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「夢と狂気の王国」の感想(その2)

せっかくなので昨日に引き続き、「夢と狂気の王国」の話を。昨日は砂田麻美監督の話だったから、今日は内容の話を書きます。 

登場人物たちの個性が強すぎて、印象的なシーンばかりの映画なのですが、昨日見た時にいちばん印象に残った箇所は、後半の宮崎監督のアトリエで、監督の独白が続くシーンです。

宮崎監督:
自分が幸せになることが人生の目的だというの、どうもおれ、納得できないんですよ。

普段、幸せだなあなんて思ったことないんですよ、ぼくは。いや、そうじゃないの? みんな、そんなことを目的に生きてるとはとても思えないんだけど。映画をやったら不幸になるに決まってるんだから。

宮崎監督らしい、自虐的なユーモアをまじえた表現なんですが、すごい話をしてますよね。以前、ドワンゴの川上会長が「起業をすると不幸になる」と言っていたのと通じる話だと思います。

普通は、自分の幸せを考えるだけで精一杯だと思うんですが、宮崎監督は、それは違うといいます。ぼくは、みんながそうすべきとは思わないのですが、世間で言う「すごい仕事」をしているひとは、自分のためでなく社会のためにやっているひとが多いような気がしています。

ただ、おもしろいのは、映画のなかで、高畑勲さんは例外なんですよね。彼だけは、自分のことだけを考えて、映画をつくっているように描かれています。そして、まわりの全員がそれに振り回される。ぼくは「かぐや姫の物語」を、この作品を見て観る気になったのですが、驚くほどすばらしい芸術作品で、本当に感動しました。

高畑さんに文句を言いながら商業映画を作り続ける宮崎さん、まわりにまったく頓着せずに好きなように仕事をする高畑さん、そんな怪物たちを「しょうがねえなあ」と言いながら統括する鈴木敏夫さん。その周辺のさまざまなひとたち。「夢と狂気の王国」というタイトルが、まったくふさわしい、すばらしい記録映画だと思います。

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