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雨上がりのある日、森に入った。
目の前に何かきらきら光るものが飛び込んできた。
枝から細い糸にぶら下がった紡錘形の物体。水滴に太陽が反射している。
しばし見とれてしまった。しかしこれは何だろう?
何かの種が枝からぶら下がっているのだろうか?
まるで蜘蛛の糸のように見える細い糸は何だろう?
不思議なものを見た。
森の雫。

私たちの農園がある青野原前戸地区は、今でこそ水道が引かれ水に不自由していませんが、以前は飲み水は湧水に頼り、湧水量によって人家の数が決まっていたそうです。私たちも水には悩まされています。当初は、農場に隣接する森の崖下から沢の水をくみ上げて使っていました。しかし、沢の水量は不安定です。大雨が降ると土砂に埋もれてしまいます。そして30m下からくみ上げるため、大きなポンプも必要です。いつも人の手で手入れをしていないといけないので、大きな負担でした。そのような中、今は使われなくなった井戸をお借りすることができ、今では農園で使う水は、全て井戸水を使っています。
農園では1年間に約680㎥の水を使っています。東京都水道局の資料によると、4人世帯が1年間に使う水の量は280㎥だそうですから、2.4軒分に相当します。都会で生活していると、水のありがたさを忘れがちですが、ここに来ると森に降る雨の一滴一滴が私たちの恵みになっていることをしみじみ感じます。

そういえば農園から70mほど下っていくと道志川の河原に着きますが、道志川は明治の時代より横浜市へ水を供給しています。横浜へ寄港する船乗りたちからは「赤道を超えても腐らない水」と言われていたそうです。下の写真は、道志川の河原の風景です。崖を下るので若干大変ですが、とても気持ちのいい所です。農園に寄ったついでに行ってみませんか。

冒頭の“森の雫”ですが、10分後戻ってみると、既に輝きを失っていました。
一瞬のきらめきでした。
(2022.11.26 小林孝)

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