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そこから旅立つことは とても力がいるよ(でも地図をひろげよう)

わたしがnoteで書いたものを読んで、パティシエの友人が「じゃあどうしたらいいんだよ」と言う。

10年間同じ業種で働いて、その後独立するのに、働きかたにうっすら疑問を持ったまま、今までと同じことをしようとしているのは、「10年もやってきたから、そのことについてはよく知っているし、それ以外のやり方がわからない」からだという。

わたしは「すでに知っている」と思うことが問題なのだと思った。


お菓子の作り方を知っている、売り方を知っている、どんな働きかたか知っている。

わたしは、会社を辞めるときに、そのすべてをいったん捨てた。

お菓子を、どんなときに、どんなひとが、どんな価格のものを、なんにために買っているのか、今までの方程式に当てはめずに、ゼロから考えた。

いい材料といい職人でおいしいお菓子をつくる、それ以外のことを本当に知っていたかというと、わたしは何も知らなかった。

離れて見てみると、もちろんみんないい材料でいい職人でいい商品をつくっている。どれもおいしい。ただ、そこには人(店)がぎゅうぎゅうにいて、狭い中で同じものを取り合っている。そしてそのなかで区別を付けることに力を注いでいる。

せまいよ。

わたしは人ごみが極度に苦手で、混んでいるところは避けたいので、そのパティシエでぎゅうぎゅうの山からそっと離れて、あまり人がいないところに、自分で砂を集めて山をつくってひとりで登った。それだけのことだ。


わたしが大事にしたことが、「自分ができることややりたいことをする」よりも、「世間に求められている(よろこばれる)ことをする」「生活するためにお金を稼ぐ」「こどもために時間をつくる」だったので、その自分でつくった山に登る目的も、登山口も、道順も、自分専用につくった。


じゃあどうしたらいいと思うのかというと、

たとえば、パティシエが長時間働くことに疑問をもち、働く人が減ってしまうのが問題で身体もしんどいので、労働時間をほんとうに解決したいとするなら(ただし本気で)

それまで、パティシエ5人で30種類のケーキを作るのに、12時間働いて売上げをたてていたならば、「5人×8時間で同じ金額分を作ることができる商品はなにか」を考えたらいい。それが1種類でも10種類でも、その時間で作れるのならなんでもいい。

ただ、ひとつ動かすと全部うごかさなければいけない。
商品数だけ減らして、売り方を変えなければ売れなくて困るだろうし、商品数を減らした分、こだわって手間や材料費を増やしたら、時間や利益は変わらないから。

そしてそれをどうやって売るか、どこで売るかを決めたらいい。もしももっと売れるとしても、作りきって売り切ったらそれでおしまいで、さっさと帰ればいい。

極端だけれど、本気でそう思う。


自分がどんな種類のお菓子を作れるか(作りたいか)、がスタートだから、みんな同じような壁にぶつかるのは当たり前だ。

労働時間を短くしたい、とか、ちゃんと利益をだしたい、というのがほんとうの希望なら、そこをスタートに逆算したらいいだけだ。


「知っている」と思ったら、その中から使い古しのものを出すしかない。

「知らないことがある」「もっと知りたい」と思うことで、見える景色がある。


30年前、コンビニも携帯電話もなくて、もちろんインターネットもなかった時代にこどもだったわたしたちは、30年後に自分の手でいったいなにができるのか、知らなかった。

知らなかったからこそ、想像して、それを形にしてきて、この時代ができたんだと思う。

同じように、自分の今の仕事も、全部知っていると思ったらそこから進めないから、まだ知らないことがたくさんあって、自分でつくれると思ったほうがずっと楽しいし、続けられる。

知らないことがおいでおいでしてる 出かけよう 口笛吹いてさ。



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