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何を伝えるべきか、見失わないために

「ご連絡が遅くなり、誠に申し訳ございません。当社の魅力が伝わる素敵な文章だと思います。こちらでお願いできればと存じます。当社の要望を叶えてくださり、誠にありがとうございます。」

プレスリリースの発表準備を進めていたときのこと。関係者からいただいたメールにはっとしたことがある。この日のことを忘れないために、ここに投稿しようと思う。

クライアント企業と他社との提携に関するプレスリリースを準備していたときのこと。クライアントとの定例ミーティングの中で直前に情報をキャッチしたこともあり、提携先企業との調整を急いで、ドラフトを作成していた。先方の担当者とクライアント双方に原稿確認をお願いしたところ、先方から修正の指示があった。その内容がリリース全体のトンマナからすると適切ではないように感じたため、その理由を付記し、クライアントには原案ままでいきたく、その旨を先方に打診するが問題ないか?と確認して連絡したのだった。

翌日。見知らぬ番号からの着信。アポ先へ向かう途中、歩きながら出てみると、提携先企業の担当者からだった。

急いで雑居ビルの入り口を間借りして話を聞く。電話はリリースに関してのものだった。こちらから状況を説明すると、すごく納得したご様子。ただ、なんとなく漂う切ない気配を感じ、よくよく話を伺ってみたところ、実はその会社としては赤入れした趣旨については世の中には知られておらず、そこを何とか伝えたかった、とのこと。でも、あなたのご指摘はおっしゃるとおりなのでわかりました、という回答だった。

なるほど、そういう思いがあったのか・・!型のあるリリースとはいえ、もちろん、やりようはある。「別の箇所にその旨を追記する方法を考えます!」と伝え、直後のアポを終えてからカフェに駆け込み、ドラフトを修正して送信。すぐに冒頭のメールが届いたのだった。

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このメールを受け取り、その丁寧な文面から、私は自分都合で仕事を推し進めようとしていたことにハッとする。スケジュール優先で焦っていて、彼らの思いをちゃんとくめていなかったのだ。クライアントを通り越して、直接面識のない提携先とやりとりするのは、なかなかにハードルは高い。ただ、あそこで一本、私から電話を入れてもよかったのではないか?

なるべく端的に無駄のないコミュニケーションを!と思うがあまり(特に最近は、電話は相手の時間を奪ってしまうというネガティブな側面を意識してしまう)、きっと言葉の行間から急いでますというニュアンスが伝わったに違いない。すっかり自分本意になっていることを反省したのだった。

あのとき、お電話をもらってなければ、あのリリースは原案のまま世に出ていたろう。だが、それは伝えるべきことを置き去りにしたままの、かたちだけのリリース。そして、私自身はそんな切ない思いに思いを馳せることもなかったに違いない。広報に唯一の絶対はないけれど、だからこそ、丁寧に正解をつくっていくことが求められているのではないか?

この日のことを胸に刻み、また明日からも、誰かの喜びにつながる仕事をしようと思った。気づかせてもらったことに感謝。

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