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『図書室の海』(恩田陸)に沈む。

HAKOMACHI 一日一冊 9/31冊目

あなたはどんな時に本を読んでいますか?

小説は中学受験のお供でした。

僕が一番本を読んでいた時期の一つに中学受験の時があります。
特に本番直前期、仙台に住んでいて、東京の私立中学校まで受験に来ていた僕にとって、待ち時間と移動時間はいくらでも本が読める幸せな時間でした。
新幹線に乗っている間も読書、東京に来てからの電車も読書、時間潰しに入るカフェでも読書。
今でも覚えています。
第一志望の中学校の受験日、参考書も読まずに、普通に小説を読んでいました。
最後の最後に入る知識よりも、読書をすることによって得られる平常心の方が欲しかったのでしょう。
面接でも、好きなものはなんですか?と聞かれて、「本です。移動時間に持ち歩いている文庫本です。」と答えました。

『図書室の海』 恩田陸

ゾッとする世界観と小さなワクワクと

恩田陸さんを知ったのは、『夜のピクニック』でした。
映画にもなった有名なその作品を書店で見たときに、思ったのは、
「あ、恩田さんだ」
僕は、その苗字に興味を奪われたのでした。
どういうことかというと、8冊目に紹介した本の作者・三谷幸喜さんが脚本を務めていたテレビドラマ「やっぱり猫が好き」、この主人公の姉妹たちの苗字が「恩田」というのでした。
後で調べると、まさにその恩田三姉妹がルーツだったことが分かり、僕は感動します。やっぱりその恩田なんだ。じゃあ読んでみよう、と。

そして、僕が真っ先に手に取ったのはこの短編集でした。
確か、例に漏れずジャケ買いだったのを覚えています。
ざわめく音が聞こえるような森の大樹が表紙で、名前もどこか不思議そうな雰囲気が漂っています。
ページをめくると、独特な世界観に圧倒されていきます。
後で調べたのですが、各短編が
『六番目の小夜子』
『夜のピクニック』
『麦の海に沈む果実』
に関連する作品らしく、恩田陸さんファンにとってはファンサービス的な作品になっているようでした。

この『恩田陸短編シリーズ』にハマっていく。

お気づきの方も多いと思いますが、僕はほとんど恩田さんの長編を読んでいません。
読んではいますが
『ドミノ』
『ユージニア』
『常野物語シリーズ』
の比較的マイナーな作品を読んでいました。

恩田陸さんの短編シリーズにハマってしまったからです。
短編シリーズというのは、私が勝手に呼んでいるのですが、『図書室の海』のような形式で書かれた、恩田陸さんの短編集のことです。
・『図書室の海』
・『朝日のようにさわやかに』
・『歩道橋シネマ』
絵本の世界のような、情景の浮かぶ景色と、その中で起こる、小さな事件。
少し変わった、世界の見方をする人たちの、エッセイ集みたいにも思えて、不思議です。フィクションでSFっぽさすらあるのに、やけにリアルなのです。

日常に少しの刺激が欲しい、けど、ホラー小説は少し怖いな、という人には、ちょうどいい作品かもしれません。
みなさんは、ちょっとゾッとするお話、好きですか?



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