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来るべき災害に備えて、我々ができること ~技術科の立場から~

もう少しで6月が終わる。気が付けば、これで「今年も半分終わり」である。まだまだ、今年を振り返るには早すぎるが、この半年間に起きたことのうち、我々の記憶に鮮明に残っているのは、元日の夕方に発生した「能登半島地震」ではなかろうか。被災された皆様には、お見舞いを申し上げる。

近年、日本では、防災や減災に関する意識が高まっている。今年は、梅雨入りの時期が全国的に遅かったようであるが、梅雨明けまでは、まだまだ油断は禁物である。この時期、予想外の大雨に見舞われることは珍しくなくなってしまった。


1.はじめに

現行の学習指導要領において、「技術科」の取り上げる内容は、次のように大別できる。

A.材料と加工の技術
B.生物育成の技術
C.エネルギー変換の技術
D.情報の技術

中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 技術・家庭編

この中にあって、「自然環境の保全や防災等に関わる社会的な問題」について考えることも求められている。すなわち、上述のA~Dを通して、技術科の貢献できることがあるとも言えよう。

2.ダイナモチューブライト

上述の四つの技術について、多くの場合は、何らかの実習を伴うだろう。3年前に、私が佐大教育学部へ着任したとき、附属中学校では「C.エネルギー変換の技術」に関連して、久富電機産業の「ダイナモチューブライト」を取り上げていた。

久富電機産業の「ダイナモチューブライト」の外観

インターネットで調べたところ、こちら(https://www.hisatomi-kk.com/seihin/generation/DT-1/DT-1.html)がヒットした。付属の太陽電池、あるいは手回し操作で発電ができる。その電気は、スマートフォンの充電に使えるようだし、電灯として使えるようでもあった。

久富電機産業の「ダイナモチューブライト」

本来は、中学校技術科の教材という位置付けであり、その組み立てに当たっては、抵抗器、コンデンサ、ダイオード、トランジスタなどの部品を基板にハンダ付けする必要がある。組立説明書には、その具体的な手順について詳細な説明が掲載されているものの、生徒たちが、いきなりハンダ付けの本番という訳にもいかず、実際には、練習の段階を経て臨むことになるであろう。

ハンダ付けの準備(ハンダごて・こて台)
「ダイナモチューブライト」の組立説明書
「ダイナモチューブライト」の内部は……

しかしながら、現実は、そこまで待ってくれる時間的な余裕がないのかもしれない。現行の授業時間は、中学校1~2年生の場合、毎週1回(50分授業)が標準的のようである。これが、3年生になると半減する(家庭科との交代で隔週?)。それゆえ、担当教員にとっては、時間の確保が悩みの種になっていると容易に想像できる。

かつては、多くの中学校で取り扱っていたようであるが、徐々に減りつつあるのではないかとの印象が拭えない。実際、附属中学校でも、その年度末の担当教員の転出に伴い、ダイナモチューブライトは扱わなくなった。

3.おわりに

近年、我々の身のまわりでは、大規模な自然災害に見舞われることが多くなったように感じる。このような状況を鑑み、かつて佐大教育学部の附属中学校で取り上げていた教材「ダイナモチューブライト」について言及した。

ここでは、もっぱら「久富電機産業」の製品を取り上げたが、おそらく類似のものが存在すると思う。特定の製品だけを宣伝する意図はないので、どうか御容赦下さい。


【おまけ】

ここでは、おもに「ダイナモチューブライト」の本体に言及したが、実は、付属の「実験セット」が素晴らしい。発光ダイオード(LED)、トランジスタ、光センサ(CdS)など、いろいろな部品を付け足していくことで、電子回路に関わる様々な知識が習得できる。本体に「100円を追加するだけ」というのも有難い。

ただし、繰り返しになるが、中学校における現行の授業時間では、おそらく本体を組み立てるので精一杯だと拝察する。

これに対して、我々のところでは、3年次後学期の専門科目「電気工学実習」において、数週間をかけて取り組んでいる。これは、「まずは教員が体験しなければ、その先は語れない」という思いからであるが、私自身、新たな発見をすることもある。やはり知識一辺倒ではダメで、体験が重要ということであり、「百聞は一見に如かず」との思いが強くなった。

なお、下に示すのは、過去2年間の授業に関わる投稿(旧TwitterとYouTube)である。御興味があれば、ぜひどうぞ。何かの参考になれば幸いである。


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