地に潜む玄武の至宝②

いよいよ玄武げんぶと対決だ。巨大な亀かめのゴーレムは強靭堅固めちゃかたい。尻尾しっぽの蛇へびへ切り掛かかるか、額ひたいの文字を消すしか攻略法やっつけるがない──

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こんにちは。フジミドリです。ミツ＆サクヤのコンビ、地下ダンジョン最下層さいかそう、ラスボス玄武に挑む３回シリーズの第２話です。
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まず、正面からぶつかっていく。玄武が強力な火を噴ふく。ボクは横へ飛び退のく。すぐさま甲羅こうらに短剣たんけんを突き刺す。でも、まるで通らない。尻尾の蛇が襲おそいかかってきた。

蛇の体は、ボクの胴おなかより太い。鱗うろこがテラテラだ。瞼まぶたのない瞳ひとみが鋭く光る。ガブッ。尖とがった白い牙きばは空を切る。ヤバ。マジ怖いよ。

サクヤの防護魔法ぼうごまほうが発動する。ボクを包む。周まわりでバリアができる。途端とたんに、フワッと暖かい。球形の膜まくで覆おおわれた。

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その後あとも、何度か攻撃したけれど、致命的ちめいてきなダメージが与えられない。甲羅を突き刺す。蛇も切り裂さく。確かにポイントは入った。

でも、さっきのパーティーと、変わらない。さらにボクは、一人で二役やってる。尻尾の蛇と戦う。火は避さけ額の文字を削けずり取る。

サクヤも同じ。防護魔法でボクを守る。ケガしたら、ヒーリングで癒いやしちゃう。これってやっぱり、ちょっとキビしいかな～

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ボクらは仕方なく、イデアルームへ引き籠こもった。静かな音楽でリラックス。爽さわやかな風に吹かれると、大きく深呼吸はいてすってでき、ようやく気持ちが落ちついてきた。やれやれ。

普段ふだんの生活でも、イデアルームがあればいいんだけどね。ふとそんなことを思う。現実は保留のままで、異次元いじげんに引き籠もるかくれちゃうんだ。

「ミツ君ごめんね。あたしの魔法５秒だけ」
『そんなことないよ。ボクが遅トロいから』
「ううん。ミツ君、速いもん」
『高望たかのぞみしてもしょうがないか』

「今できることで、何とかしなくちゃね」
『脚あしとか切れないかな。どうだろ』
「それって、ナイスなアイデアかも」
『次、やってみるよ』

「あ」サクヤが叫ぶ。「あたし、土魔法つちまほうが使えるよ」ステータスの画面を見て微笑ほほえんだ。「土壁つちかべなら作れる。火が防げるわ」

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このゲームは、ボスを倒せなくても、攻撃し続けるとポイントが加算かさんされる。防護するだけで、サクヤもレベルアップできた。

もう一つはメンタルモニターだ。ボクらの心が成長すればいい。メンタルモニター略したらMMですねでも、ポイント加算ゲットできるのだった。

でも、心が成長するって、どうすればいいんだろうね。イマイチよくわかんない。普段の生活で、考えたことなかったもん。

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最下層へ戻る。ボクは火炎を避け、短剣で切り掛かる。玄武の太い脚に突き刺す。刺した瞬間だ。青緑色はちゅうるいの血が噴ふき出す。ウワワッ。キモいよ。あっさりモードでよかった。

リアルモードなら、きっと臭においも酷ひどいんだろうな。吐いちゃうね。わ。尻尾の蛇が噛かみついてくる。ボクは転がって這はう。ギャアァ。鎧よろいもシャツも青緑の血だらけになった。

ギギギギ。不気味ぶきみな音。玄武の首は回って、ボクと目が合う。来るぞ。火焔かえんだ。ゴゴゴゴゴ。サクヤの作る土壁はせり上がる。うぅ。元気が出るよ。ハラの底は熱くなった。

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火を防いでくれる。炎の勢いが弱まる瞬間、ボクは土壁に攀よじ登り、天辺てっぺんを蹴けって、額へ襲い掛かる。あと少しで届く。次の火が発動されるまで３０秒しかなかった。

カウントダウン２９…２８…２７…

ウワッ。ヤバッ。蛇が大口を開けて襲ってくる。食われちゃう。ガチッ。短剣で防ぐ。そのまま押し込まれる。ボクは放り出された。

これ以上は攻撃が続かない。どうしよう。ガイドの説明を思い出す。決定打のないままで時間が経たつと、玄武は動き出すのだ。

あれが動いたらヤバいよ。マジ怖い。対処たいしょできないもん。メンタルモニターが光った。

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ゲージのマーク人の形をしているでは、頭や心を使う青色が多くて、中心感覚ちゅうしんかんかくの赤い部分は少ない。

見た途端、フッと意識が変わる。やれやれ。これじゃ本来の力は出せない。中心の仙骨せんこつに意識を向ける。ゼロへシフトした。

人型ひとがたのマークで青色は減り、赤い部分が増えていく。ピンチでも、心地よく感じられた。

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ダメだな。ちょっと、頭の考えや心の思いに傾かたむき過すぎていたよ。つい中心を忘れちゃう。だけど、どうしてすぐ忘れるのかな。

あれあれ。ステータス画面。赤い警告やばいぞランプがついてるよ。開いたら、モンスターがいつの間にか侵入しんにゅうしていた。

マインドウイルスだって。ワクチンソフトが機能きのうしてないぞ。強力なウイルスみたいだ。でも、マインドウイルスころなじゃないですよって何だっけ❓

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「さっきのパーティーですぜ」
『どういうことかな』
「彼らの想念が、入り込みました」
「え。でも、いい雰囲気ふんいきだったわよ」

『うん。そうだね。応援おうえんしてくれた』
「顔で笑って心で泣いてってやつです」
『何それ(￣▽￣;)』
「心じゃ違ちがうこと考えたり。あるいはね」

小柄こがらなガイドのエルフは腕を組む。ダンジョンの天井てんじょうを見上げる。溜め息フーッついた。

「たとえ、心から応援してくれたとしても、奥深おくぶかい領域ってわかりませんから。潜在意識ってやつですよ。憎にくんだり妬ねたんだりね」

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ガイドのエルフは、ゲームマニュアルを呼び出す。ボクはサクヤと肩を並べて仲良いね見る。調しらべればわかることだけど、その時間ヒマがあれば、ゲームを楽しみたいからね。

「あっしはね、自分でやるよりも、こうして皆さんをお手伝いする方が、スキなんすよ。前は自分もやりましたけどね」

『お陰かげでボクらは助かってる』
「ホントね。でも、どうしたらいいかな」
　その時、AIの声がボクの頭で響いた。

《新戦略のご提案ナイスなアイデアです》──

９月２６日午前１０時へ続くおまちいたしております💖

イラストは朔川揺さくかわようさん💞

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