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初恋(前編)

 私が中学一年生の頃、私とY君、そしてWさんという女の子は、「三人組」を組んでいました。もちろん、いつのまにかそうなっていただけで、そこにはまだ恋愛感情などは無く、ただ気持ちのいい友情だけがありました。

「誰かにいじめられたら、私かY君に言いなさいね」
とは、クラスの中でも体の大きかったWさんの言葉です。実際、彼女はいじめられてる私を助けたり、慰めたりしてくれました。

 特に学校以外では会ったりはしないものの、三人はいつも一緒にいました。珍しく友達らしい友達が出来たので、私にはとても楽しい時間でした。

 しかし、わずか数ヶ月後、Wさんは父親の転勤で急に引っ越すことになりました。

 その時、残された私とY君はどうなるのでしょう?ちなみに彼は彼女と同じくらいの背丈にも関わらず、私ほどでは無いにしても、やはりいじめられっ子でした。

 そんな二人にWさんは、一通の手紙を残して去って行きました。
「Y君、もっと強くなってKくん(私)を守ってあげてね。二人とも仲良くね。」
そんな内容でした。

 三角形の一点が無くなれば、それは直線でしかありません。私とY君の二人だけの関係は、一気に揺らいだものになって行きました。

 私以上に、彼女の言葉を重く受け止めたのがY君でした。彼は言葉通りに無理をして、私を守ってくれるようになりました。私がいじめられていると、どこからともなく現れて、身をていしてかばってくれる。その様子は痛々しいほどでした。

 やがて、次第に私は彼に惹かれていき、彼に会うことが辛い学校に行く理由になりました。

 さて、数ヶ月後、全員参加の臨海学校がありました。

 日中の行事が終わり、そろそろ寝る準備をする時のことです。なぜか毛布が人数分より1枚だけ足りません。一体、誰が2人で1枚の毛布で寝るのか、それが問題になりました。

「僕達が一緒に寝るよ」
突然、私の隣にいたY君がみんなにそう言いました。思わず私は彼の顔を見ましたが、彼は大したことじゃないって顔をしていました。

 私と彼が異常に仲が良いことは、クラスの誰もが知っていたことなので、それで問題は片付きました。

 何も言わず、背中を向けて先に毛布の中にいる彼の横に、私は滑り込みました。どきどきしながらも、それを誰にも知られたくない、私はそんな気持ちでした。

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