見出し画像

見込み顧客は❝点数❞では評価できない。スコアリングの難しさ

BtoBマーケティングにおける営業パス


3年ほどAccount Engagamentの活用支援をしていて思うのは、営業パスの難しさ。
つまり、マーケティングやインサイドセールスから、営業へ、見込みの高い顧客をどう引き渡すかということです。

マーケティングオートメーションのタテマエとしては、自動で見込みの高い人を見つけたり、自動でコンテンツ送ったらいつの間にか見込み顧客がHOT化しちゃうよ!と言わせたいようですが(拡大解釈)、実際はそんなものは幻想でしかありません。

インサイドセールスに渡した案件がまだ青々しすぎて、社内では「その程度で電話かけられるか!」となったり、見込み顧客にしてみれば「いや、資料見たかっただけなんで…」というのはざらだし、結果、マーケティングからのリードはフォローする価値が低いので優先しなくてもいいのでは?と極端にいうとそうなってしまうのも仕方ない話なのでしょう。

マーケティングオートメーションによる顧客のナーチャリング、そして営業へのパスの過程は主にスコアリングやグレーディングといった機能を活用することがあげられます。
最近、感じるのは、スコアリングを活用する難易度はかなり高いということです。
それにはいくつか理由があります。


スコアリングはなぜ難しいのか

・スコアを評価するのが難しい
・スコアリング計測値に対する信憑性の問題
・継続したルールで運用改善ができていない

・スコアを評価するのが難しい

スコアは点数なので、一般に点数が高いほど見込みが高く、営業にもフォローしてもらえれば商談や案件につながりそうである、という前提ですが、そう簡単ではありません。
行動量が多い=見込み検討度が高い、というのは、相関は多少あるかもしれないが、因果を検証するのは難しいためです。
なぜかというと、スコアの点数そのものと行動の中身は一人ひとりの行動履歴を見ないとわからないので、結果なんでそのスコアになっているのかというのが説明できず、点数だけでの評価が難しいからです。1個人単位で見たときはもちろん紐づけはできるので、ある程度根拠立てて結果として貢献したことはわかることもあります。
ただ、点数だけで「このリードが熱い!」というのはとても難しく、必ずマーケティング側で精査したうえで、どのリードを渡すべきか検討するステップが必ず必要です。
実際に営業と定期でミーティングを設けて密にやりとりしない限り、お互いの溝は埋まらないと思います。

スコアリング計測値に対する信憑性の問題

付いている点数が本当に実情に即したものになっているかという問題もあります。
社内関係者は、ページの回遊やメールの開封といった行動をたくさん行っているため、数百とか数千のような超高スコアになっていることも多いです。
行動ごとに細かいセグメントをしない場合は、株主から就活中の学生、卸の取引先業者、自社になんらかのサービスを売り込みたい企業の人まで、さまざまなノイズが混じります。そのため、高いスコアが一概に見込みの高い顧客だと判断することが難しい場合があります。
また、2022年4月1日に施行される改正個人情報保護法により、Cookie規制が規制されて同意を求められるようになったぶん、Cookieが紐づいていない見込み客も一定の割合で存在します。また、iOSだと自動で開封扱いになってしまうという問題は長くありましたが最近ではメールbotの自動開封により、開封どころかクリックすら正確な値が取りづらくなっています。
そのため、一概にスコアが高いのが見込みの高い人だとは言い切れないのです。

・継続したルールで運用改善ができていない

多くの企業は特定ページの閲覧やファイルのダウンロードなどをスコアの指標として用いますが、製品・サービス単位で細かい設計をする難易度は非常に高いです。
Account Engagementでは、デフォルトのスコアリングルールが設定されており、おおむねこの程度の値でスコアを設定する、というのは経験上の見立てはあるものの、明確に数値根拠を持っていることは多くありません。
実際にコンバージョンをしている人、商談化したリードの行動をいくつかピックアップして見ながらどんな値が最適なのか、本来であれば調整・メンテナンスすることが必要です。
ただ、その数値根拠を業務フローの中に組み込んで見直し、調整をかけているところはかなり稀です。最初に設定した数値が見立てとあっているかわからない場合も、その数値をそのまま使い続けているのが実情ではないでしょうか。


グレードによる評価のほうが信頼度は高い

見込み顧客の評価基準としてもう一つ利用されるのは「グレーディング」です。
スコアリングが顧客の行動を評価するのに対して、グレーディングは顧客の属性によってセグメントを行います。

なぜグレードのほうが評価できるのかというと
「ターゲットでない人があまりにも混ざりすぎてるから」
につきます。

SEOや広告を通じて獲得した新規リード、不意の売り込みでフォームを通過した人、調査のために紛れ込んできた競合など、本当の見込み顧客ではない人がまったく入り込んでいないMAのデータベースは皆無だと思います。
見込み顧客の行動は、商品やサービスの興味関心と、完璧に比例しないのに対して、属性が一致する人はタイミングさえあれば、顧客に転換する可能性があります。
また、スコアは季節が変わったり、自社の事業に変化があると、その影響を受けるのに対して、グレードは変化の影響を受けにくいです。
もし、今グレーディングを導入していない企業がある場合は、ぜひ、グレードのデータをマーケティング活動に活用することを試してみてはいかがでしょうか。

スコアリングを取り入れるポイントは?

活用の難しいスコアリングですが、まったく無駄というわけではありません。よく自社の情報をキャッチアップしている人は、新規顧客であれ見込み顧客であれ、重要です。
ポイントは、「なぜ、そのスコアがついているのか、説明できるようにすること」「数値だけで判断せずに、実情を把握すること」「必要に応じて見直しをはかり、評価すること」の3点です。
最初のスコア設計は勘所が難しく、個人の算定基準にゆだねられてしまったり、決めかねてなかなか設定が進まないこともあります。顧客の評価基準に悩んでいる、スコアリングやグレーディングを活用したい企業からのご相談をぜひお待ちしております。

図解でコミュニケーションを変えることをミッションにここ3年くらい活動