その日(3)
院長先生が来てくださった
ドラマで何度もみたシーン
9時14分、死亡確認いたしました
いいお顔ですね、といってくださったので
とても気が楽になった
死亡診断書、帰ったらすぐに書きますから
病院に取りに来てください、と
お帰りになった
先生が帰られてから看護師さんと
もう一度母のおむつを取り替えた
さっきかえたばかりなのに
なにかまたいろいろ
たくさん分泌物が出ていた
きれいにふき取っても
またでてくるらしい
死亡宣告していただいたのに
まだからだがあたたかくて
お世話してると
おなかの音が聞こえた
看護師さんに伝えたら
にんげんのからだってふしぎでしょ
死んでからもまだ
からだのなかは動いていて
これからまだまだいっぱい
でてくるんですよ、と。
お世話終わって看護師さんがかえられるとき
また改めてお礼に伺いますともうしあげて
あと
母のために買い込んでいた
いろいろ
医療系の消耗品
喀痰吸引のチューブや
経鼻経管の栄養食
そのチューブを
止めておくための専用テープ
いずれも少数ではかえなくて
高価だったけど
うちにおいてても
捨てるだけなので
持って帰っていただいた
つづく
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