うちのヤバいだんな53話更新されました
突然犬を飼う?という事になってしまって、私は内心ハラハラドキドキの回です。犬は大好きですけど、実家を離れてからは動物を飼うというのはなんだか色々ハードルを感じていたし、独身のうちに犬や猫を飼ってはいけないと信じていたのです(婚期を逃す説、ありますよね)。
冬のある日、青梅街道を歩いていると、唐突に表れたペットショップ。そのあたりには店もあまりないし、人通りも多くありません。特段予定もなく暇だったのもあってか、街中でペットショップがあっても入ろうなんて言わない人が、珍しく自分から入ろうと言ってきました。
どうやら、私の実家に行った時、家の中に穏やかな大きな犬がいる事に感銘を受けたらしいのです。昔は田舎に室内犬なんていなかったから、私もイケメンも幼いころに実家に犬はいたけれど、当たり前のように外で飼っていたのです。
だから、家の中に犬がいる生活とか、夢みたいに楽しくて素敵な光景に見えてしまうわけです。
実家の犬はすごく落ち着いた賢い犬で、人間に静かに寄り添って生きている感じ。テーブルの上に食べ物があっても、自分の食べ物じゃないものは食べないし、走ったりジャンプしたりもしない。(うわー、犬ってこんな感じなんだ、これなら一緒に暮らせるなあ)と私も大雑把にそんな風に思っていたのは確か。
だから、犬を見ているうちに、イケメンは気持ちが盛り上がってしまったようです。
その頃、マンションには他にも犬がいましたし、住人の方が言うには、私が住んでいる部屋の以前の住人は、豚を2頭飼っていたという話。「可愛い豚だった」と口々に言う住人の方々の顔を思い出し、
(豚を飼ってもいいなら、犬もいいだろ)
と、犬を飼っても大丈夫だとは思うけど?と返事をしたのです。それでもやっぱり、自分たちが犬を飼うなんて、その時点でまだイメージできていなかった。
家に犬がいたらもちろん最高だけど、飼ってもいいの?と私はやっぱりずっと、モヤモヤしながら犬たちを見ています。それに、一緒に飼うっていっても、イケメンは自分のマンションの部屋があるし、同棲未満のよくわからない立場。よくそんな状況で「一緒に飼おうぜ」なんて言えたもんです。
それにそれに、別れたらどうなっちゃうの?え?絶対別れないって事なの?え?こんなの今まで経験してない事だからわからないんですけど!
若いころの付き合いだと、まあ、そのうち別れるのかな、みたいな漠とした前提があったんですけど(ない?私はだいたいそう思ってた)、もういい加減いい歳なので、そういうわけでもない。大人っていうもんは、恋人と犬を一緒に飼ってもいいのでしょうか?と私は静かに葛藤をします。
でもイケメンは多分何もそういう事を考えない人なので、『犬と暮らす俺』のイメージに向かって暴走していきます。
全ての子犬は滅茶苦茶かわいい。
店にいる子犬がぞろぞろ目の前に連れて来られて、私はより一層困惑します。そして、『選ぶなんて無理だから今日のところは冷静になるために家に帰る』、という流れになる事を期待します。それなのに、イケメンは目をギラギラさせて、もう飼う気満々。
そして、犬との穏やかな暮らしを望んでいたはずなのに、よりによって、際立って落ち着きがなく、妙に浮足立った小さな黒い犬を選ぶのです。
選んでしまったら最後、やめようなんて言えないものです。その瞬間から引き取らないのは悪い事しているみたいな気分になってしまう。
買い物をしたと言って見せてくれる自分の服はだいたい1980円のくせに、この時は驚くほどに俊敏な動きで、結構な金額を下ろしにどこかに走っていきました。後にも先にも、これほどまでに俊敏に動き、サッカー部の主将だった片鱗を見せるのはこの時を含めても10年で2回くらいのものです。
小さな黒い犬はとても可愛い顔をしていて、体はつるつるぬるりとしてウナギ犬みたい。長い脚は常にじたばたしていて、ずっとぴょんぴょん跳ねています。私は、こんなに落ち着きがない犬を見たのは初めてでした。ほんとうに、全く意味がわからねえ、と困惑するほどにジタバタする犬だったのです。
むかしむかしの、伊東のハトヤホテルのCMの魚を思い出させるほどの、意のままにならなさ。つるつるしているし。
というわけで、穏やかな大きな犬との生活を夢見ていたのに、とんでもなく落ち着きが無くて、鹿みたいにピョンピョン跳ねる犬が家にやってきました。
で、この名前は即却下しました。
ダサすぎ。(あ、本当にブラックペッパーって名前でブラぺって愛称の犬猫いらしたらごめんなさい)
うちの犬は9歳になったけど、今でも信じがたいほどに落ち着きがないです。
年末感でてきて忙しいっ。
次の更新の頃は、すべての年末向けの仕事が終わっている状態である事を祈ります。また再来週もよろしくお願いいたします。
(連載丸2年だー)
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