マガジンのカバー画像

SAC about YODAN

120
運営しているクリエイター

2016年7月の記事一覧

ポケモン越しの景色(山手通りも海になる)

ポケモンGOに関する意見や情報があふれて、社会現象ってこういうことかと実感している。 こういったみんなが耳にする情報について、賛否両論いろんな意見が飛び交うときにいつも思うのは、なにかに対して不安に思ったり怒ったりするひとは、ほんとうは全くちがうことに不安だったり怒ったりしている。対象はなんでもよくて、たぶんすり替えている意識もなくて、正しい気持ちをもって怒っている。 ポケモンGOにほんとうに怒っている人などきっといない。なにか別の、もっとおおきな不安や不満を抱えている。

6歳のわたしの読書カードがとどいた話

こどものころ、近所に「ムーシカ文庫」という家庭文庫があった。このムーシカ文庫は「北極のムーシカミーシカ」「ながいながいペンギンの話」などの作者 いぬいとみこさんが始めたもので、ごくふつうの民家の一室に、こどもの本だけをあつめた本棚があり、じゅうたんが敷いてあるその部屋では、お話会などもよく行われていた。本は2冊ずつしか借りられないけれど、時間内であればじゅうたんに寝っころがって本を読んでいられた。こどもしか入れないその空間は、当時のわたしには天国のようだった。 小学生のわた

仕事を、あなたとわたしの距離から考える。

ずっと、考えている。やりたいことがなくて、特別な才能もないので、じぶんがなにをしたら、だれがよろこぶかを、考えている。 わたしは長い間お店屋さんの仕事をしていた。ケーキ屋、チョコレート屋、クッキー屋と、並べてみるとウソみたいな仕事ばかりだ。 お店屋さんというのは、わかりやすくお客さんと直接的なやりとりをする。ほしいものを提供して、直接お金をいただく。カフェやレストランであれば、お客さんの反応も直接返ってくる。よろこんでほしいひととの距離がとても近いしごとだ。 そういった

赤いビールとペンギンのビール

父はいつも赤いビールを飲んでいた。おとなになってからそれが「レッドアイ」という名のついた飲みものだと知ったけれど、当時小学生だったわたしの目には、その濁った赤色も、汚れた白い泡とのコントラストも、トマトジュースの青く濃いにおいも、なんだか奇妙な代物にうつっていた。 そのせいか、わたしはビールもトマトジュースもすきではなくて、ちっとも飲めなかったのだけれど、最近ではどういうわけかビールを飲めるようになった。タイ料理の辛さに熱くなった喉に流し込むシンハービールも、ハーブのソーセ

よむラジオ番外編 【14歳の未来地図について、あーちんに聞きました】

スイスイサクサク よむラジオの番外編です。 今回は、サクちゃんとその娘のあーちんの会話をお届けします。 わたしのここ数年のテーマ 14歳の未来地図について、現役の14歳 あーちんに話を聞きました。 サク:もう中2の夏休みなんて、はやいよねえ。 あーちん:そうだねえ。この調子だとあっという間に中学卒業だ。はやい。 サク:あのさ、早速だけど、わたしが前からずっと思ってることがあるんだけど、今日はそれについてあーちんの話をきかせてください。 あーちん:はーい。 サク:大人

夕立の思い出(since あーちん3歳)

深く掘りすぎてヘンなガスでも出るんじゃないかと心配になるほど地下深くに大江戸線は走る。仕事を終え、自宅の近所の保育園に向かう25分間は、仕事モードと家モードに切り替えるのに必要な時間だった。地下をもぐり、窓から見えるのがずっと暗闇なのもまた、ワープ感があり切り替えるのに都合がよかった。 切り替えといっても、スピードモードからリラックスモードへの切り替えではなく、考える内容の変更で、保育園のお迎えの後にスーパーに寄って買うべきものがあるかないか、帰宅してからつくる夕飯の手順、

子育て話の向こう側と、育児戦隊には変身できないという話。

子育てのはなしをするとき、その軸が、仕事(ミッション)の話をしているひと、家族の話をしているひと、社会の話をしているひと、じぶんの話をしているひと、などがいて、同じ子育ての話をしているようで、まったくちがう話をしていることがある。 またその中でも、話(グチ)を聞いてほしいひと、背中を押してほしいひと、答えがほしいひと、共感してほしいひと、いろいろな考えを聞きたいひと、など目的も様々だ。 これは子育ての話に限らないけれど、「子育て」というテーマが明確にあるだけに、ついうっか

ブスのファッションから考える、うらやましい気持ちの処理方法について

さっき読んだ「ブス図鑑」の記事に、身に覚えがありすぎて、喉の奥にマシュマロを2〜3個つめこまれたような苦しさがあった。 わたしは、小学校から高校まで制服のない学校に通っていた。私服の学校を好んで選んだわけではなくて、たまたま近所の公立の学校が中学も高校も私服だっただけなのだけど、結果的に学校の制服というものを着たことがない。 いわゆる制服マジック(制服だからかっこよく/かわいく見えるけど私服で幻滅。もしくはその逆で、私服でキュン。)のような経験もなく、「服装込みで、そ

好きにしていいなら、縛ってください。

「どうしてクッキー屋さんなんですか」 会社を辞めると決めてからクッキー屋さんをはじめるまでの2年間のことを、すこしお話する機会があったので、思い返していた。 前に「シングルマザーのクッキー屋の話」でも書いたけれど、わたしは12年ほど某チョコレートショップで働いていて、お店屋さんという形態のきびしさや、お菓子の業界で個人でやる儲からなさをよく知っていたので、「お店屋さんはぜったいにやりたくない」と思っていた。 それに、クッキーも別にそんなに好きではない。 そう話すと、だ

怒れないわたしの、最強宣言

「もっとちゃんと怒らないとダメだよ」とよく言われる。 わかってはいるのだ。自分が大事にされなかったときに、時差なくちゃんと怒ることができないと、「じぶんは大事にされる価値がないからしかたがないのだ」という諦めが、どんどん積み重なっていってしまう。 怒るとか、逃げるとか、拒絶するとかができなくなったのはいつからだろうか。 わたしは、どちらかというとよく怒るほうだった。20代のころは仕事でも、ヘラヘラしていてるけどあいつが怒るとこわい と言われていた。実際どこかピリピリとし

忘れものはありませんか?

きょうの午前中、渋谷についたときに、あ、忘れものをした と気がついた。午後の約束も渋谷周辺だったので、そのまま行こうと思っていたのに、仕方がないので西荻窪の自宅に忘れものを取りに帰った。何度も通っている自宅から渋谷の距離と時間が、なんとも長くめんどくさく感じた。 気を紛らわせるために、忘れものについてぼんやり考えた。 わたしは、こどもの頃から忘れものが多かった。その他のことは一丁前にしっかりしているのに、忘れものだけは人の5倍、いや15倍はしていると思う。自分なりに思い当

メモにはメモを、素直には素直を。

先日、机の上にあーちん(娘13歳)のメモをみつけた。わたしへ宛てたメモにはこうあった。 「最近、めんどくさいって思ってばかりで、好きなことしかしてない。それじゃダメなのはわかってて、あとで後悔するのに逃げちゃって、しなきゃって苦痛に感じてることがいやなの。ほんとはちゃんとやって、ほめられたいのに。どうしたらいいかな?」 ああすごいな と心から感心した。やりたくないと思うことに嫌悪感を感じているのは、そのイヤな何かのせいではなく、自分の責任だとわかっているからだ。そして

『ミライの授業』を読んで

つい先日、noteで「14歳の未来地図」というのを書いた。14歳のときに、未来のことを考える材料がもっとほしかった。今の14歳に向けてなにかできないだろうか、と。 その数日後、古賀史健さんのnoteで『ミライの授業』という本が発売されるという記事を読んで、鳥肌がたった。それはまさに14歳に向けてメッセージを送るという本だった。 早速、鼻息荒く買いに行き、読んだ。読んでいる間、わたしは14歳だった。 14歳のわたしには、未来は見えていなくて、今しかなかった。キラキラし

「ゲーテ診療所 とうさんのティラミス」を観て(カフェが映画をつくること)

渋谷と三軒茶屋にあるカフエマメヒコが作った映画「ゲーテ診療所 とうさんのティラミス」を観に行ってきた。 マメヒコはカフェなのに「マメヒコピクチャーズ」と名付けて映画を作っている。この作品は3作目で、カフェを舞台にし、脚本、監督、演出、編集、プロデュースをすべてカフェオーナーの井川啓央氏がつくりだしている。 なぜ、カフェが映画を作るのか。 何千回と聞かれている質問だろうけれど、たぶん井川氏本人も明確な答えなど持っていないのではないかと思う。それに、マメヒコでは映画だけでは