シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと⑨】
具体的なお店ができるまでのことをとりとめもなく書いてきたけれど、根本的な考え方をちょっと書いておこうと思う。
別記事で「ほんとにそれで委員会」について書いたように、もともとある仕組みや方法に、なんでその方法なの?本当にそれしかないの?と問いかけるクセがあり、お菓子屋さんについても常にそういう問いかけの視点で見ていた。
15年間業界を見てきて、パティシエブーム(企業やイベントとコラボや雑誌の特集など)、百貨店の特設会場での催事ブーム(はなまるマーケットおめざフェアなど)、お取り寄せブームなどの販売のチャンスがあったけれど、どれも自分たちお菓子屋さんから発信したものではなく、できあがったブームに対応できるかどうかが勝敗を分け、ブームが終わった後もどうすることもできなかった。ほんとにそれでいいのかな、と思っていた。
そしていちばん疑問に思うのは、街のケーキ屋さん(パティスリー)が15年間働きかたや稼ぎかたが変わっていないということ。
業界内では、インターネットで販売しているスイーツやコンビニスイーツと街のパティスリーのケーキは別物で、ちがう仕事だという暗黙の認識がある。
もちろん、手作りで少量ずつていねいに作られた良さは大量生産のそれとはちがう。材料も味もちがう。ただ、お客さんもまたちがう。
インターネットで販売することやそれが売れていることに「あんなものが売れてておかしい」などと嫌悪感や敵対心を出す前に、そもそも市場がちがうので、それと自分たちの仕事が潤わないことはまったく関係ないということを理解しなければいけないと思う。
アイドルにファンがたくさんいることと、自分がモテないことは関係ない。
お金をかけて全国に向けて安定したものを発信するアイドルと、なんでもない一個人を、商材が同じだというだけで比べても仕方が無い。
自分(の店)がどこに向けてモテたいのか。近所で話題のかわいこちゃんなのか、ご当地アイドルなのか、アラフォー雑誌の読者モデルなのか、自分で決められるのが個人店の強みだと思う。
たとえ全国区のアイドルよりかわいくても、モテるかどうかは別問題だから、アイドルに対抗したり嫌ったりするよりも、自分の魅力をどこの誰に伝えて確実にハートをつかむか考えなければいけない。
そのためにはまず自分の魅力がどこにあるのか、よく知ることが大事だと思う。
そして、子供の数が減って、さらに仕事の選択肢が増えて、パティシエ修行という道を選ぶ数は激減している。
時間が長くて給料が低くて身体もしんどい仕事を選ばなくなっていることについては、いろいろと思うところがあるけれど、その事実は受け入れないといけない。
なぜ給料が安いのか、なぜ必要な人数と人件費が合わないままなのか、人数が少なくてもできる方法はないのか、一人力(ひとりあたりの効率)をあげるにはどうしたらいいか、時代に合わせてあたまを使って考えなければいけない。
パティシエという職人としての仕事を尊敬し、すばらしいと思うからこそ、こんなにも仕事が辛いのはおかしいと言いたい。
辛いほどやりがいを感じる人もいるけれど、その人たちに合わせることはないし、歳をとったら同じことはできないかもしれない。
何を大事にして、何を犠牲にして、何をしあわせとするかは人によってちがうのだから、もっといろんな働きかたをしたらいいと思う。
「ほんとにそれで委員会」を代表して、わたしがまずやってみているのだという話。
長くなってきたので・・・初回はこちらです。
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