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風になった気がした


朝日が見えたら行こう。


そう決めて、準備して寝た昨日。
今、思えば昨日行けば良かったんだけど。

色々やることがあって、気になって走りに集中できそうになかったから止めといた。

そのことをちょっぴり後悔してた。


だから、リベンジ。

そう。
明日、まだお日さまが見えるなら行こう。




朝、目が覚めたら
東の窓から朝日が差し込んで
壁がオレンジ色に光ってた。

あっ!曇ってない。
まだ、お日さまがいる!!


勇気を出して準備をする。

少し遅くなっちゃった。
寝坊したかな。

いつもはもっと早く起きるのに。



あっ!今日は学校の日。
お弁当作らなきゃ!!

えっと… 今から作ったら
道路がどんどん混んじゃうよね。

ええい!
先に走りにいってしまおう。



家を出る。

ピースが珍しく小屋から出てくる。


呼ばれると困るな。
頭だけ撫でておいた。

もう一度、手を舐められて…
静かにね!っと願いながら先を急いだ。




空気が涼しい。

寒いかなと思って
ハイネックの長袖を中に着てきた。

走ってる途中、寒くなると困るから。

そのくらい、外は涼しかった。



秋の空気。

サラッと乾いた空気。
人肌より低い温度。

なぜか長野を思い出す。


バイクを用意し
周りに見つからないように
こっそりと出発する。


乾いた空気が秋風に変わる。

首元、ハイネックの隙間に
ひんやりした風を感じる。


秋だ。

季節が変わっていく。


ジーンズにも風が通っていく。
身体全体で秋を感じる。


バイクじゃないと感じられない
この感覚。

季節が移ろっていくことを
五感全てで感じている。

皮膚が一番感じているのかな。
だから全身で感じられるのかな。


心地よい風に吹かれながら
つかの間の秋を感じて走った。




今日は記念の日。

走行距離が1,000kmになる日。


1,000kmになったら止まって
記念の写真を撮ろう!

オドメーターを見ながら走る。


エンジンもあったまって
そろそろ回しても大丈夫。

1,000kmまだかな?


だんだん近づく。

998. 999. ……


あれ? もしかしてそんなこと・・・



1,000!



1,000になった瞬間
事故現場を通過していた。




こんなことってある?


すぐにバイクを路肩に停めた。


オドメーターの写真を撮る。

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数字が変わった時
ちょうどぶつかった辺りを通った。

10ヶ月前に
事故に遭った場所。


10ヶ月経って
今またバイクに乗っている。


あの時

「もう乗ることはできないかもしれない。」

と覚悟したあの場所を
10ヶ月後、1,000km共に走った
このバイクと通り過ぎた。



10ヶ月後にこんな未来があるなんて
あの時は想像もできなかった。


生きていれば。
辛抱していれば。

こんな未来だってあるんだなぁ。




青空サコッシュからスマホを出して
久しぶりに録音することにした。



どうかな?

前とエンジン音は変わっているかな?


エンジンは前より回るようになった気がする。
吹け上がりもスムーズだ。

10,000回転まですぐに回してみる。

(2:54あたり)

グッとトルクある加速をしながら
風のように疾走した。


車が多い。

少し、出るのが遅かったから。


娘の弁当が間に合わない。
そこそこ飛ばして走る。


目の前が開いた!

アクセルを開ける。
タコメーターの数字が上がる。

10,000、11,000回転。
REVインジケーターがついた。

12,000回転、13,000回転。
12,000でインジケーターは点滅し始めた。


あと、もう少し!!


14,000回転!!!!!

(7:30から8:43まで)



2速、100km/h!?

2速で時速100kmなら
時速200kmも出せそう。

サーキット行きたいなぁ。


減速しながら信号で止まった。



お弁当が!

急ぎたい一心で路肩走行をする。
怖さより先を急ぎたい気持ちが勝った。

路肩が怖かったのが、昔のことのよう。

なんだか色々ふっきれてきた。笑




先頭を走る。
カーブにオーバースピードで入ってみた。

Gを感じられるかな?
遠心力を感じてみたかったけど…

タイヤが気になって
アクセルをあまり開けられなかった。


タイヤの端の方は
まだ皮むきできてないから怖い。

寒いとマンホール1つずつが
滑りそうで怖い。

まだ霜なんて降りてないのにね。



少し前が空いている。

お日さまを見てみた。
横で一緒についてきている。

富士山もうっすら見えた。


そしてまた

『風速0m』の文字。


今日の秋風もわたしが作ってるんだね。


そっとふれては離れていくような
心地よい涼風。

風もいつもとは違う距離感で
ふわっと通り過ぎていく。


お日さまがのぞき込んできた。
向きが変わったんだな。

お日さまと目を合わせる。

ついてきてくれて、ありがとう。




久しぶりのバイク。

痛めた腰を庇うために
全くホールドできない。

ニーグリップができない。
(タンクを太ももで挟むこと)

身体を支えるのは左手だけ。


久しぶりだと目も慣れない。

緊張し過ぎて
ステップに乗せる足が震えてきた。


そうだ。
深呼吸しよう。

大きく息を吸う。

背筋を伸ばす。
前を見る。

少し身体の力が抜けた。


周りが見えているようで
良く見えていない気がする。

力を抜こう。

そして、車の流れについた。




もうすぐ、折り返し地点。

最後にもう一度、14,000回転まで回してみた。

(17:55から)


そのまま帰った方がいいくらいの時間だけど
録音を止めたいから停まる。


一瞬、ヘルメットを脱ぐ。

水筒をひと口。
バイクの写真も少し。

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さて、帰らなきゃ!

すぐに、またヘルメットを被る。


こっちが青だから…
急いで出発する。

帰りはリラックスして走ろう。


ニーグリップができるようになってきた。
突っ張っていた左手を緩められる。

身体全体の力が抜ける。
バイクが身体にフィットしてきた。



信号で隣に並んだ大型スクーターが
青になる直前に飛び出して行った。

追いかけようと思ったけど
けっこう速くて止めておいた。


風はまだ涼しさを保ち
ひんやりと心地よい。

雲は多めだが
空はまだ青空を残している。



そんな帰り道。

走りながら加速した瞬間
ふわっと感じていた風が消えた。


風と同じ方向に走っている。


風になったみたい!



そっか。

風と同じ方向、同じ速さで走ると
風と一緒になれるんだ。


不思議な感覚。

風が優しく包み込んでくれたから
感じられたみたい。

秋風って優しいんだね。




今日を境に、また夏に戻る。

次にこの空気におおわれた時、

わたしは秋を探しに
少し遠出をしているのかな?



ひと月先の自分を想像する。

手術をしたら冬に近づいているだろう。


ヘルメットの口元には
冷たい空気が潜んでくるだろうか。

シールドは吐く息で
白く曇るようになるんだろうか。

グローブの中の両手は
かじかんで冷たいんだろうか。



ひと月後にタイムスリップしたような今日。

走っておいて良かった。




時間までに帰ってきた。

なんとか弁当は間に合いそう!


娘が起きてない💦

ピースが「さんぽ〜!」って鳴いてる。
その声で娘が起きた。

ピース、ないす👍



家の中は暑い。
夏はまだ過ぎ去っていない。


どんどん雲が広がってきた。

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雨が降ってきた!



今日、走りに行っておいて

本当に良かった (*^^*)




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