寝る前に考えた話


森に入る 背高で年長の人が付き添ってくれている


熊に出会う

「ああ人間だね、人間だ、殺そうか」

「これから街に行くのです、お前の内臓はそこで売られてしまうよ」

「人間の内臓は食えたものではないね」


熊は年長に殺されてしまいました、子熊が出てきて言いました

「私が大きくなったら、君をいの一番に殺しにいくよ」

「そうだろうとも」

(私に言っているんだろうか、年長へだろうか)


森は道がどんどん細くなり、真昼だというのにあたりは薄暗く、自分がどこからきたのかすぐにわからなくなりそうでした


うさぎです

「やあ、ずいぶん大荷物だね」

「だから、出てきたのだろう、君たちは数が多いからね」

「そいつにはたしか子どもがいただろう? ひどいことをするよ」

「私にも子どもがいたよ」


森はずっと深く、暗くなっていきます。

「街へ向かっているのではないの?」

「まだまだ半ばといったところだよ」

私はもうじき着くと思っていたから、嫌になった


蛇です

「あっははは、おい、そりゃ熊だね」

「なあ、毛皮か肉を分けちゃくれないか、なに、ちょっとでもいいんだ」

「向こうにうさぎがいたよ」

「うさぎじゃあ魔除けにならないよ」

「おまえも何かから逃げることがあるのだね」


まるで空気に色がついてしまったかのようで、年長の服を握っていなければきっと森に攫われてしまうだろうと思いました


「ここらには魔女の家がある」

「魔女」

「あれは世界のなによりもずっと気まぐれだ、いまは熊を持っているから、行き道は大丈夫だろうと思うけれど」

そうなのだろうか? 熊がどう役に立つのだろうか、私はしばらく考え込みました


もう森のほとんどを過ぎたようで、動物も、その気配を感じるだけでほとんど会いません

「魔女がよく通る道だからね」


魔女です

「こどもを連れているね 子どもを連れている」

「街へ行くのです」

「借りてもいいかな?」

「かまいませんよ」

私は魔女に攫われた


役に立ったのは熊ではなく私の方であった

「街で調味料を買ってきたんだよ」

魔女は料理をしています 瓦礫を片付けているような粗野な手つきなのに、料理は問題なく進んでいるようです

私はじきにキッチンの一部となってしまって、生っていた香草をむしるように軽やかに指を二、三本持っていかれそうな、そんな気がしました

「お食べな」

指はまだあります

「おいしいです」

「熊を殺したのは君かな?」

「違います」

「おいしいのかい?」

「おいしいです」

まるで家族と話しているようでした。もしかしてほんとうの家族にされてしまったんじゃないだろうか。


年長さんです

「熊を殺したのは君だね」

「まだ子熊がいますよ」

「殺さなかったのか、えらいもんだよ」

「こいつはお前の子どもだね?」

『違います』


私には兄か姉がいたのだろうと思う

色々そのままにしちゃっています