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富士五湖ツーリング その7


お昼を食べたせいか
バイクを走らせていても眠くなり
本栖湖で仮眠を取っている。

早く進まないと
この先、まだまだあるのに。


元々ぼんやりした頭で走っているので
時間の感覚が鈍くなっている。

元気がないと急げないって意味
わかるかな?

急ぐために早く動くことにも
パワーが必要ってこと。

今日のわたしは
もう急ぐための力は残ってない。

疲れたら休んで体を癒して
また次の走行に備えるだけだ。


路肩のコンクリに座って
少し仮眠を取ったら
元気がちょっぴり戻ってきた。

これなら走れそう。

せっかくなので
湖を一周して次へ進もう。

立ち上がり、バイクの前に立つ。

公衆トイレがあるけれど
行かなくても大丈夫かな。

ヘルメットをかぶったら
重さが少し気になった。

体もなんだか重い。

でも、またがってしまえば
具合が悪くたって移動はできるから。

バイクをバックさせる時に
ふらっと倒してしまわないように
またがってから、足で踏ん張ってバックした。


駐車場を出て右に進む。

本栖湖を右に見ながら
時計回りに一周するつもり。

道がすぐに狭くなった。
狭いだけじゃなくて路面がひどい。

割れ、でこぼこ、落ち葉、砂。
あまり、車は通っていないらしい。

湖沿いなのに
右手の木々に阻まれて湖が見えない。

せめて、湖がよく見えたらなぁ。

森の中を抜けるような暗い道。
人気のない林道のようなのに
時折、対向車が来て、すれ違いに苦労する。

この道は整備し直した方がいいな。

榛名湖を思い出す。

木々がまばらで湖が折々に見える。
湖の先に榛名山。美しい。

本栖湖は手のような形をしているようだ。
入り組んでいて
右に左に道が細かくカーブする。

湖が突然、木の間から見えた。
青く緑がかっていて、とてもきれいだ。

富士五湖のどこが
一番透明度があるんだっけ?

「本栖湖なのかもな」と思うほど
その色は澄んで美しく、心に残った。


富士山に対して、対岸になるあたりに来た。
ここからは湖面の先に、富士山が見えるはず。

あっ!見えてきた。

ようやく林が切れて
周りが見渡せるポイントに来た。

次はいつ見えるかわからないので
ここで写真を撮ろう。

左ウィンカーを出し、バイクを路肩に停めて
ヘルメットをかぶったまま、写真を撮る。

手前の山すそは今通ってきた道

撮った後、この先もっと
姿を見せるんじゃないかな?

その閃きは予想通りだった。

すぐに発進したら
富士山はぐんぐんその姿を見せてきて
「なんだ。もう少し先で撮ればよかった」
と思った。


どこで停まって写真を撮るか?
けっこう頭を使う。

この先にもっといい場所が…
と思って通り過ぎると
大抵、さっきの場所が一番良かったりする。

でも、停まって写真を撮って
出発したら、もっといい所が出てきたりする。

だから、何度も通い詰めて
一番いいポイントを見つけるんだろう。

写真ってそういうとこ、ある。

湖周道路は終盤道幅が広くなり
周りの木も少なくなった。

少し開けて、周りに宿らしきものも出てきて
人もいるようになった。

最後にぐっと上ったところに
展望台があり、人と車があふれていた。

R300との合流地点。
ここに停まる気にはなれなかった。

間違っていなければ
この先にいいポイントがあるから。

身延の帰りに停まった場所。

トンネルの先だったから
ここから先にあるはずだ。

R300に合流する。

路面の良くなった道をカーブに沿って走る。
左カーブを曲がって直線になる。

ここだ!

そのポイントに来たとわかった。

一度しか通っていない道でも
印象が強いとわかるんだな。

正確には2回通っているのだが
こっち方面に向かって走るのは2回目。

身延の時と同じ路肩にバイクを停める。

今度は、おじさまはいないので、笑
(前回、おじさまが目の前で写真を撮っていた)
バイクから降りて道路を渡る。

今日はよく見えている。よかった。

今回は裾野まで見えた

富士山と本栖湖を写真におさめ
じっと見つめた後、またバイクに戻った。


少し進むと、最初に曲がった道が見えてきた。
これで一周したことになる。

本栖湖の外周路は、道が悪いな。

記憶に留めながら通り過ぎ
ほうとうの看板を横目に先の信号で左折した。

R139に戻る。さっきとは反対方向へ。

次は精進湖。
この湖だけは知らなかった。

小さい湖のようだ。他と知名度が違う。
県道706で左折したい。

ちゃんと交差点がわかるだろうか。

車について国道を走る。

曲がり角が気になって
周りの景色を楽しめない。

割とすぐ来るはずの交差点を
一生懸命見つけようとする。

曲がらないと
精進湖を通り過ぎてしまうから。

先を必死に見ていたら、あった!
看板に『精進湖』と書いてある。

よかった。

心からホッとする。

左折専用路に入り
精進湖へと向かった。


道が広い。

緩やかに下りながら
少しカーブした道を降りていく。

左は山だ。
谷間に水がたまっているイメージか。

すぐ見えてきた湖は
なんと湖底が見えていた。

水がない?

仕掛けのような金属が
湖の底とともに見えている。

水がない湖。

不安がよぎりながら
そんなことはすぐに頭から消えてしまった。

道がいい。

路面が新しく、割れ目がない。
カーブが緩やかで、形がきれいだ。

蛇の背のようなカーブを
右左と走り抜けたら湖畔に出た。

よかった。ここには水がある。

左は旅館とその背後に山。
右は開けて湖面が広がっている。

くるりと山に囲まれたような地形。

ぐるっと周回していけば
どこか方角的に富士山と湖が
一直線に並ぶポイントがあるだろう。

今は富士山は背中側にあるはずだと
地図を思い出しながら
右手の湖の先に山が分かれて
富士山の見えるポイントをイメージして走る。

山が分かれた。

見えた!

展望のよい所には
ちゃんと旅館が立つんだな。

感心しながら
山田屋ホテルの玄関脇にそっと駐車する。

怒られないだろうか。

そう思っていたら、一台のバイクが
目の前に停まった。

『考えることは同じですね』

停まったバイクの持ち主は
振り向きながら笑って、わたしに話しかけた。

そうか。この人も
写真を撮ろうとしているのか。

すぐに言っている意味がわかって
ニコッと笑顔でうなずいてみた。

道路を渡って湖畔沿いに行く。
富士山と精進湖を撮った。

真ん中に山が重なっている

ここは、いいところだな。また来たい。

人が少なく、隠れ家的な地形がいい。
何より、道がいい。

お気に入りの場所を見つけた気がして
嬉しくなってしまった。

しばらく富士山を見つめていたのだろうか。

後から来たバイクの人は
もう自分のバイクに戻っていた。

カバンから飲み物を出して
水分補給をしている。

わたしも飲まなければと思いながら
真似をするようで恥ずかしい。

先を急ごう。次で飲めばいい。

先にエンジンをかけて
会釈をして、その場を離れた。


その後、しばらく富士山が見え隠れした。

見えるポイントに別のバイクが
停まって写真を撮っていた。

みんな1人だ。
ソロツーリングの楽しみの一つは
写真を撮ることなのかもしれない。

新たな発見をしたようで
素敵な場所、素敵な道を走りながら
いっとき疲れを忘れて走りを楽しんだ。


県道706からR358へ。

河口湖だったかで見たような交差点。
国道を潜って向こう側に行き
国道の対向車線へ入る。

スマホで変則的な交差点だなと思っていたから
目の前の一瞬迷うような道でも
スムーズに合流できた。

これを左に行くと、どこに行くんだろう。

山の奥深く入っていくような
帰って来られないような
そんな気持ちを振り切るように
山を背に、元来た道へと戻る。

陽が傾いてきている。

物悲しさを感じているのは
陽射しが薄れてきているからか。

あんなに暑かった時間は過ぎ
夕刻へと近づく時間。

おうちへ帰りなさいと
お日さまが教えてくれている。

山の陽の当たらない部分が暗く
夜の始まりを告げているようで

一日が終わろうとしている。

そう感じた。


R139に出る。
これで精進湖を一周したことになる。

左折し、次の湖へ。
ここで、気になっていることがあった。

朝からガソリンを入れていない。

全部で200kmくらいだから
一日走っても大丈夫と思っていたが
もう200kmをゆうに超えている。

そもそも白糸で120kmだから
200kmは超えるに決まってたんだ。

ガソリンのフューエルメーターが
残りあとひとメモリになっていた。

本栖湖を離れる時から気になっていたんだけど
山の中すぎて、スタンドがある気がしない。

とりあえず、先に進もうと走ってきたが
この先も山の中だろう。

どうする?
どこにスタンドがあるんだろう。


国道を走り始めたら
すぐにスタンドが見えた。

昔からあるスタンドのようで
とてもひなびている。

ここのガソリンって大丈夫なの?

うっかりつまらないことを考えた瞬間
スタンドを通り過ぎてしまった。

こんなところにあるんだから
またすぐ次のスタンドがあるって。

自分に言い聞かせながら
次の湖に向かう。

でも、こんな山の中。
本当にスタンドがまたあるんだろうか。


次は西湖。
信号のなさそうな交差点で
県道21に入れるのか?

このあたりから
ガソリンの残量と知らない道を
間違えないように気をつけるのに必死で
あまり周りの景色を覚えていない。

不安が募ると、肩がうずく。
タンクにまた左腕を乗せる。

片手運転をしながらなるべく先を見る。

スタンドと青い看板を見つけようと
前方を凝視しながら走った。


ガソリンはいつ入れられるのか。





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