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富士五湖ツーリング その1


朝、寒くて目が覚めた。
気温が下がっている。

昨夕降った雨で濡れた路面は
乾いてないんだろうな。

4:30に起きて
しっかりと防寒対策をして
家を出た。


雲ひとつない空。

東の空

行ってくるねと犬のピースに挨拶。

夏の身延以来だね。

久しぶりのバイクを出しながら
心の中で声をかける。

路面はところどころ濡れている感じ。
空の色が一番きれいな頃に出発した。


頬をなでる空気が冷たい。

ジャケットを通して冷気が感じられる。
上着が少なかったかな?

秋真っ盛りだ。

なんなら冬に
足を突っ込んでるかもしれない。

2週間前は
暑い中、みんなであの坂を登っていたのに。


高架に上がる。

西を向いて走り出すと
目の前の地平線近くは淡い桃色。

バックミラーをのぞくと
東の地平線近くは淡い橙色。

色が違うことに気づいた。

そこから上に上がると色が薄くなり
一旦、白色を経て
灰色、水色へと青みを増す。

東の空も同じ。

そして、天空で同じ青になり
空がつながる。


バックミラーが光り始めた。
東の地平線は金色の海のよう。

タプンとした海のようだ。
液体のような光り輝くまぶしいもの。

バックミラーに光が差し込んだ。
日の出だ!

バックミラーの中が光り輝く。

朝日を探す。
カーブでお日さまの位置が変わる。

見えた!

金色に光る建物と
西の地平線の淡い桃色を見ながら
バックミラーのお日さまに
おはようと挨拶をした。


今日は雲がない。

空が透き通りすぎていて
宇宙に手が届きそうだ。

薄い水色の空の下、バイクを走らせる。
風はなく、切り裂く大気の重みだけ。

風を作っているんだな。

バイクに乗っていると体感できること。
自分で風を作り、感じられること。

これってバイクの特権なんじゃないかな。

風を起こし、その中に身を置く。

前から後ろへ押された圧で
空気を切り裂いていることを実感する。

そのおしくらまんじゅうが楽しいんだよな。

風とたわむれているようで
風のない日の空気と遊ぶのはいいな。

そう思った。


横浜町田インターに入る時
ひょっこり顔を出している富士山と
目が合った。

あれ?こんなところからも見えるの?

初めて知った富士山ポイント。
こんな遠くから挨拶してくれている。

今日はいっぱい会えそうだね。

心の中で声をかけて高速に乗った。


月曜日の朝。
通勤には少し早い時間だけど
車はそれなりにいる。

出かける人か仕事に行く人か。
混んではいない。

手の調子が良くて
そのまま走ろうかなと一瞬思ったけど
やっぱり海老名で停まることにした。

海老名からも富士山見えるんだ。

おはよう 富士山

富士山を見ながら持ってきたパンを食べる。
少しのんびりする。

今日は周りがあまり気にならないな。

いつもは周りが気になってしまうのに
他のバイクが停まっていても気にならない。

行こう。

気が済んだので立ち上がる。
次は高速区間だ。


日がのぼると、空は均一の青になる。
背中から当たる陽の光が暖かい。

風はなく、切り裂く空気に押されるだけ。

時速100kmくらいのおしくらまんじゅうが
一番心地よい。

そこここで富士山が見える。
何キロポストか覚えていられない。

ここだよ!ほら。ここだよー

富士山が茶目っ気のある顔をして
色んなところから顔を出してくる。

それが楽しくて、ついのんびり走ってしまう。

大井松田の先の絶景ポイントでは、
富士山の手前の山の緑が圧倒的過ぎた。

富士山が薄く白いベールに包まれた
平たいもののように存在感がなかったのが
面白かった。

早くくっきり見える富士山を見たい。

近づきたい気持ちがムクムクと湧いた。


二手に分かれるルートでは
左ルートが閉鎖されていて
みんなごっちゃりと右ルートに入ってきた。

いつものワインディングコース。

サーキットを走れないわたしにとって
楽しみにしている高速コーナーが連続する区間。

富士山を見ていたらのんびりモードになり
車の後ろについてゆっくり走っていたけれど

一旦詰まり、空いたタイミングで
前に出て、加速した。

前の車も解き放たれたように加速する。
ついていくことにした。


ずっと工事している赤い橋の横を抜け
トンネルを過ぎると、そこには紅葉…
のはずだったのに、まだ早いようだ。

夏とは異なり
少し色づいている葉もあるが
全体が赤黄緑で賑やかになるには
もう少しかかりそう。


ここからは、大好きな道。

周りを眺めるのはやめて
路面に集中することにした。


路面は乾いているようで
濡れた跡はない。

白線は滑るので、基本走らない。
金属部分も滑るので、見極めて避ける。

高速道路のカーブは緩い。
路面に落ち葉もない。

安心してスピードを上げられる。

前に同じスピードで
走る車がいることを確かめて
加速する。

高速コーナーは
遠心力と遊べるところが楽しい。

スピードを上げると遠心力が増す。
時速120kmくらいで感じる遠心力が好き。

少しドキドキするスピード。

バイクが色んな力の合力で
安定する感覚が好き。

サーキットで走りたいなぁ。

懐かしいあの感覚を思い出した。


足柄に入る。
高速で体が冷えてしまった。

去年の今頃、渋峠に向かい
渋沢伊香保で降りたら
動けないくらい冷えていたことを思い出した。

日なたを探す。
陽射しが嬉しい。暖かい。

富士山がさらに近くなった。

だいぶ山肌がはっきり見えてきた

まだ、雲は湧いていない。

富士山を見つめる。

前に上った時は雲の中をずっと走り
五合目に着いても、まだ雲の中だったから。

雲の中を走るのは怖い。

霧と違って濃淡が激しく
濃いところでは目の前の車すら見えない。

休憩していても、雲が気になる。
湧いてくると一気に覆われてしまうから。

あまりゆっくりできず
先を急いだ。


御殿場で降りて
懐かしい道を走る。

このずっと先に
昔走っていたサーキットがあった。

毎週通っていた道。
秋になると、大好きな場所があった。

御殿場の自衛隊演習場。

一面のススキ
ずっと先まで続く

ここは、どこまでもススキ野原が続き
いつまでも見ていたい場所。

昔は道のきわまでススキが茂っていて
生い茂るススキに触れるほど
頭を垂れたススキの中を走れた。

そのうちに、自衛隊が
道のきわのススキを刈るようになり
その楽しさは無くなってしまったけれど。


金色に光るススキ野原と
遠くにかすむ街並みを見つめ
少し先に移動して、写真を撮る。

ススキと富士山

まだ雲は湧いていない。

どちらもヘルメットは取らないまま
写真だけ撮り、次へと急いだ。





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