2023/11/25(土)のゾンビ論文 ゾンビドラマのメディアミックス間の連続性

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender

  2. 「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、検索条件2では「-philosophical」と「-gender」という一般性の高い検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」二件

  2. 「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」四件(差分は二件)

検索条件1はメディア学が二件だった。


検索条件1「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

トランスメディア モンタージュ: シリーズ「ウォーキング デッド」の編集と制作プロセスを振り返る

一件目。

原題:Montagem audiovisual transmidiática: uma reflexão sobre a montagem e o processo de criação da série The Walking Dead
掲載:Avanca | Cinema
著者:Cecilia SallesとSamir Cheida
ジャンル:メディア学

ポルトガル語で書かれた論文。タイトルとアブストラクトだけは英語併記。

「トランスメディア」は日本語で言うところのメディアミックスにあたる。何かしらのコンテンツが小説、テレビ、漫画、ゲームなど様々なメディアに展開されることを指す。この論文では『ウォーキングデッド』シリーズのメディア展開を扱う。

論文の目的を端的に表した文を引用する。

The research aims to identify how editing can maintain continuity, a fundamental concept in cinematographic language, in the contents of The Walking Dead dispersed on multiplatforms and what new meanings arise when images and sounds of the transmedia content of The Walking Dead are juxtaposed. As a reference for analysis, we use the concepts of the research line “Creation processes in Communication and Culture” led by Cecilia Almeida Salles.
(この研究の目的は、マルチプラットフォーム上に分散されたウォーキング・デッドのコンテンツにおいて、映画言語の基本概念である連続性を編集がどのように維持できるのか、そしてウォーキング・デッドのトランスメディアコンテンツの画像と音声が並列されたときにどのような新しい意味が生まれるのかを特定することです。 分析の参考として、セシリア・アルメイダ・サレスが率いる研究ライン「コミュニケーションと文化における創造プロセス」の概念を使用します。)

同論文より

素人の身からすると、あるいは漫画原作実写映画ファンの意見でもあるが、メディアミックスされたコンテンツをメディアにおける「違い」以外に注目する理由がわからない。私は漫画原作実写映画ファンとして、「漫画と映画は別物だし、なんならアニメだって漫画とは別」とずっと主張してきたからだ。しかし、この論文では「連続性」に注目している。しかもこの論文の著者であるセリシアは連続性に注目したコンテンツのメディアミックスに関する分析手法も打ち立てたらしい。自分の見知らぬ研究内容に出会うのが論文調査の醍醐味であるが、自分の信念と真逆の研究内容が出てくるとは思いもよらなかった。非常に興味深い。

ジャンルはメディア学。

全くの余談で、関係のない話で申し訳ないが、「漫画と映画は別物」と言っても「だから実写映画は原作を無視してよい」とは欠片も考えていない。むしろ実写映画は漫画原作を忠実に再現しようとして失敗するケースの方が多いと思うのだが、それはともかく。私が言いたいのは「漫画原作や再現度、果ては原作愛とかいうわけのわからない概念から離れて、目の前の映画が面白かったかどうか」が重要だということだ。面白ければ原作から離れてても良い。それは『るろうに剣心』や『亜人』、『アイアムアヒーロー』、『ファブル』に喜ぶオタクで実証されている。たぶん、ガチファンは怒ってると思うけど…。

漫画原作から離れて評価する。別に原作とのつながりを求めて実写映画を非難しても良いが、だったら自分が目の前の映画ではなく頭の中にある原作の方を重視した感想を持っていることくらいは自覚すべき。

いきなり何を言っているんでしょうね、私は。


適切に暴力的: デジタル ゲームにおける暴力の物語的性質

二件目。

原題:Fittingly Violent: Narrative Properties of Violence in Digital Games
掲載:Fictional Practices of Spirituality I
著者:Frank G. Bosman
ジャンル:メディア学

ゾンビが出てくるゲームを扱い、ゲームに出てくる敵の非人間性に着目して暴力の物語を語る論文。暴力の物語を一般化しているわけではなく、あくまでゲーム内での物語に着目しているため、Twitterでよく見る重篤なオタクの語りみたいな論文だと思った。

ジャンルはメディア学。ゲームのストーリーはゲームの魅力にかかわるから、ゲームデザイン学でもよいかもしれない。



検索条件4「zombie -firm -xylazine -biolegend」

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPCは排除されるように設定してある。

変数、スコープ、配列、演算子、条件文

原題:Variables, Scope, Arrays, Operators, and Conditionals
掲載:Roblox Lua Scripting Essentials
著者:Christopher Coutinho
ジャンル:情報科学

「-gender」で排除されたと推測。Robloxというゲーム作成システムの解説記事。であるなら、やはりゾンビを倒すゲームを扱った論文だろうか。


アメリカを再び健康に: CrossFit と権威主義的ポピュリズムの融合

原題:Make America Fit Again: CrossFit’s Articulation with Authoritarian Populism
掲載:このタイトルの本がある
著者:Shaun E. Edmonds
ジャンル:情報科学

「-gender」および「-philosophical」で排除。またCrossFitに関する論文。前回と同じように、ゾンビアポカリプスを不安がる人間にCrossFitが安心を与えるという提言だろう。



まとめ

検索条件1はメディア学が二件だった。

トランスメディア(=メディアミックス)の論文だけ興味を引いた。勝手に自分語りもしてしまうほどに、自分にとってクリティカルな内容だった。ポルトガル語でなければ目を通すくらいはするのだが…。残念。

今回はねらいの論文がなかった。


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