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バイクツーリング 〜静岡 富士山〜 その3



東名が左右に分かれる。

はずなのに、左側は封鎖されていた。


本当はここで空いて車速が上がるのに。


みんな右側に来るので、一気に混み合ってきた。

片側2車線で走りにくい。


仕方なく、右車線を車について走った。



山間部に入る。

上りながら、カーブが続く。
好きな区間だ。

ワクワクしてきた。


前の軽が、右車線でがんばっている。

でも、力が足りないのか、いまいちスピードが出ない。


どうしようかな。


そう思っていたら、左車線によけてくれた。


ありがとう。



右車線をぐんぐん走る。

楽しい!


赤い橋を渡った。

目の前はトンネルだ。


トンネルの周りに、濃い緑。
山の稜線からのぞく白い雲。
白い雲に乗っかるように、真っ青な空。


あっ!わたしの夏の三原色!!


イシノアサミさんがみんなに聞いていた、夏の三原色が目の前にくっきりと見えている。


これ!これだよ!!


これだって色が見つかって、嬉しくなってくる。


連続するコーナーと夏の三原色で、さっきまでの灰色な景色や晴れなかった心は、もやが消えるように知らぬ間に消え去っていた。



コーナーが来るとワクワクする。


前の白い車がなかなか速い。
いいスピードでコーナーに進入する。


後について走る。


せっかくだから、120km/hでコーナーに進入したいな。


変な目標を立てる。
(これは、ツーリングあるあるなのか。)


112km/h

115km/h


コーナーに入る瞬間、少しスピードが落ちるので、120km/hのまま進入できない。


悔しい!!


そう思いながら、この辺りは紅葉が綺麗なところだったよなと周りを見る。

でも、あまり色付いていない。


今年は遅いのかな?


赤、黄、茶、緑・・・

いつもは、目を見張るほどの色鮮やかな山肌が続くのに、季節はまだ夏が残っているようだった。



少し路面に濡れたような痕がある。


気をつけないと。


この辺りの道路のつなぎ目は、金属部分が大きく滑りそう。

白線のペイントもはっきり太く、やはり滑りそうで、踏んで車線を移るのも緊張する。


路面に気をつけて・・・

でも、白い車と一緒に走るのは楽しかった。



左側の道路と合流するあたりで、白い車との間に大型バスが入ってきた。


白い車さん、ありがとう。
楽しかった。とっても。


急に広がった車線の左から2本目の車線を走りながら、そろそろ御殿場出口だなぁと思い、時計を見た。


よし。ピッタリ30分!


タイムトライアルは成功だ!!

満足しながら、ふと右を見た。



ん?


え?


あれ?



三度見くらいしたと思う。

いや。5回くらい見直したかもしれない。





富士山がいた。




雲ひとつない真っ黒な富士山が、「ずっとここにいたよ。」って顔をして、いた。



あれ?

いつから見えてたんだろう。


さっき走ってきた紅葉が綺麗な山あいからも、富士山は見えるのに。



白い車と遊ぶのに夢中になり過ぎて、気づかなかった?

120km/hでコーナーに入るのに、夢中になり過ぎた?


放心状態とは、こういうことを言うのか。


バイクに乗って走っていることを忘れてしまうくらいビックリして、動揺しながら「あれ?いつから?」ってことがずっと頭の中をぐるぐるして、最後、何も考えられなくなった。



出口出口。
降りないと。


間違えずに第1出入口に向かう。


見える限りは富士山の方を向いて、姿を確認する。(つまり、ほとんどわき見運転)


出口でお金を払う。

出た先でお釣りをしまう。


今思えば、そこで富士山の写真を撮ればいいのに、思いつかず発進してしまう。


すぐの信号で止まり、右折。

ようやく富士山を正面にして走り出す。
方角はそうだが、意外に見えない。


陸橋を渡る。


いた!!


雄大な富士山が裾野まで姿を見せている。


あぁ。停まって写真を撮りたい!!


陸橋の上はさすがに危ない感じがして、停まれなかった。



次のポイント。どこなら撮れる?


いい場所が見つからない。


少し走った先に、コンビニがあった。

そこにバイクを停めて、ヘルメットを取るのもそこそこに、スマホを出した。

目の前の建物がじゃまで上手く撮れない。

ヘルメットを被り、もう少し先までバイクを走らせた。



ここならどう?


バイクを路肩に停め、ヘルメットを被ったまま、道路を渡る。

周りから見ると、かなり怪しいと思う。

そんなことはかまってられないほど、夢中で写真を撮った。



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ようやく撮れた。

「ようこそ。」と言ってくれている富士山。


あんなにあった雲はどこに行ってしまったのか。

東側だけ湧いていたのかな?


そんなことはいっか。



逢えた。逢えた。

富士山に逢えた!


そのことが、ただ嬉しかった。






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