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2023年7月あれこれ

どういうわけか、まるで何も書く気が起きなかった7月。何をしたら良いのか、今何をするべきなのかを迷い、気もそぞろだったのは誕生月だからか、それとも暑いからなのか。それにしても、体が茹るほどに暑いじゃないか!

7月8日土曜日

先月突然ご連絡をいただき出店することになった、2年に一度開催の音楽フェスであるtonofon festival の当日となった。以前は色んなイベントに誘われたものだが、私が年を取って声を掛けてもらい難くなったのか、小さい子どもがいることを慮られていたのか、すっかりイベントごとから縁遠くなってしまった。

展示会も出店もそりゃあもう体力気力が奪われて大変だけど、たまには大変な事もやってみないと成長していないような、退化していっているような気がしていたんだ、ちょうど。それに、適度なストレスが無いと人って早死にするって聞いたことがある気がする。私は健康長寿を目指しているのである。

もう随分と使っていないスーツケースを物置から引き摺り出し、前日のうちに入念な荷造りを済ませた。そしていざ、一生行かないような気がしていた街『所沢』へ、娘と共に出発したのである。

緊張する。滅多に乗らない路線の、多分これからも降りない駅を幾つも通り過ぎ、窓の外は少しずつ、見慣れた都会の景色とは変わっていった。

(ちゃんと野外ステージの関係者入り口までたどり着けるんだろうか)。

私は昔、適当な汽車に乗ってチェコからイスタンブールまで旅をしたことがあるバックパッカーである。それなのに、所沢の航空公園内で迷子にならないか心配で、夜も満足に眠れなかった。自分の小心ぶりが恐ろしくもなる。だって、もらった地図は、ここですって赤丸と青丸が付いているだけで、搬入口の警備体制がどんな感じなのかも、距離感も全然わからないんだ。ああ、気が重いよ、なんて緊張しているうちに、いとも簡単に所沢に着いてしまった。近い。驚きだ。

会場の最寄駅である『航空公園』駅は、その名の通り出たらすぐ、広大な公園が広がっていた。

飛行機があるのですよ

しかし、歩いても歩いてもどこにも着かないんじゃないか、というくらいに広大なんだ、ここ。そして、野外ステージも一体どこにあるのか見当もつかないくらいに、深いのである。途中で娘が「ここで走りたい」と言い出したので、四角く窪んだ芝地を律儀に四角く走る娘を待つ。この長い窪地は昔の滑走路なのだろうか。

準備中

野外ステージ入り口の長い階段を登って見下ろすと、大きなステージがすっぽりと私の視野に収まっていた。この気分の良さは何だろう。

出産後からもう長いこと、ライブなども観に行っていなかった。それは何の苦でも無いけれど、ステージや、観衆や、大音量の中に包まれ紛れる感覚が、懐かしく気持ちが高まる。

お店と入場に並ぶ人々

お店の準備の様子を少し離れた所から優しい顔で見守る人がいて、それはtonofon festivalの主催であるトクマルシューゴさんだった。比類ない活動、音楽フェス、とその在り方があまりにもエネルギーに満ちているから、もう少し猛々しいのかと思っていたら、静かな海みたいな感じの方だった。ああ、素敵だな、と思う。

お店はそんなに売れなかったけれど、友人たちの手伝いのおかげで楽しく終えることができた。
娘は、
「お店ってすごく楽しいじゃん、会社で働くよりやっぱり自分で仕事する方がいいじゃん」
と、親を心配させるような事を言う。いやいや、全然儲かってねーし、むしろ自分の人件費の分すら損してるからな。
だけど、こういう面倒くさくて儲からないことが結構楽しいんだ、やっぱり。
たくさんの人に会えて、コロナ時代が終わったんだな。マスクがない顔で息ができる久しぶりの夏が始まった。

7月12日水曜日

仕事机の上に、手紙とプレゼントが置いてあった。
娘が数週間前から計画して準備をしてくれた私の誕生日プレゼントだ。アマゾンで娘が選び、夫と一緒に買ってくれたのだ。本当にありがたい。とてもありがたいのに、私はすでにそれに慣れてしまって、特段の感動もないのだ。

私は自分を戒める。ひとりぼっちで何の予定もなく、一日誰とも話さずに普通に仕事をし、スーパーで少し高めの食材を買い、1人で食べて寝るだけの日を迎えていたかもしれない自分を思い出せ、と。

煩くて煩くて集中できない。部屋は片付けても散らかされ、毎日自分の事ではない雑事に追われる。せっかく作った夕飯もろくに食べないのに、もっと食べ物はないのかと聞かれ続ける。ああ、疲れる、ああ1人にして。

だけど本当に1人だったらどうだったかな、私はちゃんと1人に耐えられたんだろうか。

1人だったかもしれない日々と、今の日々を比べてみる。比べたところで何の意味もないのだけれど、でもやっぱりあの頃望んでいた毎日なのだ、これが、と腑に落ちる。

(もう自分のことだけを考えて生きるのは無理)
あの頃確かに毎日そう思っていた。

母から「誕生日おめでとう」が言ってもらえなくなって2回目の誕生日、娘が私の母の代わりになった。助かった、と思う。

4時間授業で早く帰宅した娘と、上野へマティス展を観に行った。

腕の長さや手の大きさのバランスの妙

絵って不思議だ。そのままを正しく写しとる、それも有りだけど、まるで違うフォルムと解釈で描くのも有りである。良い絵って何だろう、どうやって描けば良いんだろう。わからない、難しい。
でもマティスも、わからない、難しいって色々考え悩んでいたんだろうなぁ、と沢山のスケッチや習作で見てとれた。
絵って難しい。

7月24日 月曜日

ワークショップの依頼があった。今年は色んな依頼や打診が来る。すっかりまた、コロナ後の新しい時代がやってきたのだと実感する。

10月にワークショップをする『代官山ティーンズクリエイティブ』に打ち合わせに行った。渋谷区が運営する、渋谷区に在学在勤の10代をメインにした、学童に近い役割だけど、もっと自由な場所である。

入り口廃材を利用したアート作品が楽しい

広い空間の中で小学生、中学生がアクティビティに興じ、OBの20歳前後の男の子たちも遊びに来ている。ピアノを弾く子、Ipadで何かをしている子、絵を描く子、様々である。

外は蒸し暑く、少し歩いても立ち止まっても汗が噴き出る酷暑なのに、そこは開いた窓から入る風が爽やかなのだ。清々しい。

こんな場所が私にもあったらよかったのにな、と思った。

家にはまだ帰りたくない。

そんな日が沢山あった。でも私には行く場所なんて一つもなかった。
私が10代の頃にこんな場所があったら、私の性格もまっすぐ健やかになって、人生も淀みがないものになったんじゃなかろうか、とすら思えてくる。

この素敵な場所で、10月にワークショップをやります。
行くのが楽しみだ。

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