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Furui Rihoの「ピンクの髪」と大黒摩季の「あなただけ見つめてる」と、その間の30年

わたしが子どものとき、大人たちが聴いている大黒摩季の迫力ある声が好きだった。でも、『あなただけ見つめてる』の歌詞を知ったとき、子供心にぞっとしてしまった。

「あなたがそう望むから 化粧をまずやめたわ」
「どこにいても捕まるように ポケベル持ったわ」
「髪も服も目立たなく お料理も頑張るから」

ハスキーでかっこよい声から紡ぎ出されるゾッとする言葉の数々におののく。結末は「あなただけ見つめてる そして他に誰もいなくなった」である。夢のハイテンションー!じゃないんだよ。怖いけれど、曲調や声は素敵すぎて忘れられない。

これは決して大黒摩季をディスりたいわけじゃなくて(むしろ好き。あの歌唱力やばない…!)、社会がひとりの女性に与えていた影響について、考えこんでしまうのである。


そして令和。
子どもだったわたしは37歳になる。

なんと自分の子が中学生になり、時々ライブハウスに一緒に行くようになった。5/5のこどもの日は、Furui Rihoのワンマンに行ってきた。

Furui Rihoは、ゴスペル出身のシンガーソングライター。伸びのある声、リズムも音の疾走感も、とにかくいい。でもなにより、ライブ中の彼女はすごく楽しそうだ。去年の12月にワンマンライブに行ったときは、妹の「まーちゃん」も出演しハモっていて、ふたりともニコニコしていて、そりゃあもう、よかった。(チケ代上げてもいいので、まーちゃんの再出演を切に希望…)

 

彼女が歌うのは、自分を愛したいということ。そのうえで、誰かを愛したいということ。色んな曲があるのでこのテーマだけじゃないけど、全体を通して「愛そう」とする気持ちが伝わる。


「君が嫌いなピンクの髪色 これだけ言うわ Sorry but I love my hair! きつく縛った嘘をほどいたら これだけ言うわ Sorry but I love my hair!」

「顔色うかがって 毎日を過ごしてた 君が笑えば それが正解になった そうやって自分を着飾れば着飾るほど 体は重くなって 気づけば歩けなくなった」 

「調子のいい言葉で 踏みつけてくるの当たり前みたいに土足でなぜ  ていうかあなた誰?」

「正解なんて勝手に決めないでちょうだい 嫌ならほっといて 素直になりたいだけ あなたの答え合わせ要らない 自分で丸つけてあげたい」

ライブを終え、顔を上気させながら感想を語る中学生の横顔を見て、この曲を聴いて育つ世代でよかった、と思う。

Furui Rihoさんがこの歌詞を綴れるのは、きっと本人だけの力じゃなくて、周囲が彼女をひとりの人間として大切にしてきたからで、そしてきっとそれを彼女がよく知っているんだろうなと感じる。

Furui Riho が20年早く生まれてたら「髪も服も目立たなく」と歌ってたかもしれないし、大黒摩季が20年遅く生まれてたら「Sorry but I love my hair!」と歌ってたかもしれない。

社会は良くなっていないように見えて、少しだけ前に進んでいるのかもしれない。


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