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広報活動が企業にもたらす価値とは?

先日、ありがたくも、対外的に広報についてお話しする機会をいただきました。きっかけは、日頃からお世話になっている友人に広報について教えてほしいと頼まれたときのこと。普段、クライアント企業などにお話しする内容をお伝えしたら喜んでもらい、その内容を仲間にも共有したいと言っていただいたのでした。今日はその一部をご紹介します。

noteを書こうと思ったきっかけ

理由は大きく二つあります。一つは、この手のアウトプットはいろいろな人の目からフィードバックをいただき、ブラッシュアップしていくのがいいのではないか?と思ったこと。事実、このレクの資料についても、何人かの知人友人にレビューをしてもらい、貴重なフィードバックをいただきました。

もう一つは、少しでも仲間の力になりたいと思ったこと。

そもそも、私は自分の考えを伝えるのが苦手です。唯一絶対の正解などない広報について、私なんかが語っていいものか?というためらいが常にあります。そんななか届いた、広報仲間からの悲痛なメッセージ。「この仕事の価値がわからず、やる気が湧いてこない。周りの期待に応えるよう頑張ってはいるものの、この仕事の価値って何なのか・・?」

痛いほどわかる、この気持ち。特にひとり広報だったり、フリーランスでクライアントワークだったりをしていると、広報ってどういう意味があるの?何の役に立つの?というニュアンスが伝わってくることがあります。これは、大企業にいたときにはほとんど感じなかった不協和。当たり前のように広報機能が備わっている大手企業と違って、ベンチャー企業に転職して以降、この悩みは私自身のものでもありました。

つらくて泣きたくなるようなとき、いつも支えてくれた広報の仲間たち。これからは、私が誰かの支えになりたい。広報に携わる人や広報の力を信じてくれている人たちに、noteが届けば嬉しいです。

自己紹介

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現在、フリーランスとして企業の広報支援をしつつ、コーチング業もしています。日本PR協会が認定するPRプランナーの資格を取得しており、コーチングはCTIというところでプロ資格取得に向けて学んでいるところです。プライベートでは、猫2匹とともに、東京と岐阜の二拠点生活をしています。

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キャリアとしてはいくつかの組織を経験しました。転職するたびに組織が若返り、最後は独立。広報やIRを中心に、CSRやクライシス関連の広報など、幅広く従事しました。

広報とは?

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広報(=Publc Relations)は、コミュニケーションを通じて、ファンをつくり企業の価値を高めていくこと。個人的にはこんなふうに捉えています。自社のことを知ってもらい、願わくばファンになってもらえるように活動すること。結果として、企業の価値が高まっていくことを目指します。

よりアカデミックな表現を探してみると、米国の教科書的な書籍『体系パブリック・リレーションズ』では、以下のように定義されています。

「パブリックリレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能である。」

 INTERNATIONAL PUBLIC RELATIONS ASSOCIATION(国際PR協会)の定義は、こちら。

パブリックリレーションズは、信頼のおける、倫理的なコミュニケーション手法を通し、 組織と組織をとりまくパブリックとの間に、関係と利益を築くため、意思決定の管理を実践することである。

私の表現はだいぶ意訳ですが、ステークホルダーとの関係づくり、といったところでしょうか。

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広報を行うことの狙いとして、ファンづくりとおきました。自社にとってファンとなってもらうためには、いいなと思ってもらうこと(=認知の転換)が必要です。それを促すため、広報活動が土台にあります。

この辺りのことは、「戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則」に詳しく書かれています。広報に関する書籍の中でも学びの多いです。

なお、広報活動をもっと広くとらえてみると、商品のパッケージや営業担当者から受け取る印象など、人々の接点となる人物や物も、認知転換につながる情報と言えます。

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では、ファンになってもらいたい人たちって、どういった属性をもっているでしょうか?それがわかりやすくまとまっているのがこちら。「パブリック・リレーションズ」という書籍にある図ですが(少し手を加えています)、ここでは、対象となるステークホルダーを特定して、関係性をマネジメントすることと表現されています。

IR(= Investor Relations)が別部門になっている組織もあると思いますが、これはまさに、株主や投資家を対象とした関係構築を行う人たちという意味ですよね。最近では、スタートアップを中心に、コミュニティづくりやカスタマーリレーションといった文脈の大切さも発見されている印象です。個人的には組織が大きくなればこそ、大事なのはエンプロイー=従業員(その家族を含む)との関係づくりだと考えています。いつの時代にあっても、会社を支えてくれる人たちとの信頼関係は、なくてはならないものだからです。もちろん、大事ではないステークホルダーなどないのですが、ここは経営者の考え方によって変わります。

大切なポイント

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そんなわけで、広報ってどんなものかをすごく抽象的に捉えてきましたが、しみじみ大事だなと思うポイントをまとめたのがこちら。

①全ステークホルダーが対象となりうる
対象となるステークホルダーとの対話は、社会から広く見られているもの。誰かに向けて発したことが、他の誰かにとっては気持ちよく受け取れない情報だったりすると、いわゆる炎上などが起きてしまいます。なかなか、全員が納得するような情報発信というのは難しいのが現実ではありますが、少なくともその情報発信をすることで、どんな受け取られ方をするだろうか?という想像力を持ちたいところです。

②やり方に唯一絶対の正解はない
おかれている時代や社会環境、企業、商材などよっても立ち位置が異なるなか、今あるリソースでどういったことに取り組んでいくべきなのか、いけるのか。これは、正解を探すというよりは、つくっていくほかありません。ついつい、私たちは正解を探したくなる生き物ですが、だからこそ、考える力が問われています。

③経営課題の解決を目指すが、直接的に解決できるわけではない
広報のKPI問題は長らく議論されてきていますが、広報単独の活動で数字にコミットすることは非現実的という意見を持っています。経営陣の思いや戦略を受け、各部門と連携し、その先にあるお客さまにも協力をあおぎながら取り組むのが広報活動。だからこそ、直接的に売上貢献するとか、採用候補者の獲得を実現するというよりは、営業活動や採用活動と連携することで、効果を生み出すものではないでしょうか。

④営業活動が地上戦なら、広報活動は空中戦
広報が得意な領域といえば、空気感を醸成したり、社会の温度感を高めるといった、世論喚起のきっかけづくりをすること。社会との対話を通じて、そうしたムードをつくっていくことで、各部門の人たちが動きやすくなる素地をつくれる可能性を秘めています。ベンチャー企業で広報の立ち上げをしたとき、はじめは非協力的だった営業部門の人たちが、「クライアントから○○新聞の記事見たが、うちでも導入できるか?」と言われたと、私のところに駆け込んでくれたことがありました。以来、何か動きがあると、これはプレスリリースできるか?クライアント企業も協力してくれると言っている、というように広報活動に協力的になりました。地上で頑張る営業部門の人たちを後方から支援できるのが広報の強みでないでしょうか。

⑤忘れられがちな広聴機能
自社が今、世の中からどう捉えられているかを敏感に察知し、自社にフィードバックしていく。センサーのような機能が広報にはあります。それが機能するためには、世の中の潮目や価値観の変化などもキャッチしていく必要があります(なかなか、私もできていません…)。

⑥真価が問われるのは有事の時
実は忘れられがちなのが、有事のときの対応力。大企業でクライシス広報を経験した身としては、これなしには語れません。企業が存続する限りにおいて、インシデントというものは待ったなしでやってきます。そんなとき、日頃から信頼関係を築いておき、真摯に誠実に対話をする。詫びるべきは詫び、理解を得るところは努力をする。そんな姿勢が企業には求められています。大企業はもちろんのこと、ベンチャー企業も他人事ではありません。

広報活動が企業に与える影響(イメージ)

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では、広報活動が企業に与える影響ってどんなものだろう。図解してみたのがこちらです。事業を継続する中にあっては、いい時も悪い時もある。ポジティブなときにはよりポジティブに、ネガティブなときにはそれを下支えする。それが広報活動の効果と言えるのではないでしょうか。

蛇足ですが、クライシス発生時には、電話越しに自社に対する誹謗中傷や脅迫まがいの言葉をいただくことがあります。我々広報には立ち向かえる武器などありません。ただ、ひらすらにお詫びし、答えられない質問には答えられないと答え、話を聞くだけ。ただ、人間というのは不思議なもので、ひたすら話を聞いていくと、心の内側にあるたまった感情がすべて吐き出されるせいか、それまでの怒りがおさまり、なんだか相手に悪いなという感情が芽生えるよう。最後には、「お前らも大変だったよな、でも頑張れよ。応援しているから」と言ってもらえることによく出会します。これが、私の思う、下支えです(本来はより戦略的な対応があるべきなのですが、最後は広報が現場で体を張っているのです)。

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他方、IRはというと(大企業の経験だけですが)、下支えするイメージは同じものの、上振れの幅が広報ほど大きくないイメージです。過剰ななまでに値上がりした株価については警戒しつつ、適正な株価を維持するよう促すのが役割のような印象を持っています。ベンチャー企業の場合は、少しニュアンスが異なるかもしれません。

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なお、スタートアップにおける広報活動として、業界で語り継がれているのがこちらの図。スタートアップ・ベンチャー企業を成功に導く広報戦略という論文の中で、広報仲間の真鍋順子さんが作成されたものです。組織のステージに応じて、経営戦略と一体化してコミュニケーションをしていくことが不可欠だと説いています。

失敗からの学び

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お話の中では、複数のメディアに好意的に記事にしていただいたり、報道いただいたクライアントの事例をお示ししました。報道が報道を呼び、連鎖していく経験をしました。

私自身、そのことがとても嬉しかったのですが、ご支援から一年ほどたち、代表にこう言われました。「広報のすごさはよくわかったけれど、僕たちのビジネスはメディアに出て終わりではない。今後はコンテンツづくりを手伝ってもらえないか?」

ちょうど、独立したばかりの初めてのクライアントで、なんとしても結果で貢献したいと頑張っていたので、メディアプロモートをもう少し続けたいと考えました。仕事の幅を広げると自分の強みがつくりづらいこともあり、サービスはこよなく愛していたものの、いただいたご提案は辞退。約一年で契約は終了となりました。広報というのは、あくまでも手段(メディアリレーションというのもそのうちの一つ)。私自身、それが自己目的化してしまい、その企業における大切な目的(=企業の価値をあげること)を見失っていたことに、気づかせてもらった貴重な経験でした。

広報担当者のあり方

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経験から感じることとして、広報に携わる人間の立ち位置の難しさがあります。社内目線になりすぎても社外の人(例えばメディアの方)とうまくコミュニケーションができないし、経営者に寄りすぎると社員から白けられ、社員の側につきすぎるとその役割を果たせない。それぞれの視点を常に意識しながら、統合していく。ある方の言葉を借りれば、「合意形成のプロ」といったところでしょうか。絶妙なバランス感覚が求められています。

私自身もついつい、支援先企業に肩入れしてしまうことが多く、提案が独りよがりになることも…試行錯誤の日々です。

広報活動を成功に導く必須要素

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広報活動が成功する(=前に進む感覚がある)必要条件をあげてみるとすると、こちらの3つです。なお、メディアリレーションを行っていくと、露出至上主義に陥りがちなのですが(他社の露出が気になったり、露出できないことで落ち込むことが頻発)、これは一つの結果であると捉えられるようになると、広報担当者としても少し気持ちが楽になるかもしれません。どうしても露出しやすいサービスや事業というのはあるものですが、そうではないからといって、社会にとって価値がないというわけではないことは、覚えておきたいことです。

広報の価値とは?

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最後に、広報関係者ではない第三者の人に、私自身が思う広報の役割について、対話を通じて引き出してもらい、マインドマップにまとめてもらったことがあります(上図)。曰く、「広報はWHYを問い続ける」ところに大きな価値があると。これは、常々、メディアの方々との対話の中でそれは何?それはなぜ?と問われているので、自社やクライアントに対しても、なぜなのかを問い続けているからでしょうか。この思考回路について、自覚的になったことがなかったので、私なりに驚きを持って受け止めたのでした。

そして、WHYを問い続けることで、自社の立ち位置を知り(センサー機能)、価値を世の中にも発信し続けられるのが広報の提供価値であり、つかみどころのない空気のような価値を社会的価値と言い換えることができる気がします。もちろん、売上アップや採用人数の確保など、数字的に見えるものへの間接的な貢献価値もあるとは思いますが(多くの経営者はここを期待されていることも十分理解できます)、守りの側面も含めた社会的価値にこそ、広報の本質があるような気がしてなりません。

なお、「提供価値」=「経済的価値」+「社会的価値」と教えてくれたのは、ある経営者でした。企業の取り組みについてお話を伺って以来、素晴らしい企業だなあとファンになり、ついには同社をご支援させていただく機会に恵まれました。経営者自身が体現されていることは、広報的なコミュニケーションの一側面と言えそうです。

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以上、広報のイメージを言語化してみました。もちろん、これが唯一絶対の正解だとは思っておらず、ここから少しずつブラッシュアップしきたいと思っています。お気づきの点がありましたら、こっそりメッセージをいただけると嬉しいです!

最後になりますが、私はこの仕事が好きだし、誇りを持っているし、その価値を心から信じています。悩めるときには、ぜひ、声をかけてくださいね。長文にお付き合いくださり、ありがとうございます!


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