設置することにより、1日の発電カーブが朝夕にピークを迎え、昼間の発電量が下がるという特長があります。季節によっては、朝夕は再エネ電気が少ない一方需要は多く、昼間は逆に再エネ電気が余る状況にあります、垂直型ソーラーシェリングは朝夕に発電のピークを向かえるため、発電と需要のバランスが取れます。また、朝夕は電気の市場価格が高いため、売電収入が増えるというメリットがあります。
従来型の南向30度と比較すると、片面の発電で言えば年間発電量が4割近く下がる計算になります。他方、垂直型は両面受光の特殊パネルを使用するため、1枚で東西2枚分発電できることを加味すると20%程度増えるとも言え、一概に従来のような単純比較ができません。各地で設置事例が出てきているため、発電量だけでない評価が待たれるところです。


ソーラーシェアリングでは、下で栽培する作物の選択や、遮光率、地上からパネルまでの高さ、トラクター等作業機械の作業空間確保など、設置方法以外にも検討しなければならない要素が沢山あります。私たちは今まで4基のソーラーシェアリングを建設し、さらに来月から新たに2基の発電所を建設します。今思うと「こうすれば良かったな」とういう点もありますが、自分たちで実践することにより多くのノウハウを得てきました。これからも実践を通じて知見を積み重ね、ソーラーシェアリングを広めていきたいと考えています。                        
                         小林孝(2024.1.27)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?