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保険者の機能

今回は「保険」のことについてです。
 医療財政学の講義で、増え続ける医療費の財源をどう確保するか、ということを考えさせられました。保険の仕組みを知っておくことは、財源の流れを分かりやすく知ることにつながることに気がつきました。
 トップの図は、審査基金のホームページから引用しています(社会保険診療報酬支払基金のホームページ)。患者さんが窓口では医療費を支払うのに一部負担で済んでいるのは、「被保険者」が「保険者」に保険料を支払い、それを財源としてまかなっているという仕組みのおかげですね(保険の種類や、後期高齢者の医療費の扱いなど、色々問題はありますが…)。

 また、それぞれの立場から考えると、医療機関は「収益をあげたい」、患者さん(被保険者・被扶養者)は「良質な医療を出来るだけ安く受けたい」、保険者が「受診も医療費も少なくしたい」という思いがあるので、それぞれのバランスをどうとるか、という視点も大事です。

 この財源をどうするかという問題で、自己負担を増やすことが医療費抑制に効果的か、ということを検証した研究があるのですが、個人的にはそのような視点での研究があることが面白いというか新鮮でした(内閣府タスクフォース. 構造改革評価報告書5:医療制度改革. 2005.)。2003年に自己負担割合が2割から3割に引き上げられた前後で、受診頻度や医療費がどうなったかを調査しているのですが、このような視点は自分になかったものでした。

 このときの講義で紹介された、「保険者機能」に焦点を当てた文献が個人的には興味深かったです(「保険者機能」に関する考察)。それによると、OECDによる医療政策の目標には、Equity(公平性)・Efficiency(効率性)・Effectiveness(有効性)といったことに加えて「Empowerment(患者、消費者の権限の拡大)」が挙げられており、「消費者主権を働かせ、対等の契約関係をできる限り尊重することが消費者のニーズにあった効率的なサービスの提供につながるという基本的な考え方が背景にある」とされています。ここで、適切なコミュニケーションなどによって情報の非対称性」を解消するために、保険者がそこを支援すべきではないか、という内容になっています。前回取り上げた情報の非対称性について、消費者である患者さんの主権を重視し、かつそこに保険者の機能を絡めるという視点に感動しました。さらに、「消費者主権が十分尊重された下での自己決定により質の高い医療サービス」のために、保険者が患者さん(被保険者)の代理人/仲介人として専門的分析評価能力と権限とを兼ね備えた、①専門的情報機関②医療投資支援機関という2つの役割を提案しています。つまり、情報の非対称性の緩和のために、保険者が医療機関と「対等に話をして」より良い医療を提供しよう、としているのですね。

 現実的に、専門的な分析や対話は難しいんじゃないか…などと思っていたら、すでに国は動き出していることを知りました(保険者機能強化アクションプランの概要高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン)。特に高齢者の方は、フレイル・サルコペニアといった総合診療の領域ではトピックでもあり、医療職として何かしら関われそうな内容になっていてとても興味深いです。

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