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日射量、照度、光量子束密度?

2回にわたって遠隔監視について書いてきましたが、もう一つ重要な環境情報があります。「光の強さ」です。
太陽光発電を行うものにとっては、発電がきちんと行われているだろうか?一番気になる所です。太陽電池の出力は光の強さに比例するため、太陽の日射量を把握することが重要になります。もし日射量に比べ発電量が少なければ、何か問題を抱えている可能性があります。
また植物の栽培にとっても、水と光は最重要項目です。ソーラーシェアリングの下、遮光された状態と遮光されていない状態で、植物の生長にどの程度影響があるのか?遮光率〇〇%と言っているが、実際の光量はどの程度違うのか?これに答えてくれる定量的なデータはあまりありません。今後、ソーラーシェアリングを普及させるためにも、このような基礎データを積み重ねることが大事だと考えています。

さて、「光の強さ」はどうやって測るのでしょうか。
地上には300nmから3,000nmの波長の光が太陽から降り注いでいますが、人は380nmから750nmの光を見ることができます。植物は、400~700nmの光を光合成に使い、700~780nmの遠赤外線の領域を発芽や開花などの生育の調整に使っています。
太陽光パネルでは300~1200nmの波長の光で発電を行っており、日射計を使って日射のエネルギーを測ります。エネルギーを測るので、単位はワット(W/㎡)になります。日射計は下の写真のように、全天から降り注ぐ光を取り込むために、センサーがドーム状のガラスに覆われています。

日射計

一方、植物が感じる光の明るさは、別の尺度である光合成光量子束密度(PPFD)、単位は【μmol/㎡・s】で測るということを最近知りました。光を波ではなく、光の粒(光子)として捉え、1秒あたり、1㎡あたりの光子の数を数えるものです。そして光子の数は膨大なので、mol【6.03×(10の23乗)個】という単位を使います。う~ん、よくわからないので調べてみたところ、どうやら光合成の仕組みに関係がありそうです。

光はエネルギーを持っており、短い光ほど大きなエネルギーを持ちます。植物は葉緑体の中にあるクロロフィルで光子を吸収し、光合成を行います。クロロフィルには2つの吸収帯があり、青い光(400~500nm)と赤い光(600~700nm)を主に吸収します(間の緑の光は吸収されないので、葉っぱは緑色になります)。青い光の光子と赤い色の光子のエネルギーは違うのですが、光子の数によって光合成が起こるので、青い光は無駄なエネルギーを吸収したことになり、無駄なエネルギーは熱として発散されます。そこで、光の持つエネルギーを測るのではなく、光子の数を数える、すなわち光量子束密度を測るといことの様です。

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どのぐらいの数値になるのでしょう?
太陽の直射日光では約2000μmol/㎡・s、曇り空では約50~100μmol/㎡・s、蛍光灯の下で約10μmol/㎡・s程度だそうです。

次に、光の強さと植物の成長の関係を調べたところ、東京農工大学の論文が見つかりました。これは、ノーザンハイブッシュ系のウエイマウスとラビットアイ系のティフブルーの2つの品種について、光強度と光合成速度を計測したものです。これによると、光合成速度は光強度が500μmol/㎡・sまでは直線的に増加し、それより光強度が強くなると、光合成速度の増加程度は徐々に小さくなり、1,000μmol/㎡・s付近で飽和点に達し、それ以上では光合成速度はあまり増加しない、という結果です。「植物の光飽和点」といいます。

光合成速度と光強度

発電と生育、つまり日射量と光合成光量子束密度、どちらも知りたい情報です。でもどちらの計測器も高価なのです。今はまだ買えません。しかし、照度センサーは安く出回っています。精度は落ちるでしょうが、代替で使えないか考えています。ただ、照度は人間の目に感じる明るさに近づけるため、人間の目の感度が高い緑色の領域を高めに補正しています(植物とは逆です)。植物とは関係ない尺度なのでそのままでは使えないのですが、逆の補正をかけてやれば光量子密度に変換できそうです。さて、実現はできそうですが、ちょっとハードルが高いし、目下思案中です。
(2021.10.30 小林孝)

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