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THE SPA 成城

  因果応報。僕はこの時後輩の家にいた。彼はたびたび僕のこの忘備録に出てくる僕の説教を浴び続けている男である。この日は細々とやっている彼のラジオの収録とSNS用の映像を撮影するために集まった。

 今回撮影したのは「カジキ男あるある」という謎のあるある動画を撮影した。カジキ男とは後輩がフリーの芸人をやっており、養成所時代に生み出した男のカジキに扮するネタである。頭に青色の鋭い尖りを装着し、カジキ男としてコントをするのだ。僕が最初にそのネタを見た時は頭に尖りを装着し、青色の全身タイツを着ていたのでカジキに見えたが、今回の動画撮影時には頭の尖りのみ装着しタンクトップ姿であった。もはやこれはカジキ男ではなく頭尖り男なのではと思ったがそんな野暮な事は言わないようにした。

 最近知ったのだが僕は彼から怒りの小言郎と影で呼ばれていた事が判明した。連絡先も「クニサダ」ではなく「怒りの小言郎」と登録さており、その事を知った僕はまんまと小言を言いまくった。僕からしてみれば昔から彼には愛のあるお説教をしてきたつもりだが、この感覚こそ僕の心の中にいるリトルパワハラおじさんが騒いでいるだけで、言われている側は余計なお世話でもあるだろうし、詮索しすぎなんだろう。これは反省である。


 結局この日も小言を言ってしまい、お互いに小言疲れしたのでサウナに行く事にした。本日はTHE SPA 成城に行く事にした。千歳船橋駅から徒歩15分程で辿り着いた。送迎用のバスもあるようだが、少しでも体を追い込もうと言う事で徒歩にした。
 施設自体は小規模の商業施設となっており、施設に入ったエレベーターで上に上がっていく。THE SPA 成城はセントラルスポーツの一施設となっており、エレベーターから降りるとスポーツ施設の入り口となっており少し戸惑った。特に会員でなくても入れるので安心して欲しい。入館料は5時間で1,320円タオルもセットになっている、土日祝日は少し値段が上がるようだ。そしてスポーツ施設の会員は1回1,000円以内で使用できる。
 
 浴場はとても広く、色んな種類の浴槽があり、外気浴兼外気浴スペースもある、特段特別な仕様はないがとても清潔に管理され、浴場内の通路も広いため、人が多くても鬱陶しくなさそうなのが好感を持てる。

 浴場に入り体を洗った後、我々はすぐにサウナに行く事にした。サウナは3段仕様で横も10名ほど座れる長さであり、30名は余裕で入れる大きいサウナになっている。僕と後輩は隣同士で座れる場所がなかったのでそれぞれ別の位置に座った。気温は90度いかないくらいだろうか。テレビは常設されており、野球の日本シリーズ阪神対オリックスが放送されていた。サウナと野球というのは好きな層がマッチしているのか皆テレビにかじりついていた。

 数分後、Tシャツを着たスタッフが2名入ってきた。なんとロウリュウが開催されるようだ。これは嬉しい。一通り初めての人にもわかるようにロウリュウの説明をしていよいよ始まる。その時1人の人間がサウナ室を出ようとしていた。なんと後輩であった。情けない、こいつはおそらくロウリュウ童貞で初めての経験の前にビビって逃げ出したのである。こんなタイミングでも心の中で小言を言っている自分に嫌気がさした。
 通常ロウリュウの際はテレビの電源をオフにするらしいが今日は特別でスポーツに触れてほしいという事でロウリュウ中もテレビはつけっぱなしにしてくれるようだ。さすがスポーツ施設に付随している温泉施設だ。なぜか妙に納得してしまった。
 今回はミントの香りがする水を使用しているようで始まる前からサウナ室はミントの香りが充満していた。少し効きすぎのような気もするが、まあ熱波くらいますかね。男性スタッフ2名が真ん中からお互いに端のの5人目まで熱波を送りその後、スタッフが真ん中に戻り入れ替わり前半それぞれが熱波を送れなかった5名に再度端の5名まで熱波を送ってくれる。つまり2回熱波をもらえるのである。スタッフが「熱波!」と言ったら我々客が「GO」と腕を上げて1段目から始まった。2段目に座っていた僕は1段目の人たちが熱波をくらっているのを見守っていた。1段目終了後、スタッフの休憩と耐えれなくなった人の入れ替えが行われる。スタッフが水分補給し、数人がサウナ室を後にした、そこで数人がまた入ってくるそこに後輩の姿もあった。
 2段目の番が来たサウナ室も良い感じの温度になっている。僕はしっかり2人から熱波を受け小声で「あざす」と言った。後輩は3段目にいるようでその後しっかり熱波を受けたようだ。しっかり3段目までロウリュウが終わりしっかりスタッフの方々に拍手をした後サウナ室を出た。汗を流し、水風呂に入り体を冷ました。水風呂は18度ないくらいで気持ちがいいいつもならすぐ出てしまうが今回はロウリュウを受けたので少し長めに入った。そして外気浴に向かった。整い椅子も4脚あり、長い椅子も1脚あるので6名ほど座れる。外気浴中に後輩が隣に座ってきた。「いや〜気持ちいいですね〜」となんの捻りもない感想をもちゃもちゃ喋っている。最初のロウリュウ時にサウナ室を出たことも聞いたが「ビビっちゃいましたね、でももっかい入って受けてみてめっちゃ良かったすわ」とこちらも想像通りの答えが返ってきた。僕は一言「軟弱だね〜」と小言を言った。
 
 いつも通り3セットを終え、THE SPA 成城を後にした。千歳船橋駅に戻り、後輩が1杯飲みたいというのでチェーン店の居酒屋に入った。そしてふいに後輩から「なんで僕とまたこうやって会ってくれるんですか?」と聞かれた。僕は常々後輩にはちゃんと意味を考えて行動しろと小言を言っていた。何かぽい事言ってやろうと思っていたが、サウナの後の気持ちよさで頭も回らず「ん〜なんとなく」と言ってしまった。

 後輩は全然気にせず「そうっすか」と言っていたが、勘のいいやつであれば「こいついつも言ってるくせに自分は適当かよ」と思われてしまうシーンであった。もしかしたら思っていたけれど顔に出さなかったのかも。「今俺に怒る所だろ」と怒りの小言を言いそうになったがさすがに我慢したのであった。
 
 

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