作家の肺活量。
私は朗読を聞くのが苦手だ。
文字で見てる時の自由度が損なわれるので「自分のテンポで読ませてくれー!」という気分になってしまう。登場人物の口調も「本当にそういうテンションで言ってるか?」と疑わしく思ってしまうのだ。たまにセリフ自体がダブルミーニングになっていることもあるし、黙読なら文字列でわかることも興ざめになってしまう。どんなに声も活舌も良くたって、入ってこないのだ。
あと、どんなに人気がある作品でも読み続けられない作家の方もいる。
文体とか作風なのかな?と思った時期もあった。
しかし、ある程度の年齢になって、自分の周りに文章を書くことを生業としている人がいるようになってわかった。
「その人の肺活量」なのである。
文章の特に地の部分は、筆者が頭の中で読んでいるスピードだと思っている。それが合う人がいわゆる「読みやすい作家さん」になるのだと思っているのだ。中には文章力が凄すぎて、引き込まれるように読んだものの、最後に「ぷはー!」と自分の呼吸を取り戻す感じになる人もいる。
それも醍醐味といえば醍醐味なのだけれども。
そしてこの肺活量理論にはいろいろ応用が利いて、日本語に疎い諸外国のスパムや、自動生成の文章も「どこで息継ぎをしているか?」という点で見ると見破りやすい。母国語ではない文章の息遣いというか、文章のルールだけで書いたな?という絶妙なニュアンスが、呼吸に現れてくるのだ。
もうひとつは、特定の性質(疾病)を持つ人に共通する点で
「最後まで句読点と改行がほぼない」
というものもある。自分の世界だけで生きていると、他人はどういうリズムで読むと理解しやすいか?という視点が抜け落ちてしまう。文体も丁寧だし、論調も考えられている風なのに、ただひとつ”読む側の立場に立つ余裕”がないのだ。
あとは「誤字脱字を見つけやすい」というところ。同じリズムで呼吸をしている状態で文章を読んでいると、うぐっ!と詰まることがあり、それは文章内の違和感に他ならない。日本語には文字列が多少入れ替わっても読めてしまうという特徴もあるのだが、特に脱字はこの方法でみつかることが多い。
こうした肺活量理論は自分の鑑定にも言えることで、基本対面鑑定としている理由もそこにある。
自分はスピ系の能力的なものを一切使わない占いなので、カードリーディングと言えども「出た結果をありのまま伝える」ってもんでもなく、「その人が心の中で持っている落としどころ」と「カードが出した結果」の間を「その人がわかるように埋める」必要があるのだ。
それもほとんどの場合「初対面の相手」に対してである。
こうなると、相手も自分への信頼と期待はほぼ無い状態からだし、自分も相手がどのように聞くタイプなのかというのがわからないところから始めなければならない。
ならば、まずは呼吸のテンポを把握するのが大事になる。
相手はどういうリズムで話し、何を言い、何を言わないのか。
その上で、占う方法を決め、結果を出す。
そう考えると、占いの研究もだけど、呼吸と対話のスキルっていうのも大事なんだなぁと思う。その時その時に、占い師は相手に響く結果が伝えられる文章書きにならなければならないのである。
朗読ではだめなのだ。
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