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バイクツーリング 〜神奈川 箱根〜 後編 その5


後編がその5って… なんだかおかしな配分で
ナンバリングしてますが、いよいよ最終編です!

どうぞ、お楽しみに。


  🏍                  🏍                  🏍


高速に乗った。


新湘南バイパス

どこにつながっているか、よくわからず乗ったけど、いくつか予備知識があった。

①行きにこの名前を見ている
②近道で使えるけどそのわりに… という噂
③湘南って書いてあるからにはこの辺のどこかに降り口があるだろう


初め、80円払った。確かそう。

やったぁ。車がいない。
ほとんどいない。

もうね。
前後左右車なの、ウンザリしてた。

ソーシャルディスタンスも何もあったもんじゃないよ!って。

アクセル開けられなくてウズウズしてたから、わーい!ってアクセル開けてみた。

やったぁ。
風が遊びに来てくれた。

こうでなくちゃ。

今はおしくらまんじゅうはしないよ。
一緒に走るんだよ。

風を体全体にまといながら走る。
気温が少し下がる。

バイクも冷えて嬉しそう。
渋滞の中は排気ガスで気温も上がっていたから。

ギアをどんどん上げる。
ラジエターに風をあてる。

エンジンは熱が出ないように、回転数を下げる。


さぁ。相棒。
休んで!


バイクは走っている時の方が休める。
そう思う。

走って熱くなった車体で、パーキングに停められてもなぁって思ってる気がする。いつも。

そりゃ。芦ノ湖スカイラインの絶景ポイントなら、涼しいし景色もいいし… って、そういえばきみの写真撮りたくて、絶景に向かって反対向きに停めちゃったね。

あれ?
絶景見えた?

見えたよね・・・


きみは、きっとわたしよりずっと色んな景色を見てると思う。

わたしはほとんど地面を見てるから。笑


峠に行くと、途端に情報量が減る。

カーブのRと路面の状況と対向車の有無と…
それに対しての、タイヤの接地感と遠心力と傾きのバランスと加速と減速の塩梅と…

そんなことばかり考えてるから。


まず、風のことを忘れる。
次に景色。


今回、途中に展望台や休憩所があるのを初めて知った。そんな所がたくさんあった。

どれだけ周りを見てないかって証拠。


昔のわたしにとって、道路とは野球場でテニスコートで、走るための練習場でしかなかった。

その中でも、ハッと我に帰るほどの景色を1箇所だけ覚えているような感じ。

そこが、また走りに行きたいと願ったポイントで、今、また走りに来ている場所。


西湘バイパスは150km/h出してみたかったから、また行けるといいなぁ。

芦ノ湖スカイラインは、あの左カーブを写真におさめたかったから、また行きたいなぁ。


行きたかった場所たちから遠ざかりながら、行けた喜びとまた行こうと思う楽しさを、風に報告していた。



ずいぶん走ってるよね。


直線を長く延々と走っている気がする。
これで80円ならお得だ。

途中、分岐点があった。

海老名に行くみたい。
つまり東名に向かうってこと。

最悪、間違えちゃったら東名経由で帰ればいいかって思ったけど、一応間違えずに先へ進んでいる。

逆に不安が募ってきた。


どこで降りたらいいの?


周りにあんまり車がないのも不安が募る。


みんなが使わないってことは、一部の人しか行かないところに向かってるわけでしょ?


海老名の方が場所がわかってよかったかもしれない。

パーキングがあったら地図を見られるのに。



気持ちよい道と少し夕方に近づいた空。

視界はほとんど空しか見えなくて、一気に人の気配が減って…

自分のスピードで走れる楽しさと、広がりを感じる景色への開放感と、どこにむかっているかわからない不安と、一人になってしまったような孤独感と。


旅が終わりに近づいてきて感傷的になっているのか、色んな気持ちがごちゃまぜになりながら、バイクと風とわたしの三人で走っていたら…


料金所があった。

300円だったかな?払った。


そうだよね。80円のはずない。


道が一車線になり、対面通行になり、柵が無くなったのか、周りが見えて、気づくと下がってて… 


降りた。地面に。


途端に、大量の車に囲まれた。
そう。渋滞の中。


ここ。どこ?


信号で停まり、辺りを見渡す。
どこだかよくわからない。


でも、ここは・・・ 国道1号線だ!


えっ?
でも、この道知らない。
行きには通ってない。


ちょっと待って。


行きに通ってないってことは・・・


あの渋滞を過ぎてないってこと?



国道1号線には、いつも渋滞することで有名な交差点がある。

行きもそこで渋滞にはまったんだけど。

高速はそこのもっと先まで伸びてて、渋滞ははるか遠くに超えて、どっか知らないとこに降ろされたんだと思ってた。

思い込んでた。


いや。あの渋滞の手前に降ろされても・・・

ここで降ろされても何の意味もないんだけど、どういう設計でこの高速作ってるんだ?



知ってる道に来た安堵感はありつつも、寂しさとかは一気に吹き飛んで… 気合を入れ直す。


通り抜けるしかないもんね。うん。


道路幅って、高速の方が広く感じる。
一般道って狭くない?


トラックの後ろについた。
すり抜けできない。

右車線のバイクが先に行く。
左車線の方が好きなんだけど、流れが悪いので右車線に移る。

すり抜けできる時は、前に進む。

前のバイクに近づいた。
前のバイクはすり抜けをしない。


さて、どうしよう。


一旦、左車線に戻り、右のバイクを抜こうと思った。

けど、思ったほど車が流れない。


思い切りのいいバイクは、車線に並んでいるバイクなんかおかまいなしに、どんどんすり抜けて行ってしまう。

すり抜けるなら、きびきび行かないと、すり抜けてるバイクたちをせき止めてしまうから・・・

スクーターが一番速くて、動きも素早くて、そしてちょっと怖い。

通勤の人たちにとっては毎日のことで、ここを抜けないと帰れないから、ぐんぐんすり抜けていく。

その流れには乗れなくて、結果、車線に留まって、車の後ろについている。

手が疲れてきたら、意を決してすり抜けを始める感じ。


トンネルが見えてきた。


思考力も落ちて、そのままトンネルに進みながら

あっ。ここトンネル内で渋滞するんだった。

って思い出す。

行きもこのトンネルで「入らなきゃよかった。」って思ったんだった。


帰りも入っちゃったなぁ。


トンネル内で車に囲まれて停まるのは、正直怖い。

火災とか何かあったら、自分だけ生身のような気がして。

どうやってここから逃げるのかな?って思う。

閉所恐怖症の延長みたいな?


不安が増幅するから、なるべく無心になる。


あまり考えないようにしよう。



トンネルを通過。
外に出た。

嬉しい。
ホッとする。

心なしか、車の流れが速くなる。

よどんでいた不安も押し流されて、心がふわっと軽くなった。



よく知った道。
渋滞も消えて、快適に走る。

もうすぐうちに着く。

今日一日が夢だったみたいだ。


でも、心に刻まれている。

あの道もあの風景もあの空も。


それは色褪せることのない思い出として、わたしの心にずっと残っていくんだろう。



到着。


バイクのスクリーンとカウル、ミラーを持っていたハンカチで拭いた。

潮風に当たって、白く粉をふきそうで。



ありがとう。

連れて行ってくれて。



帰り、あんまり休憩できなかったな。

でも、無事に帰れてよかった。



ありがとう。

次は、富士山に行こうね。






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