2023/08/08(火)のゾンビ論文 ゾンビサーバをHEROが倒す!

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」

  4. 「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)

  5. 「zombie」(取りこぼし確認その2)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」/「-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。ただし、条件4の通り、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは完全な排除をねらう。

それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」二件

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」二件

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」二件

  4. 「zombie -firm -philosophical」二件(差分ゼロ件)

  5. 「zombie」五件(条件4との差分三件)

「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は情報科学が二件だった。



検索キーワード「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」

ヒーロー vs ゾンビ: 仮想マシン環境におけるゾンビ ゲストの破壊

一件目。

原題:HERO vs Zombie: Destroying Zombie Guests in Virtual Machine Environments
掲載:Model-Driven Engineering and Software Development
著者:Nezer Jacob Zaidenbergを筆頭著者として、五名
ジャンル:情報科学

アブストラクトからゾンビに関する部分を抜粋する。

However, virtual machines consume no physical space. Thus abandoned servers are often unnoticed. The system administrators do not delete the servers. Sometimes the administrators do not know the servers are not in use. (Some servers often “become” unused as business processes changes, and the System administrators are not informed when the last user no longer uses the server) These servers are known as “zombie” machines.
(ただし、仮想マシンは物理スペースを占有しません。したがって、使われなくなったサーバーは気づかれないことがよくあります。システム管理者はそのサーバーを削除しません。時折、管理者はサーバーが使用されていないことを認識していません。(一部のサーバーはビジネス プロセスの変更に伴って使用されなくなることが多く、最後のユーザーがサーバーを使用しなくなったときはシステム管理者に通知されません) これらのサーバーは「ゾンビ」マシンとして知られています。

要するに、使われなくなった仮想サーバはzombie machine(ゾンビマシン)と呼ばれる。あるいは、そのままゾンビサーバとも呼ばれるらしい。

仮想サーバは、物理的なスペースを必要としないもののサーバの中で容量を食う上に、管理されなくなるゆえにセキュリティ対策が不十分になるために、削除する必要がある。

そこでヒーローの出番というわけだ。この論文におけるHEROとはゾンビマシンを特定して削除することを可能にする。

HERO is a novel tool to optimize resource use and security. HERO uses multiple tests and machine learning approaches to assist system administrators in identifying and removing “zombie” machines.
(HEROは、リソースの使用とセキュリティを最適化するための新しいツールです。HEROは、複数のテストと機械学習アプローチを使用して、システム管理者が「ゾンビ」マシンを特定して削除できるように支援します。)

ということで、この論文はサーバ内に自然発生するゾンビとHEROの戦いを記述する。論文の詳細はHEROについて費やされるのだろう。

ジャンルは情報科学。



分散学習システムにおける新たな信頼性の問題

二件目。

原題:Emerging Trustworthiness Issues in Distributed Learning Systems
掲載:University of Massachusetts Amherstに提出された博士論文
著者:Hamid Mozaffari
ジャンル:情報科学

Distributed Learning Systems(分散学習システム)という、機械学習の一種に関する論文。分散「並列」学習については以下のサイトが比較的平易だった。自分に前提知識がないためわかりやすいとか、よくわかったとかは言えないが。

複数のユーザーが別々の情報を与えることで学習を進める仕組み。とでもいえばよいだろうか。アキネイターのような。

そして、そのような教師を複数有する学習システムはbotnet(≒ゾンビPCをつなぐネットワーク)に弱い。それがタイトルあるような「信頼性の問題」である、と。

ジャンルは情報科学。



検索条件1-3の差分(差分なし)

「DDoS/bot」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。

今回は差分がなかった。

二件目の論文はbotnetが主題であるから、「-DDoS」で排除されてもよさそうなものだが、DDoSの単語を含んでいないらしい。botnetによる攻撃=DDoS攻撃ではないのだろうか。



検索キーワード「zombie -firm -philosophical」(差分なし)

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。

今回、差分はなかった。


検索キーワード「zombie」

「zombie -firm -philosophical」との差分を確認する。上記条件からも排除され、こちらの条件でのみ引っかかった論文がゾンビ企業・哲学的ゾンビの論文であれば、ねらい通りといえる。

差分は三件あり、三件とも「-philosophical」で排除されていた。三件のうち二件が哲学的ゾンビに関係する論文で、残りの一件は無関係だった。

「-philosophical」よりも別のキーワードを探すべきかもしれない。哲学的ゾンビを排除するなら、「-consciousness」辺りだろうか。


哲学における自然主義の克服

原題:Overcoming naturalism in philosophy
掲載:Sociosphere
著者:Иванов Евгений Михайлович
ジャンル:哲学

「-philosophical」で排除された、哲学的ゾンビも扱う論文。


クオリアの歴史とその中でのCIルイスの役割

原題:The history of qualia and CI Lewis' role in it
掲載:British Journal for the History of Philosophy
著者:Jacob Browning
ジャンル:哲学

「-philosophical」で排除された。哲学的ゾンビも扱う論文。


韓国SFの台頭:韓国とアメリカにおける映画とウェブシリーズの発展に対する批評

原題:The Rise of Korean Sci-Fi: A Critique of the Development of Films and Web Series in South Korea and America
掲載:International Journal of English and Comparative Literary Studies
著者:Sayan Chattopadhyay
ジャンル:比較人類学

韓国とアメリカのSFを比較する論文。『新感染 ファイナル・エクスプレス』をSF作品として紹介しているため、zombieの単語が使われた。

「-philosophical」と「-gender」で排除されており、作品の比較の観点にジェンダーや哲学洞察とやらを持ち出しているのだろう。



まとめ

「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は情報科学が二件だった。

情報科学はとにかくゾンビが多い。ゾンビPCにゾンビプロセス、ゾンビパケット。そして今回はゾンビサーバが現れた。とかく情報系では「死んだ/殺したはずなのに生きている」とか「死んだかどうかわかりづらい」という問題があるらしい。

この場合、何がゾンビを生み出していると見るべきだろうか。ウイルスや化学薬品、魔術師は不在で、ゾンビが自然に発生しているように見えるが。バーチャルな世界はゾンビが大量発生する魔境なのか。

今日はねらいのゾンビ論文なし。


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