【小説】秘密
その家には祠があった。
今時、壊してもいいいいのだが、
そこは祠、誰も言い出せなかった。
「ゆりちゃん、遊ぼう。」
声が聞こえる。
「はーい、かくれんぼ、隠れるよ。」
家が仕事場も兼ねているその家には、
何時も、数人、仕事に訪れていて、
大人たちは、声を聴いて、
子供の無事を確かめていた。
声が聞こえなくなると、途端に探し出すのが常だった。
大人たちが仕事中に気を付けていることを、
尻目に、子供たちは自由に遊びまわっていた。
子供というものは概して、
大人の駄目をするのが大好きだ。
「遠くに行っちゃだめよ。」
「祠の周りで遊んじゃ駄目よ。」
両方が子供たちのしたい事リストに入っていた。
「ねっねっ、山へ行かない。」
ゆりが言う。
「でも、山まで30分位かかるよ。」
怖がり屋の咲が続ける。
「怖がりだねー。」
「暗くなるからでしょ。」
しげが返す。
「違うよ、ご飯までに帰ってこれないよ。」
ふくれっ面で咲が言う。
子供はちょっとの事でも馬鹿にされたと感じる。
咲も同じ、
怖がり扱いは不本意極まりない。
「でも、行って帰るだけなら、1時間掛からないよ。」
「止めておこうよ。」
「それよりここで遊ぼう。」
ゆりが指さした先は祠だった。
「そこは、遊ぶとこじゃないんだよ。」
咲が答える。
「咲ちゃんの怖がり。」
こればかりは、怖がりと言われても、
言い返さず。
「大人だけじゃなく、神様にも怒られるんだよ。」
真剣な眼差しで訴える。
「大丈夫、小さい祠、有ったって。」
「それに、神様は、子供には何にもしないんだよ。」
「あたしは止めとく。」
咲はそれだけは譲れないように言った。
「しげは如何する?」
「しげも怖いの?」
遊ぶ。
2人して祠の周りや、中で鬼ごっこや隠れん坊で遊んだ。
その日の夜。
咲が寝る時間、電話がかかってきた。
ゆりだった。
「ママが帰ってこないの。」
大泣きしている。
「ゆりちゃんのパパは?」
「今、ママ探しに行ってる。」
「うちにおいでよ。手紙書いてさ。」
「うん、行く。」
泣きながら、ゆりは咲の家に来た。
「今日は一緒に寝ていいでしょ。」
親に言うと、2人は、
くっつきあいながら、眠った。
次の朝。
両親が、神妙な顔で、ゆりを見た。
そして、こう切り出した。
「ゆりちゃん、ママはもう帰ってこないよ、
ママ死んじゃったの。」
「えっ。」
「今朝ね、山から車が落ちているのが見つかったの。」
「それにゆりちゃんのママとしげ君のパパが乗ってたの。」
言い含めるように話した。
「わー。」
ゆりは大声で泣いた。
祠の事を大人たちは知らない。
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