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ジャマイカ アンド 村

タピオカミルクティー職人の朝は早い。

ジャマイカ州力「てめぇコラ。タコ、コラ」
ジャマイカ州力さんがタコを捕まえる横で、タピオカを一粒一粒海水で洗う。こうすることで噛み応えが段違いになるのだという。少しだけ染み込む塩味もいいアクセントになる。時刻は午前3時半。この時間が、海水の状態が一番良い。

タピオカの仕込みが終わったら、休む暇もなくミルクティー作りに移る。使うのは、自ら畑まで行って品質を厳選した茶葉と、近くの牧場でその朝絞られた生乳のふたつだけ。「混じり物は少なければ少ないほどおいしいよ」と、彼は事もなげに語る。

店内でかけるBGMの制作も、彼の大事な仕事だ。毎朝、その日に最も相応しい音楽を自ら演奏し、録音して流す。同じ曲をかけたことは、創業から30年間一度もないという。
今日のBGMは、ビリー・ジョエル「素顔のままで」のオカリナ独奏バージョン。8時半の開店に向け、急ピッチで楽譜を覚え録音まで済ませる。

いよいよ開店の時間がやってきた。オカリナの音色が晴れた日の空気を柔らかく包む。のぼりが上がればそれが開店の合図だ。
開店直後から客足は絶えない。
「唐揚げ! すみません、唐揚げは売り切れてまして…」
「ご注文確認いたします、天津飯とチャーシュー麺、餃子二人前でお間違いなかったでしょうか?」
「3名様でお待ちの、トーマス様~。あちらのテーブル席へどうぞ」
毎朝大忙しだが、これこそが繁盛の証であり、地域とのつながりも感じられる、最も幸せな時間だという。
「やっぱり、みんなに喜んでもらえることが一番だよね」

そんな彼は来週、店を畳んでタモリの影武者として新たな人生を歩みだすという。しかも株ですでにGAFAを超える資産を持っているらしい。あと羽生結弦さんの血液は純金。