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『園芸家12ヶ月』(カレル・チャペック)、書評家は半月。

HAKOMACHI 一日一冊 15/31冊目


HAKOMACHIも折り返し地点に

一気に前に進んだ一冊

丘の上にある病院で、少年は文字通り読書灯の明かりのみを頼りに、文庫本のページをめくる。
ガラガラと引き戸が空き、1人の看護婦が、少年に向かって声をかける。
「ぼく、大丈夫?眠れないの?」
「ううん、本を読んでいるんです。」
「そうなんだ、なんの本」
「『園芸家12か月』という、園芸家が草花を育てる生活について書いた本です。」
「へえ、なんだか難しそうなの読んでいるね」
「お母さんがたまたま持っていて置いて行ってくれたのです。」

これは、僕が小学校の時の、ほぼ実際の看護師さんとの会話です。
この時にこの本を読んでいたことが、
小学校5年生でも文庫本の小説や新書を読むことにつながっていたように思います。

ここで、先生や友人からヤングアダルト向けの青春小説などを進められて読んでいたら、またその後に出会う本も違ってきたのだろうなと、思うのです。

『園芸家12か月』 カレル・チャペック

どんな時も自己紹介する、斎藤工さんに学んだことです。

改めて、初めまして。
せいたといいます。神保町で1か月限定の本棚の主・棚主を初めて早くも半月が経ちました。

最近の記事では、自己紹介を省きがちで失礼しました。
記事を初めて見る方にとっては、僕は初めまして。
どんな記事を書く時も、自分は誰なのか、何をしているのか、名乗りたいと思うのです。

これは、俳優の斎藤工さんが舞台挨拶でいつも心がけられていること、として心に残ったことです。
斎藤工さんは、どれだけ自分が主演でも、求められているキャスティングのバラエティでも、自分の名前を名乗って自己紹介をするのだと言います。
確かに当たり前のようですが、場面によっては省いたり、することも時にはあるのでしょう。
その一貫性が面白いのか、インタビュアーの方が、「なぜそんなにいつも改まった自己紹介をするのですか?私たちはあなたほどの有名人はみんな知っているのに。」と聞いたのを見たことがあります。
すると彼は「まだまだ私は無名なので改めて自己紹介させてください」そんなニュアンスではなされていたのを覚えています。

さて、店主としての生活ですが
初めはどうしたらいいのやら、と思いながら手探りの活動でしたが、
大好きな本に触れる時間が増え、それだけで満足の日々です。

そして、ありがたいことに、僕の棚から本を購入してくださっている方もいらっしゃいます。本日時点でなんと6冊!

・『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス
・『海の底』有川ひろ
・『終末のフール』伊坂幸太郎
・『それからはスープのことばかり考えて暮らした』吉田篤弘
・『パン屋再襲撃』村上春樹
そして
・『園芸家12か月』カレル・チャペック

1冊も売れないのではないか、という当初の不安からするととてもありがたいことになっています。

お友達からの購入も

また、嬉しいことに以前読書会でご一緒した人から
「お店に行きましたよ!」と購入した写真とともに、報告が来ました。
これは本当に嬉しい。
本好きの皆さんにこそ、社会人になったら思い切り本を読むぞと思っていたみなさんにこそ、楽しんでほしい本との遊び方です。

いつか読める、いつか時間ができたら、読破するんだ。そう言って読まなかった本がいくつあるでしょうか。
そう言ってスマホを見て過ごした夜がどれだけあったでしょうか。
本が好き。という思いも、実際に読む、手に取る、購入する、感想を話す、おすすめする、という行為に落として初めて、この世界で形となり、残ります。

みなさんにも、もちろん思い思いの方法で構わないのですが、本への正直な思いや向き合い方を勇気を持ってしてみてほしいのです。
1時間早く起きて、本を読む。
1時間スマホをしまって、本を読む。
1時間会社から早く帰って、本を読む。
それだけで、世界は一気に広がります。
そうすることで、早く起きられるし、スマホに余計な時間を使わなくなるし、仕事も早く終えられるようになります。

土を育てるということ

WE ARE WHAT WE EAT

『園芸家12か月』は文字通り園芸家についての本ですが、季節を愛し、土を大事にすること。その原点はこの本にあります。

先日、アメリカでオーガニックフードを扱うことで有名なレストラン「シェ・パニーズ」の経営者であるアリス・ウォータースさんの映画を拝見しました。
ファーマーズ・ファースト。農家から直接野菜を買い、農家に直接お金を払う。
その姿勢が一貫されていて、アリスと話す農家さん一人一人が感動をしていて。
ああ、思いを持った人はここまで人に力と勇気を与えるのだな、と思いました。

好き、という単純な思いでいいのだと、僕は思います。
好き、というだけで続けられるほど、世のものの事はそう単純ではないからです。
その、好きを上回るほどのたくさんの困難を乗り越えて、それでもなお好きを追いかけられるからこそ、感動を呼ぶのだと。

映画の中で、草喰なかひがしの料理人である中東さんは言います。
「私が野菜を買いに農家へ行くと
『私たち農家は、野菜ではなくて土を育てている。
 雨の日も風の日も畑仕事をして、それでも雨風や獣に奪われて、残ったものをそしてその中の傷のない綺麗なものをあなたたちはとっていくが、残されて傷がついた、選ばれない食材たちをどう料理するか、それがあなたたち料理人の仕事ではないのか』それを聞いて私は直接畑に行って、農家さんに会って、そしてその畑から直接野菜を取ってくるようにしたのです」

このお話を聞いて感じたことは
まず、僕たちも自分の土を育てることが大事だということです。
僕は普段、オフィスビルの営業・管理をしていますが、その価値を上げるにはプレゼンのスキルや目先のサービス提案ではなく、その土地、エリア全体の価値の底上げが一番大きく効いてきます。これは1日、1か月、1年で成果は見えにくいです。
日々の業務の中で、結果につながっているのかさえ、不透明です。でもそれは、敵をつくらず、そこにいる皆を笑顔にする、嘘みたいな力であることは確かです。
作物も大事ですが、それ以上に土を育てる意識、あらゆることに通用するのではないか、そう思うのです。

そして、僕らの理想的な働き方は
傷のない綺麗なものを選りすぐる力では無くて、
人の目から見れば傷のように見えるようなものも、個性として生かすような場を作っていく、そんな働き方だろ。そう言われている気がして、すごくハッとしました。

『園芸家12ヵ月』、書評家は半月、まだ先は長いです。

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