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テレビ屋気取り #15「あたらしいテレビ」(2021.01.01)


年末年始はやっぱりテレビが面白い。

ただただ笑いながらテレビを見ていたいと思うものの、どうしても「テレビ」というのが自分の今後の人生を大きく左右する存在になっていて、テレビを見ていても心が痛くなります。


今回はその「テレビ」のテレビについての感想を書きたいと思います。


読んでくださる方たちが、今後途中で「お前誰なんだよ」思うかもしれないので前もって言っておくと、ただのテレビが好きな大学生です。

テレビとのかかわりで言うと、
テレビで内部告発をした人です。
気になる方はYouTubeで検索してみてください。



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紹介する番組
「あたらしいテレビ」


1月1日(金) 22:00~23:15 NHK総合

<出演者(敬称略)>
佐久間宣行(テレビ東京プロデューサー)
辻愛沙子(クリエイティブディレクター)
野木亜紀子(脚本家)
ヒャダイン(音楽クリエイター)
山之内すず(タレント・俳優)
松本まりか(ナレーション・俳優)
近江友里恵(NHKアナウンサー)


「新春テレビ放談」というタイトルで昨年までは放送されていたものが、昨年5月に「あたらしいテレビ徹底トーク2020」というタイトルの特番が放送された事で、今年の正月はそのタイトルを引き継いで「あたらしいテレビ2021」に生まれ変わりました。

私は昨年、「新春テレビ放談」の存在を知りましたが、見逃し&録画ミスで見ることができませんでした。この5月に放送された「あたらしいテレビ」がにつづいて、このシリーズを見たのは今回が2回目です。


実はこの「あたらしいテレビ」が、この何の変哲もない「テレビ屋気取り」原点なのです。

外出自粛で心身ともに疲れ切っている中、テレビをはじめとしたコンテンツの可能性みたいなのを、ただの1人の視聴者に過ぎないのに感じました。

そして、コンテンツを語る面白さや必要性を感じ、
「じゃあ自分もやってみよう」
と思い立ちました。

自分が見て面白かった番組やそこから考えたことを、週1くらいのペースで更新してきてここまできました。

今回はその原点の最新回を見たことで、感じたことや自分がこれまでに書いてきたことと照らし合わせて、”あたらしいテレビ”について考えてみようと思います。




「MIU404」の話


「MIU404」は、私が2020年で一番好きなドラマです。

毎回いろいろな社会問題をテーマとして、そこに正面から向き合っていくストーリー展開が心に刺さります。

見終わった後、社会問題に鈍感な自分が恥ずかしくなりました。
そんな鈍感な自分のような人間も、現実に向き合わせる力があるというのがこのドラマのすごいところだと思います。

今回の「あたらしいテレビ」でも、
このドラマの脚本を手掛けた野木亜紀子さんを中心に、話題に上がっていました。

佐久間「エンタメと社会批評がどちらも物語の両輪になっている。」
野木「見てもらえないと意味がない。視聴率が悪いと叩かれる。」
ヒャダイン「最近のヒットコンテンツはみんな”仲が良い”。」

↑印象に残った出演者の方々のコメントです。


これらのコメントも印象に残ってはいますが、一番考えさせられたのが星野源さんのインタビューでの話です。

源さんが取り上げたのは、「MIU404」第4話に登場した”青池透子”という人物の”人生の終え方”について。

第4話は全体を通して青池透子の”負けの人生”について描かれ、青池自身が自分の負け続けた人生に対する悔しさや世の中への怒りをつぶったー(劇中版Twitter)に残す描写など、”負けの人生”を強く印象付けられます。

ただ第4話のメインはそこではなく、
青池自身が思う幸せな状態で人生を終えたこと
です。

源さんが言っていたように、「社会的な幸せ」なんてどうでも良くて、「自分の中の幸せ」を大事にしたいなと思いました。

私が個人的に人生の中でうれしかった出来事は、
「社会的な幸せ(≒自分が描いていた理想)」の先にあるんじゃなくて、それを踏み外した先に待っていました。
ある意味で結果論なのかもしれませんが、自分がその時そう感じるか(幸せか)が大事だと最近よく感じます。





「あちこちオードリー」の話


(以下に書いている内容は、私が以前に書いたものと重複している可能性があります。)


今回いちばん印象的だったのは、「あちこちオードリー」のプロデューサーである佐久間さんが企画の経緯を説明した部分です。

佐久間
「オードリーが2人とも人間的に面白い状態にある。『人が嫌いだ 苦手だ』と言っていた若林くんが『いちばん人に興味があるんですよ』と言ってのが番組作りのきっかけ。」

オードリーファンの自分としては、この経緯をなんとなくは知っていたつもりですが、それが「あたらしいテレビ」を通してたくさんの人に伝わったというのが、なぜか自分のことのようにうれしかったです。

若林さんが”人”に興味を持っているというのは、いろいろなレギュラー番組を見ていて感じます。

特に「オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。」で、ゲストとして登場する一般出演者とのトークの中で、「この人面白い!」と思った時に若林さんの目の変わり方が個人的に好きです。

佐久間さんも共感してくださるのではないかと勝手に感じています。



ヒャダイン
「(あちこちオードリーは)テレビとラジオのいいとこ取り。」
「予定調和がはじかれている。」

佐久間さんが「あちこちオードリー」の説明をした時に、
ノーアンケート・ノー打ち合わせという話をされていましたが、これは「予定調和じゃないからこその面白さがある」というヒャダインさんの感想へとつながります。



「全部リアルじゃないといけないのかと言われたらそれは違う気がする。」
「フィクションとリアルの間が許されない気がする。」

これを聞いた時、
大変恐縮ですが、以前私が書いたことに通じるなと感じました。

テレビがアンケートや打ち合わせを重ねてしっかりとした構成を作り上げるのは、完璧なものを見せたいから。
もっと言うと、下手のものを見せたくないから。(失敗したくないから)

でも、もしこれによって”リアル”が損なわれるとしたら、今の視聴者はそれをコンテンツとしては認めないと言う話です。

「あちこちオードリー」のように、アンケートも打ち合わせも台本もなくて、多少の失敗があったとしても、そこに”リアル”があるから注目を集めているのではないかと思います。

テレビがカッコつける時代は終わりです。





視聴率の話



ここ数ヶ月、私の中で呪いのようにつきまとっているの「視聴率」について。

今回の「あたらしいテレビ」でも、

野木
「地上波は視聴率というものにまだまだこだわっているので、すぐ配信に出すということに抵抗がある人たちがいる。」
佐久間
「TVerのランキングは1年前とは違う注目度になった。局によってはTVerのランキングや回転数を張り出している。」

というように話題に上がりました。

佐久間さんの話を聞いた時、自分が考えていたことが間違っていなかったと自信になったし、とても勉強になりました。

世帯視聴率から個人視聴率に移行し、
それでもテレビでテレビを見ない今の時代では、視聴率というのがもはや意味のないものに感じてやまない今日この頃です。

視聴率以外にコンテンツの価値を測る指標として、TVerの再生回数は私の頭の中にもありました。

でも、もはやこれだけではたりないほどに、世の中のコンテンツのあり方は複雑化していて、テレビ番組ひとつでも、数字だけでなくSNSの感想に目を向ける必要があるし、実際現場の作り手たち(演出など)はそこに日々目を向けているはずです。

”視聴率にかわるコンテンツの価値指標”

すでに現場ではそれが研究されていると思いますが、私は今後そこに真剣に向き合って何か発明でもできたらいいなと考えています。





「あたらしいテレビ」の存在意義


2020年5月の放送時からずっと疑問に思っていることがあります。

フワちゃん(前回出演)や山之内すずさん(今回出演)のファンたちはこの番組を見ているのか。見ているとしたら何を考えるのか。

少し気になったので、山之内すずさんが「あたらしいテレビ」の出演について宣伝をしたツイートのリプ欄をのぞいてみましたが、特に感想のようなものは見当たりませんでした。


私が昨年、あるテレビ局の採用試験の面接を受けた時に、「あたらしいテレビ」のような番組を作りたい旨を話したところ、
「そういう番組は視聴率取れないよね?どうするの?」
と聞かれました。

この質問に対して、面接で小手先だけの回答をするならば、
「フワちゃんや山之内すずさんのような若者に人気なタレントや、今流行りの第七世代の芸人を起用して、こういう番組に普通は関心を持たないであろう層にも観てもらう。」
です。

私は実際の面接でもそんな感じの小手先の回答をしました。
でも、面接が終わった直後にすごく後悔をしました。

正直に言うと、
そもそもこういう番組に視聴率は望んでいない
からです。


前回フワちゃんが、今回山之内すずさんが「あたらしいテレビ」にキャスティングされたのは、別にそんな客寄せ的な意味があったわけではないと私は思います。

単純に、出演者としてテレビに関わっている若者世代が何を考えているのか、その意見が欲しかっただけだと思います。

その結果、もし2人のファン層が「あたらしいテレビ」を観て、「そんなふうに考えてテレビに出てるんだ〜テレビって面白いな〜」と思ってくれたらそれに越したことはありません。

今回の話題からまとめると、
「バズる」は狙ってできるものではありません。

特に「あたらしいテレビ」のような番組にそれを求めることは難しいと思います。


では、「あたらしいテレビ」の存在意義はなんなのか。

私なりに一言でまとめると、
クリエイターへのリスペクト
だと思います。

昔とは違って、数字だけで視聴者の反応をうかがうような時代ではありません。

SNSでの感想やこういったブログによるリアクションをもとに、テレビ番組をはじめとしたコンテンツは進化していきます。

クリエイターたちもそこを頼りや励みとして、創作活動を行なっているに違いありません。

こういったクリエイターに対して、「あたらしいテレビ」のようなコンテンツを通して、感想や自分なりの考えをぶつけることが大事なのではないかと思います。そこに多少の批判が含まれていたとしても、それはリスペクトを踏まえた上での批評です。


特に2020年は、誰もが大変で苦労しら世の中にもかかわらず、テレビをはじめとしたエンタメは、いつもと変わらず私たちにコンテンツを提供してくれました。

それなのに、何も考えずそれらを吸収するだけではクリエイターに対して失礼ではないでしょうか。

こんな世の中だからこそ、誰でも自分のメディアを持って発信できる世の中だからこそ、クリエイターへのリスペクトという意味で、「あたらしいテレビ」が必要ではないでしょうか。




私なりの「あたらしいテレビ」


最後に、
先ほど「『あたらしいテレビ』のような番組を作りたい」という話をしましたが、「あたらしいテレビ」を観ている最中に、私が尊敬するテレビマンの1人があるツイートをしていて、思わず熱くなって引用リツイートしてしまいました。



放送終了後、ハッシュタグ「#あたらしいテレビ」を追いかけてみましたが、いわゆる自称・テレビオタクの方々の中には、

「もっとテレビの話をしてほしかった」
「テレビ”だけ”を取り上げてほしかった」

というような感想がありました。


私も以前はこう考えていました。

ただ、やはり視聴率であったり世の中のコンテンツの成り立ち方からして、テレビ”だけ”を語るには限界があります。

私も含めて、テレビを好きな人ほど「世の中にはテレビがもう受け入れられていない」ことに気づいけていないのです。(←表現は少し大袈裟ですが…0)

実際、2020年にMBSで放送されていた
「田村淳のコンテンツHolic」
という番組も、テレビに限らずコンテンツを幅広く扱うしかなかったし、それでも番組は終了してしまいました。(もっと続いてほしかった…)


こうやっていろいろな番組を観て考え抜いた結果、
週に1回は無理でも、月に1回や1クールごとには定期的に放送して、リアルタイムでホットなコンテンツ(できればテレビメインで)について語り合う番組が必要だと思います。


あと、放送終了後の感想を見ていて、

「テレビのディレクターだけでやってほしい」

というような意見も見受けられましたが、

私はこれに対しては、最初から自分の中で異を唱えていました。


もちろんテレビはディレクターをはじめとしたスタッフの手によって作られ、出演者はあくまでその指示に従っているという見方ができますが、テレビを見ていて思うのは、

「演者の方々(タレントさん)は、本当にテレビが好きなんだな〜」

ということです。

自分が出演した番組以外にもいろいろな番組をチェックしていて、日々その人なりの感想を持っていると思います。

それをクリエイターと一緒に語り合ったら、絶対にその方が面白いと思います。

私が「あたらしいテレビ」のような番組を作るなら、絶対演者(表方)の存在も大切にしたいです。




最後に


別に自称・テレビオタクの方たちを批判したいわけではありませんが、私がこの「テレビ屋気取り」を書いている目的がその人たちと違うのは、

本気で「あたらしいテレビ」を越えるコンテンツを作りたいと思っていて、批評を通して自分のやりたいことを整理している

ということです。


これを読んだクリエイターの方たちが不快に思われるかもしれませんが、私は少しではありますが、実際の制作現場を見てきた経験とそこから考えたことを踏まえて、いつもこれを書いています。

将来自分がクリエイター側の舞台に立った時、この「テレビ屋気取り」を続けてきたことが少しでも良かったと思えるように、今後も続けていきたいと思っています。

そこだけはご了承いただけると嬉しいです。


長文にお付き合いいただきありがとうございました。

叱咤激励なんでも構いません。
少しでも何か感じたことがあれば是非コメントをお願いします。





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《2020年心を動かされた映像コンテンツトップ10(順不同)》


MIU404(TBS)
あちこちオードリー(テレビ東京)
相席食堂(ABC)
田村淳のコンテンツHolic(MBS)
映像研には手を出すな(ドラマ/映画)
あざとくて何が悪いの?(テレビ朝日)
日向坂で会いましょう(テレビ東京)
17.3 about a sex(Abema)
オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。(中京テレビ)
罪の声(映画)


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2021.01.02 作成

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