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「放課後、部活にて」(番外編5:②)

 数分後、再び力強く開けられる教室のドア。

 顔を上げると、さっきの中年女性が立っていました。そして、彼女はまたも私の方に足早で歩いてきました。

「あんたねー、どうしてわかってくれないの?」
彼女はため息をつきながら、喋り始めました。

 一方、私はどうしてこの人は私だけに言うんだろう、などと考えていました。

「すいません、私がこの中のリーダーなんですけど」
と、 先輩が中年女性と私の間に割って入ってきました。

「ああ、そうなの?」
微笑みながら先輩の方を向く女性に、先輩は戸惑っていました。

 しかし、中年女性は私の方に向きを変え、また強い調子で話し始めました。
「あんた、こんなことしてたら顧問の先生に言うわよ。部活、クビにしてもらうから」

 そう言って、彼女は意地悪く笑い、私のステイックを掴み、教科書も取り上げました。私は首をかしげながら、思わず先輩に目で助けを求めました。

「こっちを見なさい!」と一喝する女性。
「あの、私がリーダーですから、、、すいませんでした」

 頭を下げる先輩に、女性はまた微笑みながら、
「わかってくれれば良いのよ。もう止めなさいね?」

 女性は先輩の肩を持って、頭を上げさせました。

 しかし女性は、そんな様子を見てほっとする私を睨みつけて指を差し、「あんた、判ったの!」と怒鳴りました。そして、私が叩いていた教科書の埃を払って、ステイックを掴んでいた手を離しました。

「良いわね!もう絶対に止めなさいよ!」
そう言って、中年女性は教室を出て行こうとしました。

「あの、どうしてこの子に言うんですか?この子、一年生なんですけど」
私の隣にいた別の先輩が、中年女性の背中に声をかけました。

 すると、女性は振り返り、数歩戻ってきてまた私を指差しました。
「あんた、男でしょ!こんな時はあんた一人が怒られてれば良いのよ、男なんだから」
そう言って、彼女はまた足早に教室を出て行きました。

「好き好んで、男やってるんじゃないんです。。。」
私は心の中でつぶやきました。

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