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さがみこファーム代表の山川です。
私たちが農業に本格的に参入して2年余りが経ちます。
日々学びながら現場に向き合っていますが、そこで常に顔を出すのが「業界の常識」です。

農業界の様々な常識はある意味では真実なのですが、常識とは一般的には過去の積み重ねで、それが私たちの農場に、そして未来に通用するとは必ずしも限りません。
「本当にそうなのか?」「もっといい方法はないか?」と、常に常識をアップデートしていくことが重要だと私は思っています。

そして、その代表格が、「鳥害防止ネット」です。

果樹栽培農家において、売り物である果実を鳥に食べられることは収入減に直結するので、優先順位の極めて高いものです。ブルーベリーは鳥の中でも特にヒヨドリが主なターゲットになります。爆音器や鳥の警戒音を出して追い払う、パチンコで直接攻撃する、天敵の鷹に似せた凧を掲げる、テグスを張るなど、過去様々な試みがされてきましたが、ネット以外の効果的な対策はないようです。たくさんの人にヒアリングしましたが、ほとんどの人は「やはりネットでしょ」と言っていました。

ただ、6200㎡ほどある私たちのブルーベリーの農園をネットで囲うとそれなりのコストがかかり、かつ冬場は積雪対策でネットを取り外さないといけないため、手間がかかります。
特有の事情としては、ソーラーシェアリングの架台はネットを張るには梁や柱が邪魔をしてなかなか難しく、パネルに加えてネットを張ると遮光率が上がるので、日照不足の懸念もあります。また、観光農園なので来園者に圧迫感を与えないようにしたいというのもあります。
私たちのブルーベリー農園は6月初旬から9月初旬まで収穫期の異なる木を33種類植えていますが、個々の木の収穫期はおよそ2週間です。そのためだけにどれだけの労力とコストを掛けるのかという点で、「ネット以外の効果的な対策は本当にないのだろうか?」とやはり思います。

私はあきらめの悪い人間なので、そういう状況に逆に燃えるタイプで、効果的な対策ができたらきっと他の果樹農家でも使えるだろうと、色々と模索しています。

これは農業の常識に捕らわれていては解決できないことは明らかで、そこで、異分野との掛け合わせで何か打開できないだろうかと、ICT企業や研究機関などからなるプロジェクトチームを組成して、検討を始めています。ただ、今のところはまだ効果的な対策に行きついていません。
3週間ほど前から、ネットやテグスなどの異なる対策を施したエリアを設定して、定点カメラで鳥の行動をモニタリングしています。鳥の採食行動を観察すると、テグスはカラスには効くけれどヒヨドリにはあまり効果がないというのはどうやら事実のようですが、侵入エリアに熟した果実があっても食べない場合もあります。お腹がいっぱいだったのか、見えなかったのか、、私たちはまだまだ知らないことが多いですね。

ヒヨドリのことをもっと学ばないといけないと思います。

仮にヒヨドリ語が話せたら、ヒヨドリと共存する道が開けるのかもしれません。カラスは多様な言葉でコミュニケーションをとるため、カラス語を駆使してカラスを害のない場所に移動させるような実験をしている例もありますが、ヒヨドリはそういうことができるのだろうか?
今度ヒヨドリに詳しい研究員を招いて現地の検討会をする予定です。
ドローンや画像認識、センシング技術を持ったところの協力があれば面白いことができるかも…?逆に、何もせず一定量は鳥に食べられてもいいようにするというやり方もあるかもしれません。

農園ではおいしい果実を一定の収量を確保することが第一なので、様々な対策は経営判断になりますが、常に農業界の常識を疑い、常識に囚われず、面白がりながら取り組んでいきたいと思っています。


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