酷く怖い目に遭った

すこし脚色します、怖かったのは本当に事実です。
怖い話苦手な人は読まないで。

夕方、真っ暗な部屋、扇風機の音だけがする、眠っていた僕、サイレンと聴き取れない拡声器越しのような声。

心を病んだ僕は虫に怯え、この夏アパートの狭い部屋で腕の上を歩く害虫に怯え、蚊帳を買った。

蚊帳の中から天井を取った写真

知らない天井だ。
部屋の中にもう一つ部屋が出来たみたい、しかしこれは冷静になってみると僕がこの狭い部屋に押し込められ、むしろのこの外の空間こそ害虫の部屋になってしまったのではないかと現実を突きつけられる。
僕は虫を怖れた、でもこれは閑話休題。

アパートの階段を人が、駆け上がってくる音がする。
時間の流れが遅くなる、扇風機の風が肝をも冷やす。
階段を駆け上がる足取りは覚束無い、同時に若い男性のたどたどしい会話も聞こえる気がする。
外からまた拡声器の声が聞こえる、相変わらず聴き取れない、きっと僕たちのためのメッセージではないのだろう、先程の蚊帳はチャック式の入り口が複数あるのだが、ベランダのカーテンを開けるのに適していない。
暗い部屋、蒸し暑い部屋、でも扇風機だけは緊張感と心臓の鼓動にお構いなく僕を同じリズムでどんどんと冷たくする、ついに拡声器からベランダという言葉だけが聴き取れた。

僕は半分パニックだった、真っ暗な部屋、小さなアパート、階段を駆け上がる人の音、サイレンは3、4回分あったか?わけのわからぬ状況、外は確かめられないそもそも、僕は音すら立てて良いのかわからないの、だってもう

立て籠もりかなんかに巻き込まれた

としか考えらなくなったのだから。
自分が住んでいる空間がでそれが起きるか、現実でそれを実感したとき、それはもう本当に気分が悪い、薄ら寒くて、安全の反対を意識して、救われたい一心になる。
そのために僕はなにができる、こんな空間にもし監禁されたら、その事実だけで僕はもう心がどうにかなってしまうだろう、相手は危険物や武器を持っているかもしれない、僕は逃げることを考えた、可能な限り皆の状況をわるくせずに、逃げたい。

蚊帳のチャックの音すら怖い、今このアパートの一部屋一部屋に何人の人がいるのかもわからない、僕の部屋は真っ暗だ、音は扇風機の音だけ、エアコンの音はもう僕の耳には入ってこない、もし僕が居ることが一番にバレて人質にでもされたらどうしよう?
人質になることを現実に考えると本当に気分が悪い、この暑く劣悪な環境でいつ命の危機に瀕するかもわからず延々と時間を過ごすハメになるなんで嫌だ、嫌だ嫌だ。
動画を回したスマホをカバンに入れ、屈んだ体制で蚊帳から出る、精神的に参っている僕の部屋の足元には空のペットボトルがたくさん落ちている、早く片付けないとな、それに触れて鳴る音すらも今は惜しい。

僕は音を潜めて玄関まで行く、先程階段を駆け上った人の音は幸いにも僕のいる部屋よりも上階にいったような
気がする。
だったら今逃げるしかない、仮に悪い人ならばそのうような人に僕の部屋を明け渡したくはないので、外に出たら自室の部屋に鍵をかける準備もする。
すると上から人が降りてくる気配がする、嘘だろ、最悪だよ、なんでこのタイミングで来るんだよ、僕はもう何十秒もせずにこの建物から脱出したかったのに、もう遅いの?
このあと起きたことはもっと酷かった。
この小さな建物は他所の部屋のチャイムの音すら聞こえる、近くの部屋チャイムが鳴らされる音がした。
マジか、緊張が走った。
普通こんな時に、チャイム鳴らす?混乱する、一部屋目は誰も出なかったみたいだ、二部屋のチャイムの音、また誰も出ない、三つ目、僕は自分の部屋のチャイムが鳴るのを怖れていると、その三つ目の部屋の主はチャイムに応じたらしい、マジか、すげーな、勇気あるな、大丈夫?僕は聞き耳を立てた、
……管理会社がどうこう言っている、僕は部屋を出ることを決めた、これ以上ここには残りたくない。

急いで自分の部屋から出て鍵をしめる、廊下に人は居ない、近いようで別の階だったのか三つ目の部屋のチャイムに応じた玄関先での会話の主たちの姿はみえない、僕は階段を降りようとすると、下から来た人間とはち合わせた、びっくりする、僕は声をかけた。

「なにがあったんですか?」
相手はおそらく作業用の動きやすい格好をしていた、そんなのもう見て覚えてる余裕もない。
「外に出たらわかります」
は?なにそれ?
外に出てくださいとも言われなかったと思う、僕は外に出た、怖いからね。
外の光景は想像より怖かった。

消防車が4台は居たと思う、多すぎない?今思うと救急車いなかったな、パトカーも、たくさん人がいる、近所に住んでいそうな人や、消防隊の人がたくさん、一台に何人かずつの団体、みんな指揮をとっているのかな?外に出ても、全然状況わかんないよ、怖い。

僕はなるべく迷惑をかけずに声をかけて良さそうな人を探す、一人の隊員に声をかける、
「すみません、ここに住んでいるのですがなにが起きたのですか?」
結論から言うと僕は最後までなにが起きたのかわからなかった、本当に苦しくなったら僕は陰謀論にでも囚われてしまいそうなくらい、怖かった、今も怖い。
僕のたずねた相手はたいした答えをくださらなかった、救助と言っていたとは思う、梯子を伸ばして僕の階の部屋小さなベランダにかけていた、もうすこし詳しく教えてほしい、危険性はないとは言うが同じ階に梯子をかけて、消防車4台も来てる部屋に戻りたくない、僕は不安そうにアパートの近くを歩く、誰も僕には興味を示さない、緊急時には人ってこんな感じか、嫌だなあ。
僕は一人の人の良さそうなおばさんに声をかけてしまう、
「僕ここに住んでいるのですけど、なにがあったか知りませんか?」
おばさんは優しくて応対してくれた、なにが起きたかはおばさんもわからず、僕になにが起きたか知らないかと聞き返された、僕はわからないんですと世間話をするようにやわらかに応対した。
「急に声をかけてしまってすみません、怖くて」
怖いよね、そうだよね、とおばさんは話をしてくれる、今日一番優しかったかもしれない、あまり関わるのも申し訳なかったので、すこし話をして僕はその場を離れた。
すこしでも落ち着きたくて、僕は近くのドラッグストアに行ってヨーグルト味のプロテインを買った、蓋のできるやつ、いつ自分の部屋に戻れるかもわからないもの。
突然夏の暑い夕方の外に出ることになってしまった僕に行き場はない、しょうがなくアパートの近くに戻る、アパートの近くにはここでは書けないけれど、消防車が居るのは怖い立地なんだ。

警察官の人を一人みかけた、女の人二人からなにかを聞いて記録をとっているようにみえる。

ベランダから梯子を降りてくる隊員さん?僕の戻ったタイミングでは、誰かを救助した様子はみられなかった、また迷惑をかけないように少しずつ撤収していく消防車とそれに乗っていく人に質問する。
「もう大丈夫なんですか?なにがあったのでしょう?」
「救助はできたのですか?」
二人ぐらいに聞いたかな、なにが起きたのかは誰も教えてくれなかった、救助は問題ないみたいな感じ、
なんで誰も合理的なにが起きて、どう解決したのか教えてはくれない。
消防車は4台もともその場を去り、女の人二人と警察官の人一人だけがそこには居る。
僕は警察官の人に最初に聞いた。
「ここに住んでいるのですがなにがあったのですか?部屋に居て大丈夫ですか?」
安全なので、部屋に戻ってもいいと言われた。
あと何処の部屋に住んでるのかを軽い調子で聞かれた、消防隊の人に自分から話たのと同じ感じで僕は穏やかに答えた。

こんな状況で理屈もわからずに部屋に戻りたくない、僕は怖くて女の人二人にも聞いた。
二人とも。
「大丈夫だから、とにかく大丈夫だから」
両手を身体の前で振って安全だという。

僕は恐怖でウンザリとしてきた。
なんでみんな精神論だけで状況を把握させてくれないのだろう、最後にほとんど諦めながらも、警察官さんにもう一度だけたずねた。
「なにがあったかは話せません、秘匿です」
そのようなことを言われた、警察官さんは自転車の後部のものを仕舞うところに物をしまって自転車に乗って帰っていった、と思う、もう記憶は曖昧だ。

消防車が4台も来て、外に出ればわかると言われ、結局なにもわからず、同じ階の部屋にベランダに梯子もかけたのに、秘匿と言われ、自分の部屋に戻る、もう怖くて心と身体が辛い。

心に不安を抱えた僕にはこの体験はとても辛い、怖かった、今はもう割り切って気にしないことにした、でもこの気持ちを文章にして書いてはおこうと思った、怖かったよお。