【掌編】同窓会で
『私がふざけて「ユウ君」と呼んでいた友達がいたんだよね。
「悠」と書いて、「はるか」と読むその子は、当時中学校で国語の成績が5段階評価で「2」だった私にとって、正直読めない名前だった。
私の中では難読だった。
同時にキラキラして見えた。
だって、そういうムズカシイ読み方する名前って、かっこいいじゃない?
私なんて「怜子」だから。嫌いな名前じゃないけど、そのまま普通に「レイコ」と読めるのが、当時はなんか嫌だったんだよ。
ああ、そうそう、「ユウ君」の話ね。
ユウ君は私と特別仲が良い訳じゃなかったけど、私と仲の良かった……そうそう、あの子。あの子と仲が良かった。友達の友達みたいな。
名前忘れちゃったけど。とにかく、当時は私とユウ君とあの子と三人で、よく遊びに行ってたのよ。楽しかったなあ。
自転車で通学路を三人で駆け抜けるのが無駄に流行ってね、よく近所のおじいさんから怒られてた。
ほんとはさ、私ユウ君のこと好きだったのよ。
名前も、顔も、性格もかっこよくてさ、まさに理想のタイプ! って、あの時は思ってたなあ。うん、ほんとにいい人だったんだから。だからあの子が羨ましかった。
ところでさ、あなた誰だったっけ。ごめん、思い出せないの』
十年ぶりに集まった同窓会。
僕は怜子の話を聞いていた。
五年前、怜子は事故に遭って……という噂は、自然と耳に入ってはいたけど。
ショックだな。
多分、君の言う「あの子」は僕のことだよ。
そして、「悠」と書いて「はるか」と読む同級生も、僕のことだ。
空白のもう一人は、誰?
(こんな話にするつもりはなかった。
本当は怜子さんと悠君のほのぼの恋愛を書こうとしたんです。
本当ですよ!)
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