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1日だけ「美談」扱いされた、ロイヤルリムジン、そもそも即時解雇は無効です。

 4月7日、Twitterに「ロイヤルリムジン社員の皆様へ」という、ロイヤルリムジン代表取締役の書面が掲載され、「休業補償は歩合給と残業の給与体系ため(ママ)、失業手当よりも不利なためこの選択をしました」「完全復旧した暁には、みんな全員にもう一度集まっていただき…」という文章が掲載されました。

 ニュースでも取り上げられ、従業員思いの何て良い社長なんだ、のような反応が湧きましたが、4月9日のBusiness Journal の記事にもあるように、再雇用前提の解雇にはそもそも基本手当(失業保険)の受給資格がないという、東京労働局への取材記事も載り、アレアレ?やばいんじゃないの?となりました。

 歩合給と残業代が低くなるので、失業手当の方がお得でしょうと言いますが、計算してみたところ一概には言えず、労働基準法第27条の「出来高払いの保障給」も知らないのか、ハナから支払う気がないのかも知れません。

 が、今回は一点だけに話題を絞ります。「即時解雇」です。

 労働基準法第20条にはこのように定められています。

キャプチャ

 労働者を即時解雇する場合には、少なくとも30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(東京新聞の記事によると支払いはないらしい)。引用したツイートの方は「請求する権利が発生するそう」と書かれていますが、そうではありません。会社は解雇予告手当を支払わなければならないのです。

 で、解雇予告手当を支払うのはいつか? 行政解釈によると「解雇の申渡しと同時に支払うべきである」とされています。

 で、もし、会社が解雇予告手当を支払わずに即時解雇の通告をした場合はどうなるか? 判例では「使用者が即時解雇に固執しない限り、解雇後30日が経過した時点または予告手当を支払った時点で解雇の効果が発生する」とされています(細谷服装事件 最二小判昭35.3.11)。よって、本当に解雇予告手当を支払っていないのならば、即時解雇の効力は発生しないのです。

 では、「解雇」そのものが有効なのか? 労働契約法第16条にはこのように定められています。

キャプチャ

 さて、今回の解雇が「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」かどうかが問題ですが、労働者に全く非がなく、使用者側の事情で解雇をする場合は、以下、整理解雇の4要件(最近は4要素の判例もある)を満たしていなければいけません。

 1.人員整理の必要性

 2.解雇回避努力義務の履行

 3.被解雇者選定の合理性

 4.手続の妥当性

 いろいろ見聞きすると、整理解雇の4要件は全く満たしていないように思えます。よって、社長の行動は「美談」どころではないと考えます。労組があるようで、不当解雇を主張しているようですが、大人しく解雇予告手当を支払うべきでしょう。


 しかし、企業はそれどころではないのもよく理解できます。雇用調整助成金も特例を連発して大盤振る舞いですが、それまでにパンクしてしまう企業も多数です。ならばどうするか?

 私見ですが、

①特例的に「再雇用を前提とした」解雇を認め、労働者は失業保険を受給するすることで凌いでもらう。

②特例的に離職をしなくても、休業した状態でも失業保険を受給できるようにする。

 実は、②については、東日本大震災時に既に特例措置を実施した前例もあります。

東日本大震災に伴う雇用保険失業給付の特例措置について

 いずれにせよ、このような例は頻発し、国が何らかの対策を講じないと労使ともに干上がってしまいます。



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