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バイクツーリング 〜静岡 富士山〜 その15


形の変わってしまった国道。


わたしの好きなカーブでは
なくなってしまった国道を走る。

細かくはないけど
高速ではある。


高速コーナー、好きだったよね。


走りながら、自分に問う。


そうだった。好きだった。


なら、この新しい道も
きっと好きになるよ。


そう、自分をなぐさめる。



そう思っている間にも
車は次々と現れる。

さっき、楽しく走っていたらなぁ。

あんなに暗い面持ちで
こんなにいい道を走っていたなんて。

あんなに、誰もいなかったのに。


車に出会うか出会わないかは
偶然の産物だ。

いつも、車がいない。
そんな道を探すのは難しい。

ここも、そんなに
車が通る道ではない気がするけど…

それにしても
帰りは、車がぽつぽつと続いていた。


ススキを道路脇に感じながら
もうすぐ左に曲がることを知る。


ここだ。


左に曲がるともうすぐだ。
行きに、曲がりそこねた交差点。


こどもの国まで来た。
信号を過ぎる。


こどもの国の終わりにあるはず。


バイクに乗る前に
確認しておいた地図を
頭の中に浮かべて走る。


ここかな?


杉林が続く直線の中。
1箇所だけ道があり、林が開いている。

対向車線に
白い車線を引いた路肩がある。


ここだ!


左に曲がると
パイロンがあった。


通ることはできるみたい。


《先には進めない》
という意味合いの看板は
名残のように残っていた。


「どうする?」

と自分に聞く間もなく
アクセルを開けていた。


どこまで行けるのかな?


好奇心の方が勝ったのだ。



道は徐々に上っていく。
ゴルフ場の前を過ぎる。


ここまでは
入って来られないと
ゴルフする人が困るからね。


そう思いながら
前を通過して、先に進む。


静かだな。


人っ子ひとりいない。
(当たり前か)

生き物の気配もない。
しんと静まりかえっている。


心が凪いでいく。

さっきまでの
急いでいた気持ちも
心細かった思いも

何もかもが
しんとした空気の中
整えられていく。


少し寂しい感じもするけど

この世界に
たった一人いるような

そんな静けさ。


時間帯のせいなんだろうか。

それとも
ここ独特の雰囲気なのかな。


入っちゃいけないところを
走っているせいか

あまりに静かなこの道を
どう表現したらいいのか
わからない気持ちに包まれる。


道は一本道。

走り抜けると
道端のススキが揺れる。

軽くアップダウンする。
カーブも、たまに右左と。


遠くに来たような
知らない高原を走っているような
そんな気分になる。


そう思っていたら
目の前にバリケードが現れた。


どうする?


わたしの前は封鎖されてるけど
対向車線は開いていた。


バイクの速度を落とす。

一旦停まったのかな?
そこは、覚えていない。

右に作業中の人が数人いた。

目が合う。


何か声をかけられないうちに・・・


気づくと
アクセルを開けていた。


対向車線に入って
バリケードを突破する。

後ろから
声が聞こえたかどうかは
わからない。


軽トラもあったから…
ホントに危険だったら
追いかけてくるだろう。


後ろのことは忘れて
前に意識を集中する。

ここから先は
何があるかわからない。


通れない理由。

それは、おそらく
この先が被害にあっているから。

多分、一昨年の台風で。


五合目の入り口。

バリケード先の道と
この道はつながっている。

五合目前の道が
被害にあっているのか

今、走っている道が
どこか崩れているのか。


崩れているとしたら
カーブを曲がった先が
突然崩れているかもしれない。

路面にヒビが入っているかもしれない。


バリケードを突破した後は
その先で何があっても
自分で避けなければならない。


そう思うと
アクセルの手も緩み

前をよく見ながら
ゆっくり走った。


静けさが
さらに増す。

荒涼とした感じすらする。


カーブの先の地面に
泥水が流れたような跡があった。

滑らないよう
気をつけて通る。

次は
ひび割れているかもしれない。

緊張しながら進む。


アップダウン。
右カーブ左カーブ。


カーブを過ぎると・・・



バリケードがあった。


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んー。
端までバリケードで封鎖されてる。
もう、無理かな。


バイクを停める。
ヘルメットを脱ぐ。


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鳥の声に包まれる。


辺りを見渡す。
人の気配はない。


前方を見つめる。


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もうすぐだと思うんだけど。


オドメーターだと
(走行距離がわかる計器)
そろそろ着くはずなんだけど。




仕方ないか。
また来る理由ができたことにしよう。


深呼吸する。

おやつを食べて帰ろう。



おやつの前に・・・
みんなに声を届けてみた。







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