見出し画像

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと⑪】

個人店や小さな規模のお菓子屋さんで働いているとき、パティシエという仕事の、その労働時間の長さや力仕事の多さに、体力勝負の仕事だなあとつくづく思っていた。
女の子がなりたい仕事だけれど、その過酷さに、女性で長く続けられている人は少ない。数年間必死で頑張って、力つきてしまう。

お菓子屋さん(洋菓子)の仕事は、夏はヒマで、冬はクリスマスにバレンタインデーにホワイトデーと立て続けに忙しく、その差がとても激しい。

わたしが働いていた当時は、バレンタイン前の3週間は、睡眠時間3時間の20時間労働(その間休憩時間1時間で立ちっぱなし)、休日なし、横になって寝ると起きられないため座ったまま寝たりしていたりと、まさにサバイバル状態だった。
そりゃ無理だよ。続けられない。

そうして続けられなかった女の子たちがたくさんいることを知っていたので、わたしがお店をはじめる時は、そんなお菓子を作ることは好きで、続けたいけれど、あの環境に戻ることはできないという人たちのための職場を作ろうと思った。

とはいえ、ボランティアでもないし、どこかから補助金が出るわけでもない。

クッキー屋なので、ケーキ屋さんと違って、毎朝早くからその日の分を作る(作ってから売れるのを待つ)という方法ではなく、賞味期限が長いので、まとめて作る(減った分を作り足す)ことができる。
また、ケーキよりも手間数も少ないので、同じ金額分を作るのにかかる時間や人数が少なくできる。

ということは、単純にケーキ屋さんよりもお給料を多く支払うことができるはず、だけれど、女性の働く理想のイメージが人それぞれ違いすぎて(早い話がみんなわがまま)決められず、どうしようかな、と考えた。

結果、わがままを聞くのがめんどくさいので、自分で決めてもらうことにした。

「自分」を中心に、「時間」「お金」「技術」の三角形をつくり、その中で何がいちばん大事で、ほしいのかを、各自考えて書いてもらった。

「技術がある/ないに合わせた正三角形の面積」は変えられないということを説明し、ただ同じ面積だったらそのバランスは自分で決められる、ということにしてみた。

技術(できること)が少ないけど、時間がほしい場合、お金はたくさんもらえない。
技術(できること)が少ないから、技術を増やしたい場合、時間はいらない(長い時間働く)けど、お金をそこそこもらえる。
技術(できること)が多くて、時間も仕事に使いたい場合、お金をたくさんもらえる。
など、自分でバランスを決めてもらう。

全部は無理なんだよ、ということをわかってほしいのと、何をいちばん大事にしたいか選ぶことは、それ以外を犠牲にするか、足りない部分を伸ばさなくてはいけないんだよということを知ってほしかった。
会社やお店のために仕事ができるようになってほしいわけではないと。

飲食店で働きたいという人はどんどん減っていて、お店の存続や拡大にはけっこう深刻な問題だから、働きたい職場とはいったいどういう場所なのかを考えつつも、「働いてもらう」というのもなんだかおかしいよね、ってちょっと、これって、恋人がほしいけどいい人がいない問題と同じじゃないのと思った。
「条件が合うからつきあってもらう」とか「あんまり好きじゃないけど他にいないからとりあえずつきあう」とかじゃなくて、やっぱり、目が合うこと、相性がいいこと、お互い必要だと思い合えることがいい関係だなと思った。

万人にではなくて、ちゃんと目が合う人に、モテたい。(何の話だっけ?)


長くなってきたので・・・初回はこちらです。

\読んでくれてありがとうございます!/ みなさんのサポートはとても励みになっています。